【障害年金受給事例】

45歳頃、仕事が上手くいかないので精神科に通院するとうつ病と軽度知的障害と診断をうけ、軽度知的障害で障害年金を請求すると20歳前の障害基礎年金2級が受給できた事例。

精神系の障害年金は原則有期認定なのですが、この事例では無期認定とされました。年齢も45歳である点と障害状態を考慮しての結論だと思いますが、軽度知的障害なので意外に感じました。請求者からしたら終身診断書が不要になるので非常に有利な決定なので、これで心置きなく就労することが可能になります。

事案の論点

① Q.軽度知的障害で障害年金2級が受給できるか?

A.障害者手帳と障害年金は別制度なので手帳と年金の等級は連動しません。なので、軽度知的障害でも障害基礎年金2級を受給することが可能です。ただし、手帳の審査ポイントと年金の審査ポイントは類似しているので、手帳の内容がそのまま年金に反映されると不支給になる可能性もあるので、年金の請求をする際には請求者の日常生活の状況をきちんと医師に伝える必要があります。

② Q.請求障害は知的障害だが、治療歴にうつ病があり、そのうつ病が請求障害に影響を与えないか?

A.精神系の年金は複数の障害が混在していても原則として総合認定で処理されます。例えば併合認定の考え方なら身体障害2級と精神障害2級相当を併合させると1級に昇格します。これは併合認定表がありそれに当てはめると機械的に決まります。しかし、総合認定はその様な考えではなくあくまでも複数の障害状況を総合的に判断して等級を決める考えで精神疾患同士と内疾患同士は総合認定で処理されます。例えば知的障害2級、うつ病2級相当でも1級になるかどうかは分からず、あくまでも認定医が総合的に判断し等級を決めます。なので、二つを合わせても2級と判定されることは往々にあります。

さてここで論点になりますが、精神障害の中で知的障害とうつ病の障害程度を明確に区別することは可能でしょうか?

例えば内疾患なら心臓の障害程度、腎臓の障害程度と区別できる場合がありますが、果たして精神系の年金でそれが可能なのでしょうか?答えは非常に難しく区別は現実的には不可能です。請求人の障害としては知的障害とうつ病の二つが診断されていますが、実際に請求しているのは知的障害のみです。障害年金は裁定請求書に記載された障害名で審査されるので今回のケースなら知的障害のみで審査されるはずですが、本人の障害としては知的障害以外にうつ病が存在しています。うつ病と知的障害それぞれの障害程度を分けることができるならば問題ないのですが、通常それらを区別できないので場合によっては請求障害以外の障害が含まれているので審査不可能として不支給になる可能性がある事案でした。もし、うつ病が初診から16か月経過していれば障害認定日が到来しているので請求障害としては知的障害・うつ病と記載しても問題なかったのですが、この事案では初診から16か月経過はしていませんでした。医師もその点は理解していてくれたのであえて知的障害のみで診断書を作成してくれましたが、過去の経過の部分でうつ病の記載は除くことができなかったので診断書にはうつ病の記載が入ってきていました。その点を指摘されると不支給の可能性も考えましたが、問題なくみとめられたので良かったです。

因みに「知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取り扱い」では前発知的障害、後発がうつ病の場合同一疾患扱いで処理するとなっています。つまり、後発のうつ病も知的障害扱いで請求するという事です。ただし、この事例ではうつ病が先で知的障害が後発で逆になっているのでこの通達がそのまま当てはまるか疑問がありました。障害認定調書を取り寄せて確認は必要ですが、無事通り安心した事例でした。

 

③ Q.40歳過ぎて知的障害が発覚しても20歳前の障害基礎年金の請求ができるのか?

A.知的障害は年金法上では先天性の疾患扱いなので、20歳を過ぎて判明しても初診日は出生日になります。少し疑問に思われる方もいると思いますが、そもそも療育手帳が発行されること自体で幼少期から何らかの課題があるとの認定なので、その様に捉えれば理解しやすいと思います。

ケース紹介

基本情報

 

① 障害名 知的障害

② 請求した年金:20歳前の障害基礎年金

③ 年金請求方法:事後重症請求

④ 年金額:約78万円+22.49万円(子の加算)

⑤ 認定期間:無期認定

 

生活環境

① 家族と同居(訪問看護利用中)

② 精神薬服用あり

③ 就労継続支援A型利用 勤続1か月の時点で請求

④ 療育手帳はB2(軽度)

 

成育歴 経過

① 学生時代は養護学校に通わず普通校で過ごす。勉強にはついていけず校内ではよくいじめを受けていた。

② 高校は自力で偏差値の低い底辺校に進学。

③ 高校卒業後は家族経営の本屋さんに就職する。そこで約20年勤め上げる。

④ 出産を機に追われる様に退職しその後はアルバイトを転々とするがどの仕事も上手くいかずに辞めている。

⑤ 仕事でのトラブルが多く、だんだんと身体にも影響が出始め出勤時間になると嘔吐をするようになり、その時点で通院を決意する。

⑥ 病名はうつ病と軽度知的障害の診断を受けて、療育手帳B2が発行される。

⑦ その後勤めていた会社を退職し就労継続支援A型に通所するようになる。

 

 終わりに

知的障害は障害年金の中でもベーシックな部類に属しますが、他の精神疾患と重複する場合は論点が増えてきます。

もし、知的障害の請求でお困りならぜひご相談ください。スピード感をもって対応していきます。