令和3年4月 労災の特別加入の対象範囲拡大

令和341日より、労災保険法の一部改正が行われ①柔道整復師法②芸能従事者③アニメーション制作従事者 ④創業支援等措置に基づき事業を行う方が新たに労災への特別加入が可能になりました。

 労災とは?

労災は労働者災害補償保険法の略称で、労働者の業務災害や通勤災害に対しての治療や休業中の所得補償を目的とした制度です。対象者はあくまでも労働者で、そこには役員は含まれていません。もし、役員が労働者と同じような仕事をしていて業務中にケガをしても労災から給付が下りることはありません。しかし、これでは中小企業の実態にそぐわないという事で法は特別に労災に加入できる手段を開いています。それが特別加入になります。しかし、特別加入を無制限に認めている訳ではなく「特に労働者に準じて保護することが適当である」と認められる一定の人という制限が加わっています。ようするに、そこそこの規模の会社で社長と現場の労働者で全く仕事の形態が異なる場合は保護の対象外になります。そのため、特別加入できる企業規模等要件が定められています。

 

特別加入できる範囲

① 中小企業主とその事業に従事する者(第一種特別加入者)

中小企業主:常時300人(卸売業又はサービス業は100人、金融業・保険業・不動産業・小売業は50人)以下の労働者を使用する事業主であって、労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託している者です。

 

中小企業主とその事業に従事する者とは?

その事業に従事する者…家族従事者や代表者以外の役員

対象者は、代表取締役とそれ以外の役員と家族従事者で、特別加入にはそれら全員が特別加入する必要があります。

 

 

 

② 一人親方その他自営業者とその事業に従事する者(第二種特別加入者)

 

一人親方その他の自営業者とは、労働者を使用しないで事業を行う以下のものに限られます。

1. 自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人 貨物運送業者など)

  1. 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復(注)、修理、変更、 破壊もしくは、解体またはその準備の事業(大工、左官、とび職人など)

3. 漁船による水産動植物採取を行う者

4. 林業を行う者

5. 医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配 置販売業)の事業

6. 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業

7. 船員法第1条に規定する船員が実施する事業を行う者

 

③ 特定作業従事者(第二種特別加入者)

  1. 特定農作業従事者
  2. 指定農業 機械作業従事者
  3. 国または地方公共団体が実施する訓練従事者
  4. 家内労働者 およびその補助者
  5. 労働組合等の常勤役員
  6. 介護作業従事者および家事支援従事者

 

④ 海外派遣者(第三種特別加入者)

 

今回の改正で追加される柔道整復師法、芸能従事者、アニメーション制作従事者、創業支援等措置に基づき事業を行う方は③特定作業従事者(第二種特別加入者)に追加されます。

 

特別加入の方法について

 

加入方法は第一種特別加入者、第二種特別加入者、第三種特別加入者ごとに若干異なっています。ここでは第一種特別加入者と第二種特別加入者について説明します。

 

第一種特別加入者の加入要件

1.雇用する労働者に保険関係が成立している事

2.労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合

を経て管轄の都道府県労働局の承認を受ける必要がある。

注意点:中小企業主とその事業に従事する者(第一種特別加入者)の場合、労働者の存在が必須です。また、法人の場合は原則として役員全員の加入が必要になります。

 

第二種特別加入者(一人親方など)の加入要件

1.特別加入団体を通じて加入する。

※特別加入団体を事業主、一人親方などを労働者とみなし、擬似雇用関係を創出して労災保険を適用させるみたいです。

手続は特別加入団体から、所轄の労働基準監督署を経由して労働局長へ提出します。

 

一人親方のみで特別加入できない点で注意が必要です。

 

第二種特別加入者(特定作業従事者)の加入要件

1.特別加入団体を通じて加入する。

※特別加入団体を事業主、特定作業従事者を労働者とみなし、擬似雇用関係を創出して労災保険を適用させるみたいです。

手続は特別加入団体から、所轄の労働基準監督署を経由して労働局長へ提出します。

 

 

特定加入団体について

大阪の特別加入団体は以下のURLから検索できます。

因みに4月から追加される柔道整復師法、芸能従事者、アニメーション制作従事者、創業支援等措置に基づき事業を行う方がどの特別加入団体に入るかはまだ記載されていません。

https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudou_hoken/hourei_seido/_84334/_100000.html

 

給付日額・保険料

 

給付基礎日額とは、保険料や、休業(補償)給付などの給付額を算定する基礎となるもので、申請に基づいて、労働局長が決定します。給付基礎日額が低い場合は、保険料が安くなりますが、その分、休業(補償)給付などの給付額も少なくなりますので、注意が必要です。保険料を自分で決めれる点が特別加入の面白い点です。

保険料負担は給付基礎日額にもよりますが、思ったより高くはないのではないでしょうか?

 

補償対象の範囲

例:建設業の一人親方など

1.請負契約に直接必要な行為を行う場合

2.請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合

3.請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業所において行う行為

4.請負工事に関する機械や製品を運搬する作業

5.突発事故により予定外に緊急の出勤を行う場合

 

通勤災害は一般の労働者と同様に扱います。

 

  

4月から追加される4職種の注意点

 

① サラリーマンの様な働き方をする場合は通常取りの労災加入になります。事業主に相談して雇用契約書を結んでその事業主の労災に加入する形になります。特別加入の対象はあくまでも業務委託の様な形態で働く個人事業主が対象になります。

 

 

② まだ始まったばかりの制度なのでどの様な処理になるか不透明ですが、腰痛の様な業務上か外か判断がつきにくいケガの場合の給付の問題。腱鞘炎、声帯のポリープなどどの様に扱うは疑問が残ります。

 

 

終わりに

 

当事務所は大阪SR経営労務センターに所属しています。大阪SR経営労務センターは大阪府の社労士の集まり結成された労働保険事務組合です。当事務所も大阪SR経営労務センターに属しており、中小企業主とその事業に従事する者(第一種特別加入者)や一人親方(第二種特別加入者)の事務処理の委託が可能です。もし、労災に加入されたい役員様や一人親方様は是非ご相談ください。