安定就労状態の広汎性発達障害で障害年金受給可能?

   先日、障害者雇用にて月13万円ほど稼いでる安定収入者の障害基礎年金の請求を行いました。請求障害は広汎性発達障害です。障害年金は日常生活に制限が加わる場合の所得補償なので、安定就労しているので、日常生活に制限が加わらないと評価されると年金不支給の可能性もあります。そのため、この事例では安定就労の事実を厚生労働省にどの様に説明していくかが論点になります。

 

障害年金と就労との関係

 

就労していたら年金は受給できるの?と疑問に思う人も多いと思いますが、それは障害毎に結論が違います。例えば、身体障害(肢体不自由、眼、耳)等は就労していても年金に特に影響を与えません。一方で内疾患(腎臓、心臓、がん、血液関係等)は就労の事実がダイレクトに年金の可否に影響します。そのため、いくら症状が重くても軽作業やデスクワークができている事実があるなら年金不支給になる可能性が非常に高まります。

一方で精神障害はどうなるのでしょうか?答えはケースバイケースで、影響を受ける場合とそうでない場合があります。

 

精神系の障害年金と就労の関係性

 精神系の障害年金と就労の関係は障害認定基準に記載されています。以下は引用になります。

うつ病、統合失調症と就労の関係

知的障害と就労の関係

発達障害と就労の関係

 3つとも記載されている内容は同じ意味です。要は労働していることで、日常生活能力が向上したものと捉えずに、就労状況等を総合的に考慮した上で日常生活能力を考慮して判断すると記載されています。つまり、問答無用で就労=年金不支給ではないと明確に記載されています。

 

そして、平成289月に厚生労働省から出された「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」就労と年金との関係に一歩踏み込んだ内容が記載されています。

 

これは、精神障害、知的障害、発達障害と就労の関係を表した図になります。丸を囲んでいる部分に注目すると、精神障害のみ、「安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。」と記載があります。一方、知的障害、発達障害にはその様な一文がありません。ここからは私見ですが、知的障害、発達障害の場合の就労年数の長さは日常生活能力の向上として評価せずに作業内容や配慮事項等で評価する、一方で精神障害は1年以上継続就労している場合日常生活能力の向上として捉えると理解しています。

そのため、本事例は広汎性発達障害での請求なので勤続年数自体より、障害者雇用である事実、仕事の内容、仕事場での配慮事項等が重要であると考えます。通常これらの内容は診断書の就労欄に記載しますが、そこも記入欄が十分ではないので私はいつも別紙でそれら事項をまとめ提出しています。

 

発達障害の場合の就労のポイント

発達障害者が就労の際のポイントは以下の3点です。

① 仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。

業務が単純継続反復作業であるかは重要です。イメージは上司の指示で行動する、作業内容も単純作業の繰り返し(例えば、ねじとナットを延々と外したりする作業)等です。それの対極にあるのが、自分で判断し行動する、または部下を持ち命令などを下す場合はそれなりに労働能力があると判断される可能性があります。

② 執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する。

これは、こだわりが強く自分が理解した作業工程でないとパニックを起こす等が考えられます。逆に他には急な予定の変更に対応したり、複数の指示を円滑にこなす場合は労働能力があると考えられる可能性があります。

③ 仕事場での意思疎通の状況を考慮する。

これは、仕事上の意思疎通が円滑にできない場合が該当します。何をもって円滑と考えるかは難しいですが、口頭の指示では伝わりづらいので紙に書いて説明する等は該当すると思います。

これ以外にも、仕事場での配慮事項があればそれらは書面でまとめて提出しても問題ありません。一番問題なのは情報の少なさです。それを回避するためも仕事場での困り事はきちんとヒアリングしていく必要があります。

 

最後に

請求人は独居生活(ヘルパー利用中)で5年以上安定就労しています。社会保険にも加入して給料は13万円ほどです。診断書は障害等級2級レベルの内容なので、あとは就労の事実がどの様に評価されるかで年金の可否が決まる案件です。就労については会社での配慮事項、作業内容、仕事場での失敗等を丁寧にヒアリングして書類を作成しました。あとは、それがどの様に評価されるかになります。厳しい結果の可能性もありますが、とりあえずやることはやったので後は天命を待つのみです。

就労中の障害者の年金は非常に厳しい場合もありますが、その中でも少しでも可能性を見つけて受給までこぎ着けれるように日々精進しています。

障害年金でお困りの場合は是非ご相談ください。