知的障害・てんかんで支給停止事由消滅届 20歳前の障害基礎年金支給再開完了

  昨年10月頃に申請した支給停止事由消滅届の結果が2月中頃に出て、無事20歳前の障害基礎年金2級で支給開始されました。

  この事例は元々申請人が20歳到達時に転換で申請し2級に認定されていましたが、初回の更新のタイミングで2級不該当という処分が下り支給停止になってました。その後数年経過後当事務所に相談が入る受任に至りました。

 障害年金を再開又は再申請する際にとる手続き

 ① 診断書や障害認定調書等の確認

当事務所にも自分で年金申請したけど不支給だった、どうしたらよいのか?等の相談が入ります。再申請を検討する際にポイントになるのが申請時の資料になります。申請時の資料があれば、なぜ、ダメだったのか?大体わかります。特に精神系の年金で知的障害の場合は初診日で不支給になることが無いので、診断書を見ればわかります。

申請時の資料は診断書、病歴就労状況申立書、受診状況等証明書の3点です。知的障害の場合は初診日が関係なくなるので、診断書と病歴就労状況申立書の中身で不支給の理由は分かります。

しかし、一般の方が申請する際にその資料をコピー取っておくケースは非常に少ないので、申請後不支給になるとコピーが無いケースが多々あります。これでは不支給理由が分からないので、対策が取れません。

なので、この場合は年金事務所から申請の際の資料を取り寄せるか?個人情報開示請求を行い診断書等一式とついでに障害認定調書(障害年金の審査結果が記載されている書類)を取り寄せます。

時間はかかりますが、申請資料が無いと対応策が取れないのでこの手続きは必ず行います。

 

② 不支給理由又は不更新理由の確認を行う

障害認定基準(障害年金の認定に用いられれる基準)や精神疾患の場合は『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』が重要になり、そこに年金受給や更新のカギが書かれています。

下記表の様に、精神障害の障害年金は日常生活能力の判定と程度の関係で等級の目安が決まります。なので、診断書を見て日常生活能力の判定と程度を読み取ると年金が受給できるかどうかが決まります。例えば判定平均が2.53.0で日常生活の程度が3なら障害等級の目安は2級又は3級になるので、障害基礎年金の場合は2級までしかないので受給できない可能性が高いです。また判定平均が3.0以上3.5未満で障害の程度が3なら障害等級の目安は2級なので障害基礎年金の受給可能性は高まります。

なので、一度年金申請して不支給だった場合は、まず診断書の日常生活能力の判定と日常生活能力の程度を確認して、それを障害等級の目安に当てはめ年金等級を予想してください。

以下は私見ですが、基本的に障害基礎年金なら目安の位置が2級以上に該当しないと受給は難しいと感じます。目安の位置が2級又は3級では2級に認定されない可能性が高いです。また障害厚生年金なら3級以上で、2級又は3級の場合は3級に認定される可能性が高いです。

 ③ 障害等級目安以外で留意事項

障害等級の目安が2級単独で障害基礎年金2級が不支給又は不更新のケースはありえます。目安はあくまでも目安なので、絶対ではありません。

目安以外にポイントになるのは以下の内容です。

1.就労2.一人暮らしかどうか3.服薬の有無4.病歴就労状況申立書と診断書との矛盾等が考えられます。

知的障害に限ると3.服薬はあまり関係ないので3以外が年金更新のポイントになります。

 本事例の基本情報

出生から現在までの経過

出生直後から原因不明のてんかんあり。ここ数年はてんかん発作が落ち着いているが、以前は毎月てんかん発作があり。元々障害年金自体は「てんかん」で申請して受給権発生していた。

 

診断書上の情報

2 日常生活能力の判定

1) 適切な食事          3

2) 身辺の清潔保持        3

3) 金銭管理と買い物       3

4) 通院と服薬(要)       3

5) 他人との意思伝達及び対人関係 3

6) 身辺の安全保持及び危機対応  3

(7) 社会性            3点

判定平均    3.0

3 日常生活能力の程度

知的障害     4

エ 現症時の就労状況

一般企業 勤続年数5カ月  週5日 給料額 8万円 仕事の内容 介護補助

 

本事例において障害等級の目安の当てはめ

本事例において日常生活能力の判定平均の目安は3.0で、日常生活能力の程度は知的障害④なので、障害等級目安に当てはめると2級単独です。

当時就労はしていましたが、社会保険加入程度の就労ではなく、家族と同居の状態でした。また支給停止事由消滅届の事案だったので、病歴就労状況申立書の作成も不要でした。なので、手続的には支給停止消滅届と年金診断書を提出するだけだったので手続き的には非常にスマートでした。

就労面がさほど審査に影響を与えなかったのか、目安通り2級で支給再開が決まりました。この事例の方は本来なら支給停止にならずに年金を受給し続けるべき人でしたが、医者の無理解で年金がストップしていました。知的障害者の方は何らかの形で日常生活に制限が出るのは明白なので、無条件でも年金が支給されても良いのではないかと常々感じています。

 

終わりに

一度不支給だったり支給停止になったりした年金を再開するのは手間がかかりますが、ただ闇雲に動いても支給再開には至りません。順番としては、まず①診断書を見る ②診断書が無いなら取り寄せる③『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』を参考になぜダメだったのか検討する④ダメな理由をリカバリーする。と年金再開の可能性は高まります、それでもハードルは高いので、もしお困りならプロへの相談をお勧めします。