就労継続支援A型通所中で障害者手帳3級の躁うつ病にて障害基礎年金請求完了
先日、就労継続支援A型通所中で、躁うつ病で精神保健福祉手帳3級取得している方の障害基礎年金の請求が完了しました。労継続支援A型での就労の事実がどの様に評価されるかによりますが、請求の感触は悪くありませんが、受給可能性は高いと考えています。
以下では受給可能な理由を認定基準等から説明します。
事例紹介
発病から現在までの経過
請求障害は躁うつ病で、請求障害の初診日は最近で令和元年12月です。以前から職場で上手にコミュニケーションが取れずに、仕事が長続きしない等の課題は有りましたが、精神科への初診日は令和元年になります。
精神科に1年6か月継続通院していましたが、病状に改善が見られず、初診から1年経過後に精神保健福祉手帳3級を取得しています。
医師から障害年金の手続きを勧められた訳ではなく、当事務所に相談に入り申請に至りました。
生活状況は家族と同居しており、配偶者の支援を受けて生活しています。最近就労継続支援A型への通所を開始していますが、月に数回欠勤があります。精神薬は付与供養していますが、病状に改善が見られないです。
診断書上の情報
2 日常生活能力の判定
(1) 適切な食事 3点
(2) 身辺の清潔保持 4点
(3) 金銭管理と買い物 3点
(4) 通院と服薬(要) 3点
(5) 他人との意思伝達及び対人関係 3点
(6) 身辺の安全保持及び危機対応 4点
(7) 社会性 3点
判定平均 3.28
3 日常生活能力の程度
精神障害 4
エ 現症時の就労状況
就労継続支援A型利用 勤続年数1か月 月に4.5日 給料額は記入無し
キ 福祉サービスの利用状況
就労継続支援A型利用
本事例で受給可能性が高い理由
「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(以下「ガイドライン」と略)から抜粋した障害等級の目安です。
判定平均は3.28で程度が4なので、その結果を障害等級の目安に当てはめると2級です。この障害等級目安は目安ですが、それなりに拘束力は有ると考えます。経験的に目安が1級で結果は2級になることは有っても、目安が2級で1級になったことはありません。
受給可能性が高いと論じたのは「2級又は3級」ではなく、単独2級である点も大きいです。障害厚生年金は3級まであるので「2級又は3級」でも最悪3級に引っかかりますが、障害基礎年金は2級までしかないので、「2級又は3級」なら3級と認定されると年金が不支給になる可能性があるからです。このケースでは目安は2級なので、目安上で3級になる可能性が無いのは大きいです。
しかし、あくまでも「目安」は目安なので、目安を無視した決定をされるケースも多いです。以前目安は2級だが、障害者枠で就労しているので不支給と認定されたケースが有りました。なので、目安が2級だからと言って安心はできません。
② 就労しているが、就労支援施設での就労である。
障害年金と就労はある意味永遠のテーマです。肢体障害(眼・耳・手足)は就労の影響を受けませんが、内疾患(心臓・腎臓・がん等)や精神疾患は就労の影響を強く受けます。精神疾患は内疾患よりは影響の度合いは少ないですが、それでも注意は必要です。
障害認定基準から見る精神疾患と就労との関係
認定要領に就労との関係が有ります。これだけ、読むと就労=年金不可にはならず、行政側が仕事の状況についても丁寧に確認しないといけないとも書いています。これだけ読むとなんて優しんだと思いますが、「仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で 受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等」を行政が積極的に確認することは有りません。もし、これらが診断書に明確に書かれていなかったら診断書を請求人に返戻して再度書くようにと求めてくることは無く、即不支給になると思います。なので、就労者の場合、仕事場での就労状況等はポイントになります。
「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」から精神疾患と仕事の関係
先程説明したのが障害認定基準の認定要領からの一文でしたが、もう少し具体化したのが「ガイドライン」にあります。「ガイドライン」は精神疾患を①知的障害②発達障害③精神障害の3つに分類して論じています。請求人は躁うつ病なので「ガイドライン」では③精神障害に該当します。
「ガイドライン」は、障害年金を検討するうえでポイントになる視点を就労や生活等の大きな括りで解説しているのが特徴です。ここでは就労している精神疾患のポイントについて説明します。先ほどの認定要領よりかは具体的にはなっていますが、共通項目なので抽象感はぬぐえませんが、ポイントになるのは上から3番目の「相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。」で、「就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。」と記載されています。
また、その下に「障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。」とあり、障害者枠ではない一般就労の場合は2級までの可能性を検討するとなっているのが、障害者枠での採用との違いです。
「ガイドライン」によると請求人は就労継続支援A型に通所しているので1級又は2級の可能性があることになります。この点も就労はしているが障害福祉サービス利用なので障害年金受給可能性の根拠として考えています。
下記は精神障害の就労時の個別の考慮ケースです。
私が注目しているのは一番上の「安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。」の部分です。
「安定して就労しているか」を考慮するので安定就労していないケースでは年金的にはプラスに作用します。以下は私見にはなりますが、「1年を超えて就労を継続できていたとしても」はポイントで行政は安定就労を1年と捉えている気がします。なので、1年以内なら安定就労とは捉えられないと推測して手続きを進めています。
請求人の診断書作成当時は就労開始1か月程度しか経過していなかったので、安定就労には程遠いのも年金受給可能性がある根拠として考えています。
終わりに
以上が、請求人が障害基礎年金を受給できる根拠になります。障害基礎年金で考えると障害等級目安で2級は2級を受給したいなら必須です。その後、仕事をしている、一人暮らしかどうかの確認と総合的な判断で等級が決まるイメージです。しかし、目安の2級は意外とハードル高いです。なので、請求人の障害状態をきちんと医師に伝えて診断書を作成してもらう必要があります。