雇用管理制度助成コースの支給申請時のポイント解説
今年の入り2件目の雇用管理制度の支給決定が無事終わりました。1件は生産性の要件を満たしたので72万円の受給です。
ここでは、雇用管理制度の支給申請の際のポイントについてまとめましたので、申請をご検討の場合は是非このサイトでイメージを掴んで頂ければと思います。
雇用関係助成金とは?
雇用管理制度助成コースは雇用保険を財源とした厚生労働省関係の雇用関係助成金になります。持続化補助金とかIT補助金は経済産業省管轄の助成金で雇用関係助成金とは管轄が異なります。厚生労働省関係の助成金は社会保険労務士の管轄の助成金で社労士と弁護士にのみ提出代行等の権限があります。行政書士や税理士では申請権限がありません。
雇用管理制度助成コースは人材確保等助成金に分類されます。雇用関係助成金も人材開発、非正規社員の待遇改善、雇用維持、従業員に対する労務管理等の様々なグループから構成されていますが、人材確保等助成金は従業員に対する労務管理政策というイメージが強い助成金になります。
その中で雇用管理制度助成コースは、事業主が、正社員に対して雇用管理制度(諸手当等制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度(保育事業主のみ))の導入等により雇用管理改善を行い、離職率の低下に取り組んだ場合に定額で助成する制度です。
雇用管理制度助成コースとは?
雇用管理制度自体は、諸手当等制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度等複数ありますが、使い勝手は健康づくり制度が一番です。その理由は、この助成金は正社員に対して導入した雇用管理制度を導入する必要があります。例えば諸手当制度を選択して例えば家族手当を導入しても在籍している正社員全員がその家族手当を受給しないと要件クリアになりません。もし、一人でも家族手当が支給されない正社員がいるならばその者だけに対して諸手当制度に該当する手当を導入しないといけません。そして、その一人に対して例えば住宅手当を導入した場合、その一人以外にも住宅手当の支給要件に該当する正社員が在籍しているなら当然ながらその者にも住宅手当を支給しないといけなくなります。もし、労働者が少ないなら諸手当等制度でもある程度コントロールできるでしょうが、労働者数が大きくなると難しいですし、助成金以上の金銭的な負担が会社に発生します。逆に健康づくり制度はがん検診などを導入しますが、がん検診等は1年に1度実施すれば事足りるので諸手当等制度よりランニングコストは格段に少なくなります。
雇用管理制度のイメージ
雇用関係助成金やその他の補助金などでも共通しますが、支給申請までの流れは①計画届を提出して②提出した計画届を労働局等に認定してもらい③認定してもらった計画通りに、進めていき ④ 計画通りに事が進めば支給申請をかけるというのが流れです。計画届提出から助成金の申請までの期間は助成金の種類によりますが、雇用管理制度助成コースでは最短で1年5カ月です。それに支給申請してから3カ月から6か月程度審査に係るので標準的には約2年かかるイメージです。それが、長い短いかは個人の主観によりますが、少なくとも助成金を当てに資金繰りをしていたのでは失敗します。
雇用管理制度の支給申請までの流れは、前回HPで説明したので、詳細はそちらで確認して頂きたいです。
健康づくり制度について
健康づくり制度は法定の定期健康診断以外でがん検診等(胃がん検診、子宮がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、腰痛健康診断)を就業規則に導入することで達成します。ここで挙げた8項目の検診をすべて就業規則に導入して労働者にどれか一つ選択させてもよいですし、胃がん健診のみを導入して毎年実施していくのでも問題ありません。一つの検診しか導入しないリスクとしては医学的な見地から実施する必要が無いケース、性別的な要因で実施ができないケースがあります。例えば乳がん検診は女性が主な対象なので男性には実施できない場合があります。もし、乳がん検診のみ導入しても男性社員がいれば実施できない可能性があるので、そもそも助成金の支給申請ができなくなります。また、中には乳がん検診等毎年不要なケースもあります。この助成金は支給申請までに少なくとも2回はがん検診等を実施しないといけないので、毎年検診を実施できないとなるとこの場合も支給申請ができなくなります。
