仕事と年金の両立は可能? 就労者の精神系障害年金の進め方

 3障害(身体・内疾患・精神疾患)と就労との関係

年金と仕事の両立は可能ですかとよく聞きかれます。その答えはケースバイケースで回答しています。障害年金上、障害は身体障害・内疾患・精神障害の3つに大別できます。障害毎に就労との関係性が変わってきます。例えば身体障害は就労とは関係ありません。身体障害者が就労していても年金が支給停止になることはありません。ここでの身体障害は上肢・下肢・体幹・聴覚・視覚・言語障害が該当します。

内疾患の場合は障害の程度と仕事の状況が連動する様な診断書になっています。例えば肉体労働に従事できる場合は日常生活に制限が加わるとは言えない診断書の作りになっていたり、事務作業に従事できる場合は障害程度が2番目に軽い程度に位置付けられたりします。内疾患は心臓・がん・血液・難病等が該当します。

精神疾患は以下でも詳細に説明しますが、認定基準によると就労は「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、」となっていることから就労は直ちに年金受給に影響を与えないことになっています。因みに精神疾患はうつ病、統合失調症、気分障害、双極性障害。知的障害、発達障害、高次脳機能障害、てんかん、若年性痴呆等が該当します。

  

精神疾患と就労との関係性 就労状況についてのヒアリングの必要性について

先程、精神疾患に罹患している就労している人が障害年金を請求する場合、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、」となっていることから就労していても年金には影響がないかといえばそうではありません。

精神系の障害年金の場合、就労状況について状況確認(ヒアリング)は必須です。

なぜ、状況確認が必要なのでしょうか?その答えは障害認定基準にあります。

 

知的障害の認定基準の一文抜粋

知的障害の方は「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。」と一定の配慮が前提にあり就労が成立していると厚労省側も認めています。その理解に立ち、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、①仕事の種類、内容、就労状況、②仕事場で受けている援助の内容、③他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」と定められています。

裏を返すと、就労している場合少なくともこれら①~③に関しては十分な確認ができないと日常生活能力が向上していると捉えられる可能性も示唆しています。

因みにこれら①~③は診断書の就労欄に対応しています。

 

①~③についての解説

  ①は職種、作業内容、雇用形態等が該当します。特に障害者雇用であるかどうかは重要なポイントになります。障害者雇用の場合は障害者への配慮が行われるのでその配慮事項がポイントになります。一般企業で就労している場合も職場内で何らかの配慮がなされている場合はそれを積極的に主張していかないと年金の審査上はマイナスになります。

② これは受けている具体的な配慮事項を記載します。例えば、対人折衝が求められる作業は除かれているや、他人より休憩時間が長い、時差出勤が認められている等考えれば色々な事が考えられます。考えるポイントは他者との比較です。同じような仕事をしている人と相談者を比較してもらい違いを考えてもらいます。違いがあればそれが配慮といえる可能性があります。障害当事者に自分を客観化して評価するのは難しいと思いますが、そこは支援者がフォローして聞き出してください。

③ コミュニケーションの具合、相手との意思疎通状況です。精神障害者は多かれ少なかれその点に課題があります。例えば友達がいない、会社で孤立している等です。これだけなら障害の影響によりコミュニケーションが難しいとは言えないですが、「なぜ、友達がいないのか?」「なぜ、会社で孤立しているのか?」を考えることで原因が分かります。その原因が障害との関連性があるならばコミュニケーションに課題があると言えないことはないと思います。例えば、友達がいない理由が、会話が一方通行気味で会話のキャッチボールができないなら理由になる可能性は高いと思います。

 

 ヒアリングした内容はどこに記載して誰に伝えるのか?

ヒアリング、ヒアリングと書いていますが、ヒアリングした内容はまずに診断書の就労欄に記載して貰います。診断書の就労欄に書ききれない場合は診断書の備考欄に記載して貰い、それでも記載しきれない場合は別紙に記載します。その別紙は病歴就労状況申立書に追加してもよいですし、まったく別の資料として提出してもよいと思います。障害年金は診断書が全てと言う意見もありますが、診断書以外の資料も審査では考慮されるので意味がない事はありません。病歴就労状況申立書の中身もしっかり確認がなされ、診断書との整合性の確認は行われています。そして、就労状況が記載された診断書や別紙資料は年金申請時に日本年金機構に提出し、その後認定医(障害年金の審査をする医師)の手に渡り審査が行われます。資料は医師が確認するので、その医師を説得できる様な文章でないと意味が有りません。感情に訴える文章では医師の説得はできないでしょう。客観的な事実と根拠に基づいて資料は作成していかないといけません。

 

 ヒアリングの方法(情報の取捨選択)

ヒアリングの必要性について説明しましたが、別に第三者が聞き取りをしないといけない訳ではありません。請求者本人が自分の就労状況を医師に客観的に説明することができるなら特に問題ありません。しかし、本人が医師に診断書の作成を依頼する場合や本人以外の第三者が本人から情報をヒアリングしそれを医師に提供し診断書依頼する場合でも提供する情報のポイントは変わりません。以下では提供に値する情報かどのような物なのか説明していきます。

ヒアリングの仕方や情報収取の方法は人それぞれですが、数ある情報の中で取捨選択を行わないとけません。その取捨選択の方法の基準になるのが「その結果の原因が障害にあるかどうか」です。個人の趣味嗜好・性格を障害の結果としてこじつけて日常生活の評価としてもらおうとする人もいますが、それは認められません。障害年金は「障害により日常生活に制限が加わる」場合の所得補償制度なので障害以外の理由で日常生活に制限が加わっていてもその制限は障害年金の対象にはなりません。それを認めると身体障害等の均衡が崩れます。ただし、知的障害の場合は個人の趣味嗜好、性格が先にありそれが障害となっているか、それとも知能機能の低さが原因で障害となっているのか判断が難しいでしょうが・・・。

 

終わりに

長くなるので、続きは明日説明します。