障害年金を考える際に初診日は重要です。今回は初診日に焦点を当てお話しします。
1-1 障害年金を考える上での初診日の考え方
初診日、言葉の意味を考えると、初めて病院に行った日と読むことができると思います。
条文上の初診日も国語的な初診日と意味が近く、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日と規定されています。(国民年金法30条)
条文上で重要で、国語的な意味と異なる部分は、かつ、以下の下線部分でその疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)の部分です。
国民年金・厚生年金保険の障害認定基準には「「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである。」と規定されています。
つまり、初診日は、病気またはケガとそれが原因となって発した病気について初めて医師の診療を受けた日ですが、これら障害をもたらした病気の前に病気やケガがある場合、最初の受診日が初診日となるということです。
具体的に説明します。保険者が障害認定の際に活用する障害給付の手引きによると、
① 肝炎と肝硬変
② 手術などによる輸血による肝炎
③ 糖尿病と糖尿病性網膜剥離または糖尿病性腎症、糖尿病性壊疸
等が最初の受診日が初診日になります。
①の場合、肝硬変で病院に通院し始めた日が初診日となるのではなく、その前の肝炎で病院を受診し始めた日が初診日になります。
よく勘違いされるケースが多いのは、明確な病名が確定した日が初診日となるのではなく、一連の病気に関して初めて通院した日が初診日となります。例えば、上記①のケースならば肝炎と病名が決まった日ではなく、肝炎の疑い等全くなく体の不調を訴えて病院に通院し始めた日が初診日になる可能性もあるということです。左記を可能性と表現したのは、実際いつが初診日になるかは診断書や病歴就労状況申立書、受診状況等証明書などで総合的に判断されるからです。
障害年金を難しくしているのはこの初診日の考え方です。よく何回も病院と年金事務所を往復することになるのはココの判断が中々つかないからです。
1-2 精神障害の場合の初診日の考え方(事例より)
この初診の考え方を精神障害に落とし込みます。
① 知的障害の場合
知的障害の場合はそもそも通達にて出生日が初診日と扱われるで、あまり問題は生じません。ただし、20歳以降に知的障害が発覚した場合は幼少期等の成育歴・学習状況等がポイントになります。
② 事故や脳血管疾患による高次脳機能障害
事故による高次脳機能障害は比較的分かり易く、事故にあった日が高次脳機能障害の初診日になる可能性が高いと思います。
ただ、普通の脳血管疾患の場合は、脳血管疾患が発症した日か脳血管疾患に関係する病気で通院した日が初診日なるのか判断が分かれます。少なくとも脳血管疾患と病名がついた日は高次脳機能障害の初診日なる可能性は高いです。
③ 体調不良で内科受診からのうつ病(実際の請求事例)
体調不良で内科を受診したが、診察の上精神科を勧めたことがカルテ上で確認できるならば、精神科に通院し始めた日が初診日ではなく内科に受診した日が初診日になります。
④ 腎不全からのアルコール依存症とうつ病 (実際の請求事例)
仕事のストレスを紛らわすためにアルコール依存状態に陥り、その後腎不全を患い、アルコール性精神病の症状、アルコール依存、うつ病と繋がった事例です。
請求障害名はアルコール依存・うつ病で請求し、初診日は急性肝炎で緊急搬送された日で請求しましたが、初診日はこの日で認定されました。
もしかしたら、仕事のストレスがあった時点からうつ症状があったのかも分からないですが、前発傷病が急性肝炎、腎不全・アルコール精神病の症状を挟んで後発傷病アルコール依存・うつ病の一連の流れで初診日は確定されました。
1-3 結論(まとめ)
障害年金上の初診日は、病気またはケガとそれが原因となって発した病気について初めて医師の診療を受けた日ですが、これら障害をもたらした病気の前に病気やケガがある場合、最初の受診日が初診日となります。つまり、前の傷病が無ければ、後の傷病が発生しなかっただろう関係が、あるか、ないかで初診日の時期が変わってきます。
この初診日の考え方が障害年金を面倒にしている点です。ここの確認の為に年金事務所と病院を何往復もした話はよく聞きます。もし、この点でお悩みなら「前発障害が無ければ、後発障害がない」のフレームに当てはめどこが初診日か考えてみてください。
上記は一例で、最終的には診断書等の中身で総合判断されますので、お気を付けください。