労働保険の落とし穴 雇用保険事業所非該当承認忘れてませんか?
労働保険の成立単位について
労働保険は事業所単位で成立します。
保険関係が成立する「事業」とは、工場、事務所、商店、建設工事等一つの経営体を指します。⇒一定の場所で一定の組織の下に有機的にそう関連して行われる一体的な経営活動を指します。
会社という一つの主体で保険関係が成立するのではなく、あくまでも支店や工場単位で保険関係が成立します。
一つの法人が2か所の特別養護老人ホームを運営している場合、その2か所で保険関係が成立することになります。
「継続事業の一括」
事業所の数だけ労働保険が有れば、事業所の数だけ労働保険の年度更新を行わないといけなくなり、事務手続きが煩雑になるケースが有ります。そのため、複数ある労働保険を1つにまとめる事ができる手続きが継続事業の一括です。一つにまとめることで毎年の労働保険料の集計・申告・納付を一か所でまとめて行うことが可能になります。
継続事業の一括の要件
(1) 指定事業とその指定事業に係る被一括事業の事業主が同一であること
(法人の場合は、同一法人の支店、営業所等に限る)
(2) それぞれの事業が継続事業で保険関係が成立していること
(3) それぞれの事業が、「労災保険率表」による「事業の種類」が同じであること
(4) それぞれの事業が、保険関係区分が同じ出ること
(労災保険と雇用保険の両保険が一元適用なのか、別々の適用なのかの区分のこと)
(5) 指定事業で被一括事業の労働者数・賃金の把握ができる。
(6) 労働保険事務を円滑に遂行する事務能力があること
(7) それぞれの事業で労働保険の適正な申告・納付が行われること
注意して頂きたいのは継続事業の一括ははあくまでも労働保険の事務手続きを1か所でまとめて行う手続きです。継続事業の一括を行っても、もし労災が生じた場合はその事業所を管轄する労働基準監督署に労災手続きを行わないといけません。一括している事業所で労災申請までできる訳ではありません。
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険も事業所単位で手続きが行えるように、各事業所で「雇用保険適用事業所設置届」の提出が必要になります。事業所ごとに雇用保険番号を取得して、その事業所ごとで雇用保険資格取得届等手続きを行っていかないといけません。
具体的にはA事業所で採用された労働者はA事業所で雇用保険資格取得手続きを行い、B事業所で採用された労働者はB事業所で雇用保険資格取得手続きを行うという意味です。
そのため、本社があり、別に支店を設置するとその支店で雇用保険適用事業所設置届を提出しないといけません。もし、その支店の人事管理能力等がない場合は雇用保険事業所非該当承認申請書を提出し、その支店は雇用保険の適用事業所ではないと明らかにしないといけません。
雇用保険事業所非該当承認申請書を提出してもすぐに非該当承認の結果が出る訳はありません。結果が出るまで約2週間から1か月程度かかるみたいです。特に県をまたぐ場合は他県の労働局との協議になるので時間がかかります。
そのため、もし、助成金の申請などで雇用保険適用非該当施設ので助成金の申請をする場合、例えば教育訓練関係の助成金を申請する場合、非該当承認申請をしたうえで申請しないと教育訓練等の計画届の提出が行えないので注意が必要です。
まとめ
雇用保険は事業所単位で加入(設置届提出)⇒どんなに規模が小さくてもそこで設置届を提出する必要がある。
もし、事業所の規模が小さく事務処理できない場合⇒「雇用保険事業所非該当承認申請書」提出
支店・工場等新たに事業所を設置した場合⇒雇用保険適用事業所設置届OR雇用保険事業所非該当承認申請書 どちらか必要
この手続きは結構見過ごされがちです。特に厚生労働省関係の助成金は事業所単位で申請する者も多いので、いざ事業所単位で申請しようとしてもその事業所で雇用保険設置届を提出していない、或いは雇用保険事業所非該当承認申請書を提出していないので、まずそこから進めていかないといけない場合もあります。
継続事業の一括と雇用保険事業所非該当承認申請書の違い
継続事業の一括はあくまでも一か所で労働保険の手続きを集中して行う手続き
雇用保険事業所非該当承認申請書は規模の小さい事業所での雇用保険事務処理能力を奪う手続きです。本社や大きな事業所で規模の小さい事業所の雇保手続きを行えるようにする手続きです。両者は明確に役割が違う手続きなので混同させない様に注意が必要です。
継続事業の一括は認められないが、雇用保険事業所非該当承認は認められるケースも考えられます。
工場と本社があり、別々の場所にあるケースです。
工場と本社は別事業所になるので両方で労働保険が成立します。しかし、継続事業の一括はできません。理由は事業の種類が異なるからです。工場と本社は別々に労働保険の手続きを行わないといけません。しかし、工場に人事管理能力等が無い場合、雇用保険事業所非該当承認申請書を提出することで、本社一括で工場での雇用保険の手続きを行うことが可能になります。