保険料未納でも請求できる年金が有ります!!

  障害年金において一番の難関が保険料の納付要件です。それをクリアしないと絶対に年金の支給はありません。私も保険料の納付要件で年金が受給できる障害程度にあるにも関わらず請求ができない人を山ほど見てきました。今日は保険料の納付要件を問わない請求方法についてお話しします。

保険料の納付要件について

 障害年金の請求には保険料の納付要件が問われます。

保険料の納付要件は二つのうち、どちらかを満たせばクリアします。

納付要件 ①

初診日の前日に、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

納付要件 ②

次のすべての条件に該当する場合は、納付要件を満たします。

1.初診日が令和8年4月1日前にあること

2.初診日において65歳未満であること

3.初診日の前日において、初診日がある2カ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと

納付要件①が原則で②が例外ですが実務ではまず②から見ていきます。②は65歳以上の年金請求には使えないので注意が必要です。

 

納付要件は初診日を起点に確認します。そのため、もし、その初診日で納付要件を満たさないならば、初診日より前に初診日が存在しない限り保険料の納付要件をクリアすることはありません。

 

保険料納付要件が問われない請求方法

 保険料の納付要件が問われない請求方法として20歳前の障害基礎年金があります。

 20歳前の障害基礎年金は初診日が20歳前にある場合に請求する方法で20歳未満はそもそも年金加入していないことから保険料納付要件が問われないという理屈です。通常の障害基礎年金との違いは支給停止事由が定められているだけで、給付に関しては特に問題はありません。

なので、初診日が20歳以前にある障害者が請求する場合は保険料納付要件等を気にせず、初診日の特定と障害程度要件をクリアすることで障害年金が受給できることになります。

通常、20歳以降に初診日が有りそこで保険料の納付要件を満たさない場合は障害年金の請求ができることはありません。しかし、唯一の例外が知的障害(精神遅滞)です。

知的障害と聞いて大多数の方は関係ないと思われると思います。確かにそれは事実で大多数の方は知的障害ではありません。しかし、中には20歳を超えて知的障害が分かるケースが有ります。その様な場合は20歳以降保険料の未納があろうが20歳前の障害基礎年金で請求は可能です。

私も20歳以降に知的障害が分かったケース(以前看護師資格を保有していた方や運転免許を取得してタクシーの運転手をしていた方)の障害年金のサポートを行ったことがあり、無事受給まで至った経験もあります。

 

なぜ、知的障害が初診日を問わないのか?

 知的障害は障害年金上先天性の疾患と考えられます。その根拠は昭和43223日庁文発第2149号「問 精神薄弱者(知的障害)は医学的には先天性のものとされているので、初診日の如何を問わず障害福祉年金(20歳前の障害基礎年金)として取り扱うべきもとして解してよろしいか? 答え お見込のとおり。」が根拠になっています。初診日の如何を問わないので初診日が20歳以降であっても先天性の疾患とされ、先天性なので初診日は20歳未満というロジックになります。

知的障害とは?

知的障害(精神遅滞)は知的機能と適応行動の両方に制限を持つ障害で発達期に生じるものです。 原因は不明な場合は多いですが、IQ値と適応機能を総合的に評価して、軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。

経験的には知能指数が重要ですが日常生活のヒアリングや成育歴等も加味され総合的に判断されます。知能指数は高いが日常生活能力が低かったり、問題行動が有ったりすれば重度と判定されるケースもある様子です。

 

 20歳以降に発覚する知的障害

一般的に知的障害は20歳未満に発覚するケースが多いですが中には20歳未満は問題にはならず20歳以降、進学先で躓いたり、就職で躓いたりして検査をすると知的障害であったことが発覚するケースが有ります。

特に本人は知的障害の自覚が無いのに検査すればそうだったというケースはちらほら見られます。特に知的障害で請求する障害年金は20歳前の障害基礎年金となり保険料の納付要件は問われなくなるので、保険料で手続きが進まないケースでは救世主の様な役割を担います。ただし、すべての人に当てはまるかといえば当然ながら違います。IQ検査を経て日常生活の聞き取り等を踏まえて総合的に決まります。しかし、軽度知的障害と認定を受ければ障害年金の請求可能性が生じる事実は可能性が無い人から見れば藁をもつかむ思いでしょう。

知的障害の可能性がある人は例えば企業の一線でバリバリ働いてきた人は該当しない可能性が高いでしょう。経験的には長期の引きこもりや、専門学校の学習についていけない、仕事場で暗黙のルールが分からない、トラブルをよく起こす人は、もしかしたら軽度知的障害の可能性はあります。

 

知的障害の検査方法

検査方法はまちまちですが多くは最寄りの区役所・市役所の障害者関係の窓口が受付になっています。そこで事情を説明すると検査機関の紹介をしてくれます。知的障害は幼少期の聞き取りなどが重要になることから家族や支援者など度一緒に相談に行くことをお勧めします。

 

最後に

 

保険料の納付要件を満たさない方が障害年金を請求しようとすると最後に行きつくが知的障害を理由に請求する方法です。しかし、大部分の人は該当しませんが、ごくまれに一部の課題を抱えながら生活されてきた方は請求できる可能性が有ります。それも、まず周囲にいる人が知的障害の可能性を感じるかどうかにかかります。長期引きこもりや仕事で上手くいかない、コミュニケーションが十分でない人が身近にいて生活に困窮している場合は障害年金の可能性を視野に入れてみてください。私も障害年金の存在が社会復帰の後押しになった方をたくさん見て支援してきました。もし、周りに困られている方がいるならぜひ一度ご相談ください。