そのため、一つの検診はリスクが高いのでできれば2.3程度の検診を導入する子をお勧めします。その中でも歯周病疾患健診は金額的には他のがん検診より安いです。また性別的な要因で実施できない場合もないですし、歯の健康は全ての労働者に対して必要です。ただし、総入れ歯の労働者に対して歯周病疾患健診ができるのか?疑問が残りますが、
支給申請時のポイント
① 支給申請までに最低でも2回以上雇用管理制度実施する必要あり。
雇用管理制度助成コースはまず計画期間内に1度雇用管理制度実施します。そして計画期間が終了すると、そこから1年間の離職率判定期間に入ります。その離職率判定期間内にもう一度健康診断を実施する必要があります。その1年間の離職率判定期間に雇用管理制度を実施するタイミングは計画届提出時にどの様に雇用管理制度を実施するかにかかっています。
これは、私が以前提出した際の概要票の一文です。
私は毎年度雇用管理制度を実施すると計画届を提出しているので①1回目は3カ月の計画実施期間内②2回目は計画実施期間の翌年度に実施しています。
ここでの一番のポイントは計画期間内に雇用管理制度を実施することです。最悪2回目の雇用管理制度は支給申請の直前でも大丈夫ですが、計画期間内の雇用管理制度はその期間内に実施しないと認められません。もし、実施できないなら不支給まっしぐらです。どうしても計画期間内に実施できない場合なら計画終了前に延長は可能です。なので、計画期間内に雇用管理制度を実施するのは一番の山なのでそこは外さないようにします。
② 就業規則も計画届で提出した予定通りに改正を行う。
もし、就業規則の変更なしに雇用管理制度を実施しても認められません。
なので、もし就業規則の改正が2021.10.1なら2021年9.30にまでに改正後の就業規則の周知等を実施し、改正後速やかに監督署に就業規則の提出を行います。因みに支給申請時に改正後の就業規則の提出は必須です。計画提出時に案として提出した規則通りに変更が必要です。
③ 漏れなく正社員全員に雇用管理制度を実施する。
雇用管理制度は正社員全員に実施して初めて認められます。もし、漏れがあれば認められません。なので、労働者数が多い会社ならきちんと管理していかないと漏れが発生してしまうので注意が必要です。因みに、支給申請時に雇用管理制度を実施した労働者に対して自署で署名してもらう必要があります。支給申請時に忘れない様にしないといけません。
④ 雇用管理制度を実施した領収書
雇用管理制度を実施したことを実際に証明するのに領収書は必須です。そして、その領収書も会社が半分以上雇用管理制度実施費用を負担したことが分かるようにしないといけません。私が申請代行する際は就業規則の規定は雇用管理制度実施費用を会社が半分以上負担するとした上で、計画期間内と2回目の雇用管理制度実施の際は全額会社負担で実施するようにお願いしています。全額会社負担なら当然ながらあて名は会社になりますが、時々従業員の個人名で領収書が作成されるケースがあります。この状況は客観的には労働者が負担している形に見えるのでこの領収書を出したのでは助成金は下りません。この場合は従業員から会社宛てに領収書を出す等して補足しています。
領収書で正しい形はあて名は会社で但し書きは○○さんのがん検診費用等です。個人を特定して、何の検診を受けたのか明確にすることで助成金の申請がスムーズになります。
⑤ 社会保険納入証明書など
法人などは社会保険が強制適用なので社会保険に加入していないと計画届ですら受け付けてくれません。個人事業主で5名以下の事業所は社会保険が任意となるのでこの場合社会保険に加入していなくても助成金の申請は可能です。
多いのが社会保険加入漏れで、フルタイムだけで社会保険に加入していないケースです。この場合、少なくとも法人の会社で正社員が社会保険に加入していないなら加入してからの申請しないと社会保険に加入しろと指摘されるケースは高いです。なので、社会保険の加入漏れは注意が必要です。
終わりに
雇用管理制度助成コースはベーシックな助成金ですが忘れていたら一発アウトの落とし穴も多数存在します。なので、助成金を検討されるならぜひ社会保険労務士にご相談ください。
計画届から支給申請まで完全にサポートして受給まで導きます。