令和3年度に移管される障害者正社員コースの活用

助成金上の障害者の定義について

令和34月からキャリアアップ助成金に障害者雇用安定助成金から障害者正社員コースが移管されるに伴い障害者の定義について再確認したいと思います。

 図は障害者雇用安定助成金のリーフレットの抜粋です。

一般的に認知度が高い身体障害者・知的障害者の定義が記載されています。

 定義されている全障害に共通するのは障害者手帳の発行がなされていなくても医師の診断書で障害者として認められる可能性がある点です。

 特に発達障害や高次脳機能障害等障害として認識しづらい障害やうつ病等で障害者手帳取得に難色を示す可能性がある場合に、手帳のなしでも助成金が活用できる点で有利です。しかし、会社の独善で従業員に診断書を取得させるなどはあってはならない事なので、きちんと理由を明記した上で手続きを進めていく必要があります。

 

具体的な活用の機会

障害者正社員コースは対象の障害者を正社員として処遇しないといけません。当然ながら正社員の就業規則が適用されます。賃金も正社員の賃金テーブルが適用される反面、正社員になる障害者も残業命令や配置転換、職種命令には従う形になります。障害の種別によりますが、身体障害者は障害により長時間労働ができなかったり、通院時間の関係で残業ができなかったりする場合もあります。また、発達障害や精神障害者の様に仕事内容の変化や業務量の増加についていけない場合もあります。

障害者正社員コースで現実的に活用できるのは短時間正社員、勤務地限定正社員、職務限定正社員(以下、「多様な正社員」と略)になると思います。

多様な正社員を導入することで、正社員とアルバイトとの中間に位置する人材育成が可能になります。今までの日本の正社員が背負っていた長時間労働が足かせとなり参入できなかった女性、リワーク中の労働者、障害者等にも正社員としての就労の可能性が広がる点でも意味が有ります。何かしらの制限を加えていることで通常の正社員よりも賃金を抑えた形で雇用できるのも会社のメリットになります。

障害者雇用においての労務管理

障害者は健常者と比較して配慮が必要な場合も多く、通常の就業規則を当てはめていたのでは健常者との差が生じトラブルになる可能性が有ります。かといって、障害者専用の就業規則を作成してそれに従い労務管理を行うというのは、障害を理由に区別をしているという点でセンスを感じません。そこで、考えられるのが短時間正社員、勤務地限定正社員、職務限定正社員等の多様な正社員に適用する就業規則です。

① 障害の関係で長時間労働ができない障害者には短時間正社員として処遇し、当然時間に応じた賃金とする。

② 転勤ができない場合⇒勤務地限定正社員で処遇

③ 職種変更が難しい場合⇒職種限定正社員で処遇

  

元々、障害者の正社員化を目的に考えられた規定ではなかったとお思いますが、障害者正社員コースがキャリアアップ助成金正社員コースに移管されるに伴い認知度も上がり活用されることを期待します。また能力があっても制約により十分な力を発揮できない人が活躍する機会を得ることができる、これは働き方改革に通じます。規定の管理は大変になりますが、よい人材の一層の活用を図るためにも多様な正社員に関する規定を整備し障害者正社員コースをチャレンジしてみてください。