心疾患で障害厚生年金3級受給中に、別疾病で障害厚生年金の請求した事例

 先日、心疾患で障害厚生年金3級受給中の方の、別疾病での障害厚生年金の請求のサポートを行いました。

本事例では別疾病は精神疾患です。経過としては元々仕事が激務で一時期神経症の状態になり、現在ではうつ病に罹患している状態です。また仕事のストレスが原因かどうかは不明ですが、心疾患も発症し、それで障害厚生年金3級を受給しています。心疾患が原因でうつ病になった訳ではありません。仮に原因だったとしても障害年金上でうつ病と心疾患では相当因果関係は「無し」と考えられているので関係はありません。となると「うつ病」と「心疾患」は完全に別疾病になるので障害毎に障害年金の請求が可能という理屈になります。

  

以下では複数の障害年金を請求した場合どの様になるか説明します。

 

① 普通に認定され、既存の年金か今回請求した年金のどちらかの選択になる。

現在、障害厚生年金3級を受給している状態で、もし新たに請求した年金に受給権が発生するとどちらかの選択になります。通常は金額を高い方を選択するのでもし2級認定がなされると新しく請求した年金を選択します。

年金の選択は受給権が発生してから選択するのではなく、申請と同時に選択していきます。

提出書類は「年金受給選択申出書」という様式で障害年金のみに活用するのではなく老齢年金と障害年金の選択をする際にも活用できます。

本事例では既存の年金と新たに請求する年金の初診日が1カ月しか変わらないので、仮に新しく請求する年金が3級なら金額は一緒になると思いますが、金額が高い方で申請を行いました。

 

② はじめて1級又は2

聞きなれない言葉ですが、障害年金の請求方法の一つにはじめて2級という方法が有ります。簡単に言うと3級と3級を併せて2級以上で認定される方法です。

もう少し教科書的に説明すると障害等級1.2級に該当しない程度の障害状態にある者が、新たな傷病(基準傷病)を生じ、基準傷病の初診日以降65歳に達する日の前日までに、基準傷病による障害と他の障害とを併せると初めて1級又は2級に該当したときは、障害年金の受給が得られます。

 

「はじめて1級又は2級」ポイント解説

1.前発障害か後発障害かは初診日で判断します。請求したタイミングで前発・後発が決まる訳ではありません。本事例では精神障害と心臓疾患の2障害が有り心臓疾患で既に障害年金を受給しています。しかし、その初診日は精神障害の少しだけ早いので、前発障害は精神障害、後発障害は心臓疾患になります。

2.基準障害(後発障害)で保険料の納付要件や請求できる年金が決まります。本事例では心臓疾患が後発障害(基準障害)になるので、そこで保険料の納付要件や請求できる年金が決まります。そのため、前発障害時点では保険料を納めていない人には非常に有利な制度になります。

3.65歳到達日までに1級または2級に該当していれば請求は65歳以降でもOKです。ただし、65歳までに1級又は2級に該当している証明が必要になります。そのため、65歳までに基準障害に関して病院に通院していないとカルテがないので診断書が書けないので65歳までに1級又は2級に該当している証明ができません。事後重症請求と比較すると、事後重症請求は仮に65歳までに障害等級に該当していても65歳を超えると請求できない点を考えると「はじめて1級又は2級」は少し優しいです。

 

「はじめて1級又は2級」の注意点

「はじめて1級又は2級以上」に該当しないといけないので、以前前発障害が2級に一度でも該当していれば「はじめて1級又は2級」の請求方法は活用できません。

 

 

「はじめて1級又は2級」の併せての意味

ここまででも併せてという単語をよく使いましたが、併せてとはどの様に併せるのでしょうか? 3級と3級を併せた場合、どのようなケースで2級になるのかよく分かりません。総合認定なのでしょうか? その点疑問に思ったので行政に確認すると「併合認定表を参照しながら認定をする(絶対ではないが、参考にしながら認定している)」とは言っていました。

併合認定表は所見ではややこしいですが、見方を覚えれば簡単です。縦・横に障害等級が割り振られ、各障害に対応する部分の年金が受給できるという意味です。下表で説明します。表の黒〇に注目して頂きます。これは24号と24号を併せると1級になるという意味になります。

問題は37号と37号の部分です。これらを併せると6号にしかなりません。

6号は下表に当てはめると36号の事を差し、あくまでも3級のままです。

 

 

因みに37号は以下の表に当てはまる障害が該当します。

 

 

精神障害は37号の9で心臓疾患は37号の8を指します。因みに心臓を含めた内疾患は全て37号の8に入ります。

 

併合認定表の上では、37号の精神疾患と内疾患が2つあっても、2級には上がらないことが明白なので、その併合認定表を参照している「はじめて1級または2級」でも併せて2級にはならない可能性が非常に高いです。

 

そのため、本事例では「はじめて1級又は2級」を期待はしておらず、初めから精神障害で単独2級を狙い申請を行いました。

 

③ もし二つ以上の障害に相当因果関係が有る場合

 

この場合は既存の障害が悪化した形で額改定請求等の申請になります。あくまでも既存の障害の悪化なので新しい申請ではないので病歴・就労状況等申立書の添付は不要で診断書のみの提出になります。

最後に

 

複数の障害が有るけど、どの様に申請したらよいのか分からないという意見はよく聞きます。重複するケースはややこしいので一人で悩まずに是非ご相談ください。スピーディに対応していきます。