5年以上社会保険加入で就労中でも発達障害で障害基礎年金を再開できた事例

 相談概要

大学卒業するもコミュニケーションの問題から就職することができず、病院で検査すると発達障害が判明する。障害基礎年金は発達障害判明後すぐに請求し2級を取得している。その後障害福祉サービスを利用し障害者雇用で就職するが、障害年金は就労しているという理由にて支給停止となる。それから数年経過して年金が無いと一人暮らしにチャレンジできない何とかならないかという相談が入り受任となる。

 請求する手続き

 この事例は発達障害で障害年金の請求を行い、現在に至るまで支給停止になっていることから、支給停止状態の障害年金を再開される手続き、つまり「支給停止事由消滅届」という手続きになります。無論「支給停止事由消滅届」だけを提出しても年金の再開はなされずに診断書も必要になります。ようは、広汎性発達障害の状態が悪くなったので再度年金を支給してくださいという趣旨の手続きになります。

因みに、広汎性発達障害と全く因果関係のない障害、例えば腕を切断した等の場合は、新たに肢体の診断書と初診証明、病歴就労状況申立書などを提出して新規裁定を狙っていきますが、この事例はあくまでも広汎性発達障害が悪くなったというものなので、支給停止事由消滅届と診断書のみの提出になります。

 

この相談事例でのポイント

この事例は以下の点をクリアすると障害基礎年金が再開される可能性があるので、それらについて尽力しました。

因みに、一つの論点としてなぜ、障害基礎年金が支給停止になったのか理由が分からないと対策が取れません。支給停止理由の予想は大体つきますが、やはり明確な理由を知った方がきちんとした対策を取ることが可能になります。

その為に、活用するのは保有個人情報開示請求手続きです。これにより、年金の更新の仮定でどのような審査が行われてかが明確になります。審査の過程が分かる書類は「障害状態認定調書」になります。これを開示して欲しいと「保有個人情報開示請求書」に記載します。

この事例では「障害状態認定調書」に「就労については13カ月継続可能な状態である」と記載がされていました。直接的に就労=支給停止とは読めませんが、就労が審査に影響を与えていると考える事ができる記載になります。

 

① 現時点で5年以上社会保険に加入して就労している。

精神系の障害年金において就労は一つのテーマになります。

以下は「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」9頁を参照しての説明になります。

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では精神系の障害年金を知的障害・発達障害・精神障害の3つに分けています。精神障害はうつ病や統合失調症等が分類されます。発達障害はアスペルガーや自閉症等が含まれます。本事例は広汎性発達障害なので発達障害に分類されます。見て頂ければ分かりますが、精神障害には「安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。」という一文が有りますが、発達障害と知的障害にはこの一文が有りません。これをどの様に解釈するかはそれぞれの主観による部分になりますが、私は問題なく安定して就労している精神障害者は障害年金の対象外であると理解します。その安定の目安が1年程度で1年を超えると就労状況によっては年金の対象外であると理解しています。発達障害や知的障害にはこの1文がない事から就労年数は関係ないようには思いますが、「障害状態認定調書」にはあえて「就労については13カ月継続可能な状態である」と記載があることから何かしらの影響はあるのだろうと考えました。

現状は5年以上就労継続している点を考えると、「なぜ5年も就労できるのか?」という視点で就労状況のヒアリングを行い、診断書にその理由を記入してもらい、別資料という形で就労状況をまとめた資料を提出しました。この「なぜ5年も就労できるのか?」

というのはポイントで、この疑問の答えを丁寧にヒアリングしていくと発達障害の就労においての参考事項である「①仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。②執着が強く、臨機応変な対応が困難 である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する。③仕事場での意思疎通の状況を考慮する。」のヒアリングができます。

結果、勤続5年以上就労できている理由も説明できるし、かつ、配慮事項や職場での様子も説明でき一石二鳥になります。

② 診断書の日常生活のチェックが「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」施行前の基準であった。

この事例では初回の裁定は8年前の平成25年なので「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の発表前の話です。この「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の施行前後で障害年金2級の認定基準が変わり、以前は2級が受給できていたケースも受給できなくなるケースが発生しました。本事例がそのケースで診断書裏面の「日常生活能力の判定」平均が2.85 日常生活能力の程度が3の事例で「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」施行後は2級または3級に該当するレベルの診断書でした。「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」施行前はこの診断書でも大丈夫でしたが、施行後は2級又は3級に該当するという事で支給停止となりました。

そこで、医師に「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を確認してもらった上で課題であった金銭管理が「できる」となっていたので事実に即して「できない」方にチェックしてもらいました。それにより「日常生活能力の判定」平均は3.0となり日常生活の程度が3なので障害等級目安に当てはめると無事2級になりました。

 

 

結果 無事2級の支給が再開されました。

 

社会保険加入で勤続5年以上経過している広汎性発達障害でも障害基礎年金2級の併給が改めて可能になりました。この決定は本人にとっても非常に大きく停滞していた一人暮らしの可能性が出てきたことを意味します。

本人の給料は12-3万円程度しかなく状態で一人暮らしや将来の希望など持てるはずが有りません。所得が少ない人には生活保護以外に何かしらの補助をしないと夢や希望ももていな現実が有ります。国もそこを理解して支援策を検討して欲しいとは実に願います。

 

最後は愚痴になりましたが、当事務所は長期就労している発達障害での障害年金取得実績もあります。スピーディに対応しますので、お困りの方は是非ご相談ください。