賃金アップ 3%に!! キャリアアップ助成金(正社員コース) 要件緩和

 

令和34月よりキャリアアップ助成金の正社員コースの賃金アップの要件が5%から3%に変更になりました。要件が緩和された一方で、賞与を賃金アップの要件に算入できなくなりました。しかし、もともと賞与は事前に支給時期などが就業規則に明記されていないと賃金アップの要件に参入できないこともあり、今回の改正は改善であったと考えます。

 

以下ではキャリアアップ助成金の要件を説明していきます。

 

キャリアアップ助成金とは?

 

キャリアアップ助成金は事前に提出しているキャリアアップ計画書に沿い、非正規社員を正社員に転換し、その際賃金総額を3%アップさせた場合に支給される助成金です。

 

正社員転換前の非正規雇用の期間が6か月以上3年未満の労働者を

正社員転換6か月経過した時点で助成金の申請が可能になります。

非正規社員の期間は6か月以上3年未満ならいつでも正社員転換は可能で、支給申請は正社員転換の時期で決まるのがポイントです。非正規社員の状態ならいくらでも修正ができますが、一度正社員にすると支給申請まで一直線というイメージです。

 

 助成金申請の際の注意点

 

ポイント

①キャリアアップ計画書を事前に労働局に提出し承認を得ること。

②正社員の就業規則を定めておくこと

(正社員就業規則通りに労働条件の設定すること。)

③基本給の3%ではなく、賃金総額の3%であること。

④正社員転換規定に沿い、正社員化を実現すること。

① キャリアアップ計画書を事前に労働局に提出し承認を得ること

 

キャリアアップ計画書を事前に労働局に提出してない状態でいくら正社員化しても助成金はおりません。一度提出した計画書は、計画期間内は有効なので、その間今回みたいに助成金の支給要件が変更になっても計画書の再提出は不要です。もし、新しキャリアアップ制度を追加する場合は計画の変更届が必要になります。

 

 

② 正社員の就業規則を定めておくこと

厚生労働省関係の助成金は全てにおいて就業規則が必要かといえばそうではありませんが、条件を定めたり変更したりする助成金は就業規則の存在は必須になります。キャリアアップ助成金正社員コースも正社員の労働条件の確認の為に、仮に労働者が10名未満であっても就業規則は必要になります。

作成は大変ですが、就業規則があると他にも助成金の幅が広がります。

③ 基本給の3%ではなく、賃金総額の3%であること。

3%アップを厳密に説明すると、基本給でもなく、賃金総額でもなく、基本給と除外できる手当を除いた総額の3%アップです。除外できる賃金とは、例えば通勤手当・食事手当・家族手当・皆勤手当等です。通勤手当や食事手当は実費弁済的な性質の手当、家族手当は労働の対価という賃金の性質からは外れるため、皆勤手当は支給されるかどうか不安定な手当だと理由で除外されます。あと、時間に応じた時間外手当、深夜勤務の手当、休日出勤の手当等も除外されます。

その様に考えると除外手当が多いですが、問題は固定残業代です。

固定残業代も除外できるケースもありますが、要件が厳しく、この要件を事前に知らずに固定残業代を除外する方向で手続きを進めるのはほぼ不可能に近いです。そのため、固定残業代を支給している会社はあらかじめ固定残業代を含めた賃金総額で3%を考える方が無難です。

上記 例3の具体的な説明

基本給が上がる=時給の単価が上がる⇒割増賃金の単価も上がる

すると、固定残業代が正社員前後で同じ金額なら正社員転換後の固定残業で働かせることができる時間数は減少します。

固定残業代が30,000円 ① 正社員転換前(非正規社員)の時間外の単価が1,500

② 正社員転換後の時間外単価 2,000

①の場合 30,000円÷1,500=20時間

②の場合 30,000円÷2,000=15時間

 

固定残業代の金額は30,000円で変わらないが、時間数が20時間から15時間に減少しているので、この場合は固定残業代を含めて賃金総額で3%以上増加しないと助成金は受給できません。

ここは非常にややこしい点です。昨年からこのように変更されました。変更理由もこの要件で不支給が続出したので5%から3%に変更になったのでと推測しています。

 

④ 正社員転換規定に沿い、正社員化を実現すること。

キャリアアップ助成金の申請には正社員転換規定が必要になります。もし、それが無い状態で転換しても助成金は受給できません。次の段階は正社員転換規定通りに正社員転換しないと助成金は受給できません。例えば正社員転換試験は毎年41日に実施すると規定しておいてそれ以外の日に転換試験を実施しても助成金はおりません。また転換は毎月1日に登用すると規定しておいて、15日正社員登用しても要件から外れるので受給できません。

多くの人が見過ごしがちな点ですが、助成金全般に策定した計画通りに進めないと助成金はおりないので注意が必要です。