賃金アップ不要で48(60)万円 高年齢者無期雇用転換コース知ってますか?

  

65歳越継続雇用促進コースの受け入れが2021924日で停止し、その後は持続可能な形態の助成金へ変更するとお達しが発表され70歳以上定年引上げで120万円もの助成金がおりるという破格な助成金は終焉を告げますが、65歳越雇用推進助成金にはまだ魅力的な助成金が二つ存在します。

 今回は65歳越雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)について解説します。

  

高年齢者無期雇用転換コースとは?

 簡単に説明すると50歳以上定年年齢未満の有期契約社員を無期契約に転換すると48万円(生産性要件を満たすと60万円)支給される助成金です。類似の助成金でキャリアアップ助成金(正社員コース)がありますが、これは有期契約社員を正社員にする又は無期契約社員に転換すると57万円(28.5万円)支給されます。考え方は非常に似ていますがキャリアアップ助成金(正社員コース)は賃金総額を3%引き上げないといけないのに対して高年齢者無期雇用転換コースは3%の賃金アップは不要な点で高年齢者無期雇用転換コースは使い勝手が良くなっています。

 

キャリアアップ助成金(正社員コース)有期から無期雇用転換への相違点

キャリアアップ助成金(正社員コース)は何も正社員にしなくても有期契約社員から無期契約社員に転換する場合も助成金がおります。助成金額は28.5万円と減少しますが、この有期契約社員から無期契約社員への転換の考えは高年齢者無期雇用転換コースの考えに非常に近いです、以下では簡単に両者の相違点をまとめています。

高年齢者無期雇用転換コースは50歳以上64歳未満(定年年齢未満)と年齢制限がありますが、キャリアアップ助成金は転換時の年齢が就業規則の定年年齢のマイナス1歳なら認められます。50歳未満はキャリアアップ助成金で50歳以上は高年齢者無期雇用転換コースですみ分けするのは一つの方法です。高年齢者無期雇用転換コースは正社員にしなくても無期雇用に転換するだけ受給できますが、正社員にしても当然ながらOKです。但し、就業規則に有期契約社員から正社員に転換するルートを導入しておかないと認められないので注意が必要です。つまり、単に有期契約社員から無期契約社員に転換するだけの規定しか就業規則に導入していないと正社員にしても認められないので注意が必要です。

一番大きな点は、高年齢者無期雇用転換コースは賃金アップが不要な点です。なので、50歳以上でも正社員化するならキャリアアップ助成金が助成金額面では有利ですが、3%アップは求められるので場合によっては高年齢者無期雇用転換コースが有利なケースもあります。どちらを選択するかは会社の実態との相談になります。

 

なぜ、非正規から無期雇用転換しないといけないのか?

 

有期契約と無期契約の違いは何?とよく聞かれますが、厳密に言えば就業規則の作成方法によりますが、端的に言うと契約期間が有るか無いかの違いになります。なので、有期社員社員と無期契約社員で労働条件に差を設けていないと期間の定めが有るか?無いか?の違いだけになります。

では、労働条件に相違が無いのになぜ、有期契約から無期契約に転換しないといけないのでしょうか?
答えは民主党時代に改正された労働契約法18条にあります。労働契約法18条は「同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換する」と規定されています。
この改正は非正規社員の雇用管理が雑で有期契約社員という名ばかりで無期雇用扱いの労務管理をしていた会社が突如雇止めをする様なケースで労働者を事前に救済する案として規定されました。

なので、有期契約社員の雇用を2回以上繰り返し、結果契約期間が5年以上になると無期雇用に転換しないといけなくなるので、漠然と有期契約社員を雇用している会社は注意が必要です。

高年齢者無期雇用転換コースやキャリアアップ助成金(正社員コース)はこの様な状況を回避する助成金の役割を示しています。この助成金を知った上で有期契約社員を含めた非正規社員の処遇を行うと会社にとって非常にプラスになります。

 

因みに高年齢者無期雇用転換コースは雇用開始から5年以内の場合に利用できます。5年以上雇用している有期契約社員は無期転換できる権利を取得しているからです。キャリアアップ助成金(正社員コース)は非正規として雇用されて3年以内と制限されます。3年以上有期契約社員として雇用されるケースは利用できないので注意が必要です。

 

 

助成金のタイムスケジュール

高年齢者無期雇用転換コースのポイント

 

① 無期雇用転換計画書の認定を受ける。

無期雇用転換計画書を事前に提出し認定を受けないといけません。これはキャリアアップ助成金で言うキャリアアップ計画書に当たります。ようは有期契約から無期契約に転換していく計画書を指します。これが無い状態でいくら有期契約から無期契約に転換しても助成金は下りません。

 

② 無期雇用転換後は雇用保険被保険者であること

無期雇用転換前は雇用保険被保険者でなくてもOKですが、無期雇用転換後は雇用保険被保険者でないといけません。雇用保険の加入条件は週20時間以上の労働見込と31日以上の雇用の場合に加入になるので、転換後は20時間以上就労する見込みが無いと助成金の受給はできません。

 

終わりに

 この助成金はあまり知られていないみたいですが、上手に活用すれば非常にお得な助成金です。特に高齢者が多く就労する環境下(介護、福祉、飲食等)では非常に魅力的です。

この助成金を活用する一番のメリットは有期契約と無期契約の違いを会社側が自覚し、きちんと管理するようになる点と考えます。無期契約にすると有期契約の時の様に雇止めができなくなり、実質解雇するしかなくなります。なので、課題が多い有期社員を無期転換したのでは会社も大変なことになるので、そうならないために課題が多い有期社員は適切な労務管理を試みないといけませんが、この助成金が適切な労務管理のきっかけになるのかと私は考えます。