うつ病、独居状態で障害厚生年金を請求、2級認定されるのか?

先日、独居状態の方の障害厚生年金の請求を認定日請求で行いました。

請求人は独居状態で就労継続支援A型に通所しています。この様な状態で障害年金の認定がなされるのでしょうか?

 

 

障害年金とは?

 

障害年金は障害により日常生活が制限を受ける場合に支給される年金で、受給の可否は日常生活能力の有無で判断されます。その日常生活の有無は診断書とそれに付随する事実にて判断されています。障害年金で診断書が重要であるととは何となくわかると思いますが、それに付随する事実も重要になります。私が考えるそれに付随する事実とは①服薬の有無②就労③一人暮らしかどうかです。本事例では請求人はうつ病にて①向精神薬を服用していますが、現在は②就労継続支援A型で就労(訓練)しています。③生活状況は自宅で同居者はいない状態で生活しています。この様な状況で障害年金の受給が認められるのでしょうか?以降では各項目で解説していきます。

 

診断書の障害等級の目安について

障害年金は診断書が全てと言われている所以は診断書の日常生活能力の判定と日常生活能力の程度の関係で年金等級の大幅な目安が決まっているからです。

 

本事例での診断書上の日常生活能力の判定平均は3.14で、日常生活能力の程度は4でした。

これを障害等級の目安に当てはめると単独2級に該当します。

    2級に該当すれば2級で決定されるのかと言えば話はそうは簡単ではありません。この障害等級の目安はあくまでも目安で、この目安以外の結果に遭遇することは多々あります。私も目安は2級だけど不支給で有ったり、目安は1級だけど2級だったりするケースはよくあります。この目安とは別の結果になる原因は診断書以外の「事実」に所以します。

① 服薬の有無

 障害年金において服薬の有無は関係なさそうに思いますが、実務では重要で服薬の事実で年金の可否が決まるケースもあります。普通に考えれば服薬の必要性が無ければ服薬しないので、服薬をするということは少なくとも何かしらの病気にかかっていると推定は成り立ちます。

しかし、服薬は全ての精神疾患に当てはまる項目ではありません。例えば知的障害、発達障害、高次脳機能障害等は服薬を前提としていない精神疾患であると考えられます。知的障害や高次脳機能障害を改善する様な薬が無いのは事実なので、この様な疾患の場合は服薬していなくても特に影響はありません。発達障害に関しては集中力を高める薬などが有るのは事実なのでその様な薬を飲んでいない=程度の軽い発達障害とみなされる可能性はあります。しかし、以前私が発達障害の障害年金を代行請求した経験からは発達障害で服薬していないので年金不支給となったケースはありません。経験則的な観点からは発達障害は服薬は関係なく、高次脳機能障害や知的障害は事実として服薬の有無は年金に影響を与えないと考える事ができます。

しかし、うつ病などの精神疾患は服薬の有無がダイレクトに影響します。以前うつ病で代行請求し不支給となったケースがありましたが、その不支給理由が服薬していないとの事でした。このケースでは服薬が無いのは糖尿病の影響で、副作用が生じる可能性があるので向精神薬は使用できないという医師の意見書を審査請求の理由に付け加えて請求を行いました。この様に服薬の有無が年金受給に影響を与える場合がありますが、その前提には服薬=病気の存在 服薬量が多い=病状が重いという考えが有るように感じます。しかし、その様な単純な構造で片付けられないのが医療の世界だと思うのでその点は診断書等を総合的にみて判断してもらいたいと実務者からは思います。

 

② 就労

 障害年金は就労していると不支給であると明記されている訳ではありません。しかし、就労の事実は障害年金の受給に強い影響を与える場合があります。

国は就労できる=日常生活能力があると考える傾向があるからです。そうならないために、就労はしているが周囲のサポートにより就労継続ができている、決して日常生活能力が向上しから就労ができるようになった訳ではないと説明していく必要があります。

精神疾患は知的障害や発達障害と比較すると就労の影響を受けやすいと経験的には感じてます。請求人はうつ病なので就労の事実をどの様に国に説明していくかがカギになります。注目すべき点は、請求人は一般就労ではなく就労継続支援A型利用者で、労働時間も週20時間程度と短いです。また、フルで通所できている訳ではなく月の半分以上欠勤しています。この事実は就労能力が十分にないと説明できる十分な根拠になります。そのため、診断書には「契約通りの内容で就労できていない」、と記載して貰い、かつ別紙で診断書に記載しきれない内容をまとめて提出しました。地味ですが、きちんと事実を説明するのは重要です。

③ 一人暮らし

障害年金は日常生活の有無で受給の可否が決すると冒頭で説明しましたが、診断書上は単独での日常生活ができない内容になっていたとしても事実ベースで一人暮らしができているなら日常生活能力があるとみなされ年金が不支給になる場合があります。

私の経験上単身生活でも障害年金2級が認められているケースはあります。例えば知的障害者で本人以外に親族はいないケースで仕方なく一人暮らしをしているケース、同様のケースで一人暮らしだがヘルパー利用しているケース、一人暮らしの精神障害者でヘルパー利用していないが近所の家族の支援を受けて一人暮らしをしているケースなどではいずれも障害基礎年金2級が認められています。しかし、だからと言って必ず一人暮らしで2級が認められる訳ではないと思います。私の経験から一人暮らしだから障害年金が不支給になった経験はないのであくまでも推測ですが、一人暮らしに至った経緯がやむ負えない理由によるか、一人暮らしはしているが中身を伴った一人暮らしができているか等で判断されているのではないかと思います。私が代行したケースで客観的に見れば一人暮らしだが、電気は数年止まっているし、掃除は全くできておらずゴミだらけの状態は決して一人暮らしができている状態とは言えないと思います。また一人暮らしも自分から望んでしたわけではなく、家族の死別や生活保護受給のため等のそれなりの理由で一人暮らしに至ったケースでした。

この様な理由や現状は当然ながら診断書にしっかりと記載して貰わない限り国は知らない事実になります。もし、この様な事実の説明がない状態ではいくら診断書上では日常生活能力がない診断書となっていても説得力はありません。なので、診断書にこの様な事実をきちんと落とし込んでもらうのが障害年金受給のカギになると考えます。

最後に

この事例は申請したばかりなので結果は分かりませんが、私の経験的には2級かなと考える事例です。2級として認定されるように現在ヘルパー利用している事実、就労しているが上手くいっていない事実を別紙資料として提出もしました。実際別紙資料を提出することでどれぐらい審査に影響を与えるかどうかは不明ですが、代理人としては少しでも年金受給の可能性を引き上げる為にできる事をするというスタンスで臨んでいます。