うつ状態・ADHDで障害厚生年金2級 3.5年遡りで年金受給が認められた事例

 

前回うつ状態・発達障害で障害厚生年金の遡及請求を行いましたが、無事障害認定日時点2級で認められました。認定期間も5年と有期認定では最長の結果が認められました。また審査期間も3カ月以内でスムーズに決定されました。

 

本事例での論点

① うつ状態が審査にどのような影響を与えるか?

前回申請が完了したお話をしましたが、その際にも論点として「うつ状態」を挙げていました。ここでも再度「うつ状態」がなぜ審査に影響を与える可能性があるか説明します。(あくまでも私の考えですが、)

うつ状態とは??

私は医師でもPSWでもないので詳しいことは分かりませんが、簡単な理解として「うつ病」は一定期間うつ状態が継続し、自然治癒は見込めずその改善には服薬が必要で、一方「うつ状態」は日常生活での何気ない不安や落ち込み等の状態で一定程度時間が経過すると改善する可能性がある症状と私は認識しています。イメージとしては「うつ状態」は「うつ病」まで至っていない状態とイメージすれば理解が進むかと思います。

「うつ状態」でも障害年金の請求は可能ですが、あくまでも障害に至っていないあくまでも状態であるという視点から認定されない可能性は高いと考えます。

 

精神系の障害年金の審査方法…総合認定

障害年金の認定方法はいろいろありますが、精神系の障害年金の認定は総合認定で行われています。

精神系の障害年金の総合認定は、複数の精神障害がある場合それらを個々で判断するのではなく総合的に判断して認定するという手法で行われます。例えば知的障害2級程度・うつ病2級程度の場合合わせて1級でもよさそうですが、総合認定では二つの障害を総合的に判断して認定を行う手法がとられます。そこでは足し算が行われているのか引き算が行われているのか分かりません。

総合認定以外に併合認定や差引認定があります。これは二つの障害を合わせて1級・2級と機械的に併合認定表に当てはめて認定していく手法になります。例えば身体障害2級と精神障害2級を併合すると1級になります。ここには各障害の等級を併合認定表に当てはめ、併合後の等級を導き出す作業になるので、そこには審査担当の主観は介在しません。一方、総合認定では審査担当の主観で二つ以上の精神障害が合わさった等級が決まることになります。そのため、予測できない結果になるケースがあります。

本事例も「うつ状態」と「ADHD」の二つの障害での請求になるので総合認定での事例になります。

総合認定においての「うつ状態」の立場

本事例では「ADHD」と「うつ状態」の2障害で請求をしています。もし、「うつ状態」のみの請求なら障害化していないという理由で不支給の可能性は高いですが、「ADHD」もあるので、それが総合認定という立場でどの様に評価されるかになります。

現在の請求人の障害状態が「うつ状態」と「ADHD」から生じている場合、「うつ状態」が障害認定の対象外ならば「うつ状態」の部分を除いて障害認定するのも一つの考えになります。現に差引認定は重複する障害を認定上控除したりします。しかし、精神疾患は個々の障害状態を評価することは難しく、例えば「うつ状態」の障害程度「ADHD」の障害程度を明確に分けることは困難です。

本事例では予想ですが、「うつ状態」の部分は特にマイナス評価として捉えられなかった可能性が高いです。しかし、いつもこのような結果になるとは限らないので請求する障害名に関しては注意する必要があります。

よくある勘違い 請求する障害が多い方が有利?

請求する障害名以外は基本的に書いてもらわない方がよいと思います。よくある勘違いとして請求する障害が多い方が有利と考える人がいますが、これは間違いです。発達障害のみでも年金受給ができる場合はできます。

複数ある障害名を聞くと、神経症、強迫性障害等、人格障害等の神経症やパーソナリティー系の障害を話されます。しかし、これら障害は原則障害年金の対象外なのでいくら書いても意味がないですし、先ほどの「うつ状態」と同じでマイナスに評価される場合もあります。

 

病歴・就労状況等申立書の作成方法

診断書が「ADHD」と「うつ状態」の2障害で記載されているので、病歴・就労状況等申立書も「ADHD」と「うつ状態」による「日常生活の失敗」や「仕事が継続しない」ことを中心に作成しました。

 

初診日と相当因果関係

 

障害年金は通院の間が空いていても相互の通院に相当因果関係があれば、または相互の通院間の傷病が同一傷病ならば請求は可能です。本事例では現在通院中の病院も含めて3件の病院を回っていますが、相互の病院間で約1年通院していない期間があります。それでも現在の主治医は初診に通院した病院を初診日として診断書を作成してくれました。

初診日の判断は第一には主治医の判断になるので、主治医とよく相談して初診日を特定していくことをお勧めします。