4.アルコール依存症での障害年金の申請の難しさ

では、なぜ、アルコール依存での障害年金認定が難しいのでしょうか?

障害認定基準第8節 精神の障害では「アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象とならない。」となっており制限が加えられています。精神病性障害は幻覚、人物誤認、恐怖等の精神病の様な症状で、身体依存はアルコールが入らない場合の手足の震え、幻覚、幻聴等です。これ等症状で初めて認定の対象になります。ICD-10「精神および行動の障害」によると精神病性障害は1か月から遅くても6か月程度で消滅すると定義されています。そのため、初診から障害認定日の頃にはこの症状は消滅している可能性があります。あとは、残りの身体依存でどれほど日常生活に著しい制限を加えているかで年金の可否が決まることになります。

 

以上よりアルコール依存症単独での障害年金受給は厳しいと私は考えます。アルコール依存症の場合はアルコールだけで認定を受けようとするのではなく、アルコール依存になった原因、例えばうつ病・発達障害・知的障害等を絡めて請求すると受給可能性は高まります。

5.当事務所でのアルコール依存での障害年金の請求実績

当事務所でアルコール依存での障害年金請求は2件あり、結果は1件支給決定、1件不支給(審査請求中)です。ただ、両請求ともアルコール依存症単独ではなくうつ病が併発しています。

支給決定を受けた案件はアルコール依存症・うつ病でした。ただし、この案件では障害認定日は双極性障害、請求日はアルコール依存症とうつ病でした。通常遡及請求の審査は認定日でまず障害が障害等級に該当するか判断します。そこで障害状態に該当すると次は現症時点で障害状態に該当するか判断します。場合によっては認定日2級、請求日3級や認定日2級、請求日不支給というケースもあります。この事案では請求日に2級と認定されそのまま認定日も2級と認定されています。診断書ではアルコール依存症の身体症状の記述はなく、当然ながらアルコール精神病の症状もなく主はうつ病の症状のみでした。

 

不支給の事案は事後重傷請求のケースで請求障害は先程と同様でうつ病とアルコール依存でした。この事案でもアルコール精神病の症状はなく身体症状の記述もなくあくまでもうつ病メインの診断書でした。不支給理由は①就労していたこと②精神薬を服用していないことで、アルコール依存症が理由にはなっていませんでした。

両請求に共通するのはアルコール依存症が良くも悪くも審査に影響を与えていない点で、審査はうつ病による「日常生活の制限度合い」で審査されています。そのため、当然ながらアルコール依存症のみで請求する場合それによる「日常生活の制限度合い」がどの程度あるかで判断されます。

6.実務対応

アルコール依存症単体では認定基準に達しない可能性は非常に高いです。そのため、アルコール依存症以外の障害とセットで請求する形になります。ケースとして多いのがアルコール乱用に至る前にうつ病にり患していたケース又は発達障害、知的障害が元々あり、2次障害としてアルコール依存に陥るケースがあります。発達障害の場合、衝動性や注意欠陥有無を思い出してください。障害年金の申請の支援者ならうつ病や発達障害の認定基準を改めて見直し請求者の状況がそれらに該当しているか確認して下さい。必要に応じて医師の診察を受け準備を整えていくことが必要です。