20歳以降保険料未納期間が長期間継続するが軽度知的障害で20歳前の障害基礎年金の請求完了した事例

 

先日、20歳以降保険料未納期間が長期間継続していた方の20歳前の障害基礎年金の請求が完了しました。

請求した障害名は「軽度知的障害」と「自閉症スペクトラム」でした。

20歳以降保険料の未納期間が長期に渡り、なぜ請求ができたのでしょうか?

答えは知的障害の初診日の取り扱いにあります。

 

知的障害とは???

知的障害(精神遅滞)は知的機能と適応行動の両方に制限を持つ障害で発達期に生じるものです。多くの場合原因は不明です。検査方法はIQ値と適応機能を総合的に評価して、軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。

私の経験的には知的障害かどうかは知能指数が重要ですが、知能指数以外にも日常生活のヒアリングや成育歴等も加味され総合的に判断されます。知能指数は高いが日常生活能力が低かったり、問題行動が有ったりすれば重度と判定されるケースもある様です。

 

障害年金においての知的障害とは??


障害年金は初診日当時加入していた保険から年金が支給されます。厚生年金加入中に初診日が有るなら障害厚生年金、国民年金加入中に初診日があるなら障害基礎年金、20歳未満に初診日があるなら20歳前の障害基礎年金という具合です。

 

知的障害は障害年金上、先天性の疾患と考えられるので初診日は出生日という扱いになります。

行政上の知的障害者の初診日が出生日である根拠は下記の通達になります。

(先天性障害の取り扱いについて 昭和43223日 庁文発第2149号)

そのため、本事例において軽度知的障害と診断され、診断書にもその旨があるので初診日は出生日となり20歳前の障害基礎年金の請求になります。20歳前の障害基礎年金はそもそも年金加入義務のない時期の話なので、保険料の納付要件は問われません。そのため本事例の様にいくら保険料の未納期間が有っても請求は可能です。

 

自閉症スペクトラムと軽度知的障害の関係

複数の精神疾患が併存する場合の取り扱いについては「給付情2011-121」が参考になります。これには様々な精神疾患が併存する場合の関係が説明されています。

(3) 知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされているので、知的障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に後から発達障害が診断され障害等級に該当する場合は、原則「同一疾病」として扱う。 例えば、知的障害は3級程度であった者が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合などは「同一疾病」とし、事後重症扱いとする。なお、知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害がある者については、発達障害の症状により、はじめて診療を受けた日を初診とし、「別疾病」として扱う。

 

個人的にはこの「給付情2011-121」の整理は十分ではなく色々解釈の余地が残る疑義にはなりますが、「知的障害」と「発達障害」が併存する場合は同一疾病として扱うとは理解できます。

本事例の障害(「自閉症スペクトラム」と「軽度知的障害」)の判明時期は同時期ぐらいだったので、「知的障害」が先かどうか分かりません。しかし、「知的障害」を先天性の疾患であると考えると前発障害は「知的障害」で後発障害は「発達障害」と考えることができます。療育手帳が発行されている事実を考えると「知的障害」が存在しない場合には該当しないはずなので、やはり「軽度知的障害」と「発達障害」は同一疾病であると考える(「発達障害」は「軽度知的障害」の延長線上にある。)ことができ、初診日は出生日となる扱いになるかとは思います。

もし、「知的障害」だけでも障害年金が受給できる程度の場合、「発達障害」との関係がどの様になるかは「給付情2011-121」には記載がないので不満は残りますが、この場合は「知的障害」と「発達障害」間で相当因果関係があるという扱いになるのかとは思いますが、少し整理が不十分な気はします。

 

 

本事例の論点

本事例は知的障害の障害年金としては、当職が診断書を確認する限り、1点以外は気になる点はありませんでした。

就労もしておらず、広汎性発達障害を有しているので服薬もしている、配偶者や子供もいるので同居人も存在しています。(また最近ヘルパーも利用開始しました。)

その1点に気なる点は診断書裏面 日常生活能力の程度が「精神障害」にチェックが入っている点です。障害年金の診断書記載要領13頁によると、「欄に知的障害が含まれない場合は《精神障害》欄で判定してください。」となっています。①は「障害の原因となった傷病名」なので、ここには軽度知的障害と自閉症スペクトラムの2点が記載されています。知的障害と発達障害が重複する場合は「知的障害」にチェックが入ると記載されていることから「精神障害」にチェックが入るのは間違いにはなります。私も医師に確認しましたが、「自閉症スペクトラムがメインの障害になるので「精神障害」へのチェックは外せない」とのことなのでこの診断書で進めることにしました。

医師の考えも理解できます。知的障害と精神障害が重複している人は多いので、少しでも「知的障害」が入っていれば「精神障害」にチェックしてはいけないというのは個人的には厳しすぎる扱いと感じるので、今回は「精神障害」にチェックのままで提出しました。

 

最後に

障害年金は理屈通りにいかないことも多々あります。役所からダメ出しを喰らい申請がスピーディにいかない場合はご相談ください。根拠をもってスピーディに対応していきます。