軽度知的障害でフルタイムの障害者雇用で障害基礎年金2級受給できるのか?

  軽度知的障害でフルタイムの障害者雇用で20歳前の障害基礎年金の請求完了。

  先日、軽度知的障害でフルタイムの障害者雇用で20歳前の障害基礎年金の請求が無事完了しました。

軽度知的障害で年金が受給できるの?障害者雇用でもフルタイム就労していて障害年金を受給できるの?と疑問に思うかもしれませんが、経験的には受給可能性は高いです。以下では①知的障害の程度②障がい者雇用と障害年金の関係についての論点について説明していきます。

 

① 知的障害の程度について

 

知的障害とは

知的障害(精神遅滞)は知的機能と適応行動の両方に制限を持つ障害で発達期に生じる物と言われてます。原因は不明な場合は多いですが、IQ値と適応機能を総合的に評価して、軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。

大阪府は知的障害者の障害者手帳を療育手帳と表現し、A(重度)B1(中度)B2(軽度)の3段階で分けています。これは自治体により表現が異なり、東京都は愛の手帳と表現したりしますし、大阪のお隣の和歌山県では呼称は大阪と同じ療育手帳ですがAA1A2に分かれ、最重度、重度と使い分けがなされたりします。

判定に関しては経験上、知能指数が重要ですが日常生活のヒアリングや成育歴等も加味され総合的に判断されます。知能指数は高いが日常生活能力が低かったり、問題行動が有ったりすれば重度と判定されるケースもある様子です。

大阪府の場合は大阪市と大阪市以外で判知的障害の判定機関が分かれています。初期の相談窓口は市役所か区役所に相談に行き、区役所で簡単な聞き取りなどを行い、その後判定機関を紹介される流れみたいです。申し込みから検査、療育手帳の発行までは6か月程度時間はかかると聞いています。

 

 療育手帳の等級と障害年金の等級の関係性について

 障害年金において療育手帳の等級はあくまでも参考資料です。なので、療育手帳が重度であっても年金が1級になるとは限りません。障害年金はあくまでも診断書の内容で判断されますので。その根拠が『障害認定基準 認定要領』にあります。療育手帳とは明記されていませんが、知能指数が直接年金等級に影響を与えないとは明記されています。

そのため、軽度知的障害であっても障害基礎年金2級が下りる可能性は十分あります。経験的に軽度知的障害でも障害基礎年金2級は下りています。逆になぜ軽度なら年金が下りないかを推測するに療育手帳の軽度は年金なら3級相当にあたり、障害基礎年金は2級までしかないので軽度では下りないと考えるのではないかと思います。

また療育手帳と等級の関係は『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』に整理されています。

 

中度以上なら2級以上の可能性を検討し、軽度でも不適応行動等で日常生活に制限があれば2級の可能性を検討するとあることから、手帳の等級と年金等級が連動しないことが分かります。

 

② 障がい者雇用と障害年金(知的障害)

認定要領により就労と年金等級の関係

 障害年金と就労の関係は特殊で肢体障害(眼、聴覚、上肢下肢等)みたいに就労と年金等級に関係性が無い障害もあれば、内臓(肺、心臓、肝臓等)の様に就労の影響を色濃く受ける障害もありますが、精神障害はその中間の様をイメージすると理解しやすいと思います。

『障害認定基準 認定要領』を見ると『就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したも のと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。』と記載されています。要は、知的障害者が就労するに、就労支援施設、一般就労であっても援助や配慮があって労働ができているので、労働しているから、直ちに日常生活能力が向上しているとは捉えない。障害年金の日常生活の認定は仕事場での配慮事項、仕事の様子などを考慮すると記載されています。

『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』からみる就労と障害等級の関係

『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』では就労と年金の関係について先の認定要領より詳しく記載されています。

『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』は精神障害を知的障害・発達障害・精神障害の3つに分けて特徴の説明をしています。ここでは知的障害の就労を当てて解説します。

これ以外にも3障害に共通する共通事項等があり、そこでは雇用形態、仕事場での配慮事項等は障害等級に影響を与えると説明されています。

 

仕事の種類は重要で、単純かつ反復作用の場合は労働能力があまり高くないと判断されます。私が以前経験した事例では1日中ボルトとナットを分解する仕事をしていたり、機械を洗ったりするような仕事は単純反復作業に当たるのかと思いました。また、上司からの指示通りに作業をしたり、1日の仕事がマニュアル化で決まっていたりする場合も単純反復作業に当たるのかと思います。

仕事場での意思疎通状況は、上司や同僚とコミュニケーションが円滑に取れないケースを想定しています。言葉での指示が伝わらないので、視覚を通じて要件を伝えたりするのがこれに当たります。

 仕事場での様子のヒアリングの仕方

仕事場の様子をどの様に仕入れるのか?問題になります。診断書でも仕事場の様子を各欄がある以上、ここをスルーするのは障害年金の申請上プラスは無くマイナスです。

ある程度の家庭での様子から推測できる部分もあるともいますが、仕事場と家庭は異なるので仕事場の様子をヒアリングするのが確実です。

ヒアリングの方法としては①会社から直接聞く②支援者(障害福祉サービスによる支援者)から聞くの2パターンがあります。①は会社によっては拒否されるケースもあるので②を利用しやすいかなと思います。

まとめ

 以上が軽度知的障害でも障害基礎年金が受給できる可能性の根拠です。

初めの療育手帳の等級は2級を目指すなら関係は無いです。1級を念頭に置くなら軽度なら厳しいでしょうが、2級なら軽度でも問題ないです。どちらかというと療育手帳の等級より、仕事場での様子が重要です。指示や判断を求められる仕事に従事している知的障害者は少ないと思いますが、きちんと作業内容、仕事場での様子、配慮事項等をヒアリングしないと労働能力があり、かつ日常生活能力もあると認定され年金が不支給になるケースもあるので注意が必要です。