就労状況の聞き方(支援者向け)の続きです。障害認定基準に記載されている以外の就労時のヒアリングポイントを下記にまとめます。
(障害認定基準 第8節 精神の障害より抜粋)
就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。
したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、①仕事の種類、内容、就労状況、②仕事場で受けている援助の内容、③他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
ヒアリングポイント
① 就職への経緯
② 雇用形態(正社員・非正規社員)、雇用契約期間(有期契約か無期契約か)勤務時間、1か月の勤務日数、給料額、勤続年数 社会保険加入の有無
③ 仕事の内容(どのような仕事か仕事の中身、単純反復作業などあるか?)
④ 職場での支援体制、援助や配慮事項、会社の障害者雇用への取り組み姿勢など
⑤ 家族や支援者との連携状況
(定期的に近況報告に際して打ち合わせ等(ケース会議)があるか)
⑥ 就労に際して、支援機関の支援があったか?
ジョブコーチ利用、定着支援事業を利用、就労移行支援を利用など
⑦ 通勤に際して(通勤方法、所要時間、ルート、遅延などが生じた場合に対応できるか?)
⑧ 休憩時間の様子(休憩時間は疲れて寝ている、誰とも話さずに孤立している等)
休憩場所、休憩時間の配慮があるか?
⑨ 勤怠状況(遅刻、早退、欠勤の有無)
①は採用形態についてです。縁故採用なのか実習を経たのか等確認します。通常精神系の障害者が就職する場合、数日から数カ月の実習を経て決まります。
②は雇用形態について確認します。雇用契約期間はポイントで、無期雇用なら雇用の継続性が高く、一方有期契約なら雇用の継続性が低いと考えることが可能です。それに関連して正社員と非正規社員(アルバイト・パート)の違いも重要になります。
社保加入は社保加入できるぐらい長時間就労している証明になるので注意が必要です。1.2級は生活能力の有無で判断されるので、社保に加入できるぐらい長時間就労できる=労働能力有り⇒日常生活能力も有ると判断される可能性があります。社保加入の際は就労状況についてヒアリングを十分に行う必要があります。
給料額もポイントで社保と同じ理由で賃金が高い=労働能力があると考えられがちなので、賃金額だけでなく賃金の内訳なども確認が必要です。特に社会保険の報酬には通勤手当や見込みの残業代も含まれて計算されるので、それらの確認が必要です、例えば総支給20万としても、基本給15万円 通勤費 2万円 固定残業代3万円なら実際労働の対価として評価されるのは15万円だが、社会保険の報酬としては20万すべてがカウントされるので現実の評価とはズレが生じます。
③ 仕事の内容は仕事の難易度で簡単そうな仕事、難しそうな仕事の関係性で労働能力の有無が判断できます。例えば判断を伴うような仕事、その人にしかできない仕事は必然的に難易度が高いと評価される傾向があり、その逆で誰もができる単純反復作業は低いと評価される傾向があると思います。何が単純作業か本人は分からないので丁寧にヒアリングしていく必要があります。
④ 職場での支援体制も重要です。そもそも何かしら職場で就労継続のための配慮を受けていない場合は「障害が有っての労働能力がある」とみなされる可能性が高いので年金は不支給となります。ただ、その配慮事項も有形・無形は問わず、「例えば周囲が遠慮して難しい仕事を頼まない」というのも配慮として考えられます。
特例子会社で就労している場合はそれ自体が配慮事項になるので、職場の様子等しっかりヒアリングしてください。
配慮と畏まり考えると難しいかもしれないですが、言わば「障害者が就労し易いような環境調整」です。
例えば知的障害・発達障害者向けに1日の予定がホワイトボードに書かれている。上司が指示をする際は紙に書いて渡す等も配慮です。しっかりした会社はうちは「配慮」してますとアピールするのではなくごく自然に行われています。そのためそこで就労している人は気づいていないかもしれません。支援者は配慮事項は何かを理解したうえでヒアリングしないと有益な情報を聞き漏らす場合があります。