自分の症状で精神疾患での障害年金の請求ができるの?

私の事務所に連絡頂くケースで一番多い相談が自分の症状で障害年金の請求が可能なのかどうかです?一番簡単な判別方法は身も蓋もない言い方ですが、医師が診断書を作成しくれるかどうかです。しかし、それ以前でもいくつかの判別方法が有ります。以下では簡単に障害年金の請求ができる状態について説明します。

① 自分の精神疾患が障害年金の請求可能な障害であるかどうか?

原則として障害年金は病名ではなく症状で認定がなされるので、多くの障害が年金の対象になります。しかし、精神疾患は特殊で神経症・人格障害等は病名で対象になりません。

その根拠は障害認定基準の中にある認定要領にあります。

読めばだいたい病名が分かると思いますが、気分(感情)障害はうつ病や躁うつ病を含みます。器質性精神障害は聞きなれない言葉ですが、要するに脳への外傷により障害が生じている場合を指します。例えば交通事故や脳梗塞による高次脳機能障害が代表例です。発達障害は自閉症、アスペルガー、学習障害等も含む概念です。

その根拠は認定要領に記載されています。

 

神経症は精神障害の様態が有れば認定するとは記載されていますが、例外的な扱いなので基本神経症で年金認定されないと理解しておく方が無難です。

 

以上の様に精神系の障害年金を請求する際には病名がポイントになります。人格障害や神経症以外の病名が付くなら申請可能性があります。まず、年金請求を検討する場合は自分の病名が何なのかを明確にする必要があります。時々、神経症や人格障害が年金の対象にならないことを知らない医師もいます。それを知らずにいくら診断書を作成してもらっても意味がありません。自分の病名が何なのか明確にしてから次のステップに進む必要があります。

 

② 病気なのか?障害なのか?障害年金請求のタイミング

病気か障害か?この区別が障害年金の請求ができるかどうかにかかってきます。医師と障害年金について議論していると、障害年金を請求できる程度の障害状態にないと話されるケースがあります。

医師との議論を整理したのが上記図になります。精神疾患が病気の状態なのかそれとも症状が固定化し障害化しているのかでまず判断が分かれます。病気のままなら障害年金の趣旨から外れるので請求できません。もし、精神疾患が障害化しているなら請求できる前提条件はクリアします。障害化していることが確認できるとあとは、障害年金を請求する程度の障害状態にあるかどうかで判断されます。この時点で医師がよく言うのが「障害年金を請求できる程度ではない」との文言です。端的に言うと病状が軽いか重いかの判断になります。

障害年金は障害により日常生活が制限される場合の所得補償制度なので障害が軽かろうが重かろうが、それにより日常生活が制限を受けるなら年金制度の対象になりますが、医師にその視点が抜けている場合があります。但し、その点を説明しても聞く耳をもたない医師もいるので、その場合は医師が納得するまで治療を継続させるか、別の病院に転院するかの選択肢になります。

整理すると、障害年金の請求は病気が固定化し障害化しているか、それとも病気のままかでまず、分かれます。その障害化しているか病気のままかの判断は当然ながら医師の判断です。いくら自分で障害化していると言っても、医師が病気と判断すると請求できません。

次にポイントになるのは障害の程度です。障害年金は障害により日常生活に制限が加わる場合の所得補償制度なので、日常生活が制限を受ける程度の障害状態にないと受給できません。しかし、医師は障害が重度な場合に障害年金を受給できると考えている様子で、日常生活の視点が抜けているケースがあります。そこの折り合いをどの様にするかが年金請求の可否がきまります。

③ 障害年金請求できるタイミングは障害認定日

先程、障害化しているか病気のままかの判断は医師の判断と説明しましたが、この判断をすること自体難しいというのは想像しがたいと思います。そもそも、この程度で障害化するという基準は有りません。なので、障害化のタイミングを医師に委ねると確実に不公平になります。そこで、行政側が考えたのが障害認定日という考えです。障害認定日は初診から16か月経過時点を差し、この時点で障害年金の請求が可能としています。なので、機械的に初診から16か月継続的に通院していると、障害認定日の時点で年金請求は可能になります。しかし、勘違いして欲しくないのは、障害認定日は行政側が障害年金の請求をできるタイミングを規定しただけで、16か月経過した病気が障害化して年金請求できる訳ではありません。仮に16か月経過してもまだ障害化していない病気のままだと診断すると年金の診断書を書いてくれなかったりします。しかし、それでも16か月経過時点を障害認定日とすることで請求する一つの目安ができるのは確かなので、障害か病気かの不毛な論争の機会は減少します。

④ あなたが年金請求できるのか判断方法

では本題ですが、あなたが精神疾患で年金請求ができるのでしょうか?その答えは、冒頭でお話ししましたが障害年金が請求できる病名であり、医師が診断書を書いてくれるなら請求は可能です。しかし、中々言い出しづらい時もあるでしょうから、セルフ診断として以下の基準があります。これは、私が障害年金の相談を受ける際に気にしているポイントです。他の社労士事務所はこれ以外も視野に入れて相談に乗っているかもしれませんが、これら視点をクリアすると保険料の納付要件で請求できない以外、相談者が望めば受任しています。

1.通院期間

先程説明しましたが、16か月経過しないとそもそも請求自体出来ません。なので16か月経過していることは最低条件です。なので、最低条件をクリアした上で長期的に通院しているケースは障害年金の請求できる可能性は高まります。そもそも通院が終了するということは病気がひと段落したことを意味します。なので、通院が継続しているということは病状に改善が見られない事を意味するので、その様な状態が長期に及ぶということは病気が障害化いる可能性が高いので障害年金の請求ができる可能性は高まります。

2.病名について

病名は確かに重要で神経症などでは請求できません。しかし、医師は明確な診断名を言わないケースもあります。私が支援した相談者の方も自分の病名を聞いたことがなく年金請求のタイミングで初めて知ったという方もいました。また精神疾患の病名は時間の経過などで変わります。初診時は神経症でも現在はうつ病に変化しているケースもあるので、現時点での病名が神経症であったとしても特に気にする必要はありません。

3.障害者手帳を保有しているかどうか?

精神疾患の場合の手帳は精神保健福祉手帳になりますが、この手帳は初診から6か月経過すると申請が可能です。障害年金の申請には障害者手帳の存在は必須ではないですが、障害者手帳を保有していると少なくとも精神疾患が障害化していると考える事ができるからです。そして、一定の障害状態にあると医師も認めていることになるので、手帳が有れば年金請求は比較的スムーズなケースが多いです。しかし、障害年金は障害者手帳の保有は必須ではないので、当事務所でも手帳無しで障害年金の受給まで至ったケースは多いので、あまり気にする点はありません。

 

最後に

障害年金の請求ができるかどうかは素人目では分からないと思います。しかし、私も医師ではないでの「できる」「できない」の判断はできませんが、上記で説明した基準に沿い相談を受けています。私は保険料の納付要件で引っ掛からない限り、私から年金請求の依頼は断りません

就労していても一人暮らしで有ろうと、可能性が少しでもあるならチャレンジは試みます。過去にも厳しい状態で請求して受給できたケースもあります。諦めないで最後までやり通すことは何事にでも通じる事でしょうが、障害年金にも通じる話かと困難ケースに遭遇するとしみじみと感じます。