アルコール依存症で障害年金請求できるの?

障害年金の対象になる精神障害

障害年金の守備範囲は広く多くの障害・病気が対象になります。しかし、精神系の障害年金には意外と多く対象外の障害が存在します。その代表例が神経症関係です。ICDコードはF4です。またそれ以外にもF5生理的障害 F6人格障害関係も残念ながら原則として対象外になります。理屈的にはそれ以外の障害は障害年金の対象になりますが、それでも扱いが難しいのが薬物関係とアルコール関係の障害です。

 

2. 給付制限について

先ほど説明したのが、そもそも神経症は障害年金の対象外であるという話で、これから話すのは障害年金の対象障害だが給付制限により受給できないという話です。

 

厚生年金保険法 第七十三条

被保険者又は被保険者であつた者が、故意に、障害又はその直接の原因となった事故を生ぜしめたときは、当該障害を支給事由とする障害厚生年金又は障害手当金は、支給しない。

厚生年金保険法 第七十三条の二

被保険者又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生ぜしめ、若しくはその障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができる。

 

国民年金法にも同様の規定はありますが、自ら障害を負ったり、犯罪行為で障害状態に陥ったりした場合、障害年金が受給できない可能性があります。

覚せい剤の使用により薬物依存に陥り、それが原因で精神疾患を生じたさせた場合は厚生年金保険法第73条の2より受給できない可能性があります。理由は覚せい剤の使用は故意の犯罪行為だからです。しかし、自らの意思に覚せい剤を使用したのではなく第三者に無理やり使用させられた場合は給付制限に該当しない可能性があります。しかし、これは診断書や病歴就労状況申立書で説明しないといけませんが・・・。

この給付制限でよく論点になるが自殺です。しかし、通達にて「自殺」は、故意の犯罪行為若しくは重大な過失に該当しないので、法70(改正前条文)条による給付制限は受けない(昭34.9.16年福発69)、と規定されています。そもそも自殺を考える時点で強度のうつ状態等正常な判断能力を有していない状態にあると考えれるので自殺による給付制限が行われないのは当然の帰結であると考えることができます。

 

3.アルコール依存と給付制限について

覚せい剤使用は犯罪行為です。では飲酒はどうでしょうか?当然飲酒は犯罪行使ではありません。可能性があるのは「故意」または重過失によりアルコール依存になった場合ですが、そもそもアルコール依存になるためにお酒を飲む人等いないので「故意」又は「重過失」はおかしいです。給付制限の可能性があるのは「療養の指示に従わない」医師からアルコールを控えるように指導を受けたが辞めれずにアルコール依存になったケースです。しかし、これも自殺と同じ理由で、そもそもアルコール依存の前に何らかの精神疾患がある場合が多いので前発の精神疾患が原因でアルコール依存になったと考えるとアルコールが辞めれないことに正当な理由ができます。療養指示に従えないのも精神疾患のせいにできます。

以上より覚せい剤はともかくアルコール依存症は障害年金の給付制限の対象にならない可能性は高いです。