服薬なしでもADHDASD20歳前の障害基礎年金2級決定

 

20224月にこの1月に申請していたADHDASDの障害年金の結果が出て無事20歳前の障害基礎年金2級決定が決定しました。

審査期間も3カ月の標準処理期間内の審査でスムーズでした。

 

この事例の論点はADHDASDいわゆる発達障害(自閉症スペクトラム)で障害年金が受給できるのかです。結論言えば発達障害でも年金は受給できますが、未だにその事実を知らない人が多いです。特に請求人の親族は受給できるのか半信半疑の状況でした。なぜ、発達障害が年金の対象に含まれるのか?一般の人は理解できていません。以下では健常者と発達障害の違いを医学や福祉の視点では語れませんが、障害年金上の論点から整理していきたいと思います。

 

請求人の状況(年金診断書より抜粋)

  臨床検査(心理学的検査)の状況

 WAIS-3ではIQ78 知識の大きな偏り、視聴覚双方の不注意等診断されていました。軽度知的障害がIQ70までを指すと言われているので、請求人は軽度知的障害ではないと思われます。ただ、請求人が知的障害かどうかはこの年金申請では論点には挙がっていません。

 

家庭での様子

自分の意にそぐわない事があると、①月単位で無言になり家族との会話を頑なに拒否する②家族にも手を挙げる等怒ると手が付けられなくなる。行動がみられるとの事です。発達障害の2次障害の兆候からうつ病、希死念慮が見られるとの事です。

2 日常生活能力の判定

1) 適切な食事          3

2) 身辺の清潔保持        3

3) 金銭管理と買い物       2

4) 通院と服薬(要)       4

5) 他人との意思伝達及び対人関係 4

6) 身辺の安全保持及び危機対応  4

(7) 社会性            3点

判定平均    3.28

3 日常生活能力の程度

精神障害    4

 

エ 現症時の就労状況記入  無し

キ 福祉サービスの利用状況 無し

精神保健福祉手帳 2

障害等級「目安」への当てはめ

以下は、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(以下「ガイドライン」と略)から抜粋した障害等級の目安です。

判定平均は3.28で程度が4なので、その結果を障害等級の目安に当てはめると2級です。この障害等級目安は目安ですが、拘束力は非常に強いです。経験的に目安が1級で結果は2級になることは有っても、目安が2級で1級になったことはありません。

 

因みに目安が「2級又は3級」に該当する診断書で障害基礎年金の請求をすると認められない可能性が非常に高いです。理由は、障害基礎年金は2級までしかなく、3級と認定されると年金の対象外になるからです。

本事例で目安は2級ですが、あくまでも目安なので必ず2級とは認定されませんが、認定される可能性は高いです。あとは、症状や就労状況等で総合的に等級が決まります。

 

 

 

発達障害とは何??

 

発達障害は時代が進むにつれて表現が変化しています。私も医学の専門は無いので正確なことは分かりませんが、広汎性発達障害(ASD)や自閉症スペクトラム症、ADHD(注意欠陥・衝動性)、LD、アスペルガー等と呼ばれています。それぞれの呼称には意味があり、症状は異なります。

発達障害の定義としては、脳が定型的(健常者の様に)に発達しておらず、能力の偏りが生まれ、それにより日常生活が制限される程度の状態を発達障害と私は認識しています。

例えば、私の周りにもそそっかしい人、忘れ物が多い人がいます。この様な症状を衝動的な人、注意力散漫な人と説明できると思います。しかし、常に忘れ物をするのではなく偶々忘れた、或いは物忘れが多いので、毎日気をつけて忘れ物を無くそうとし、現にそれで忘れ物が減っているならそれは日常生活には支障はきたしていません。

なので、その様な人はADHD(注意欠陥)とは呼ばないと思います。では、どの様な状態ならADHDと呼ぶのでしょうか?これは私の私見ですが、物忘れにより日常生活に強い支障をきたす場合は障害と呼べる可能性があるのかと思います。無論、本人の自覚、努力による改善、服薬などをしてもADHD(物忘れ)の症状が改善しない場合ですが。

 

だから、あなたの周りでも衝動的に怒る人、人の話を聞かない人、もしかしたらADHDの予備軍の可能性はあります。職場では今の地位等でそのADHDの症状が明確に出ていないだけで環境も変わればその症状が強く出る可能性はあります。

 

発達障害の事を少しでも知ると何が健常者なのか分からなくなります。同じ能力を持った人間は存在せず、人それぞれ能力のばらつきがあります。そのバラツキの振れ幅が大きく、それが生きづらさに繋がるのが発達障害なのかと思います。逆に本人が生きづらさを感じないならそれは発達障害ではないとも言えます。

だから、流動的な概念になると私は考えています。

 

知的障害との違い

知的障害と発達障害何が違うのかとよく聞かれます。素人感覚ではどちらも脳が定型発達できておらず、知的障害は知能面の遅れ、発達障害はそれ以外の側面の遅れというイメージで捉えています。

知的障害(精神遅滞)の定義は、知的機能と適応行動の両方に制限を持つ障害で発達期に生じると説明されています。原因は不明な場合は多いですが、IQ値と適応機能を総合的に評価して、軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。

知的障害と発達障害が重複している障害者の方は多いですね。一方で知的障害がなく発達障害のみの方も存在します。障害年金的には知的障害がある場合は20歳前の障害基礎年金一択になり、発達障害のみの場合は障害厚生年金の可能性もあります。この違いは知的障害の初診日は出生日ですが、発達障害のみの場合は初診日に加入している保険から障害年金が支給されることになるからです、発達障害は先天的な疾患であるので初診日は出生日と勘違いされる方も多いですが、発達障害のみの場合の初診日は、発達障害で初めて通院した日になります。通常の障害年金と同じです。

 

 

 

発達障害は甘えなのか?

 

発達障害を全く知らない人から見れば「甘え」にうつるかもしれません。特に会社などでは上司からすると、甘えている、できない理由をつけただけ、努力が足りないと叱責されるかもしれません。(ただ、今の時代これはパワハラに該当する可能性はありますが)

中には甘えている人もいるかもしれませんが、多くの人は自分の特性に付き合いながら日常生活を送っています。努力した結果のミス、失敗、コミュニケーションが取れない、空気が読めない、多くの方は自分の弱点を理解して行動しています。でも、できない時がある。そして、失敗体験を積み重ねて、最悪はうつ病になるケースもあります。

私見としては、まず①自分の苦手を自覚する②その苦手を改善しようと努力する③それでも無理なら周囲に相談するという流れだと思います。①の自覚がないなら周囲の意見や評価を受け入れて冷静に自分を分析して欲しいのかなと思います。自分の苦手を理解することは、ショックでもあり辛いことだと思いますが、そこを素直に受け止める事で対処法ができます。

これからの社会では、発達障害は甘え、努力不足等一言で片づけるのではなく、言われた側も一層の努力を図り、言う側も本人の苦しみを理解した上で発言して欲しいなと思います。

 

 

発達障害でも障害年金は下ります。

冒頭説明しましたが発達障害でも障害年金は下ります。一昔前は発達障害のみという項目がなく、発達障害は知的障害と併発しているケースでないと受給できない時代がありました。でも、今は発達障害のみでも年金が下りるように整備されています。特に知的障害を伴わない発達障害でも極端にコミュニケーションが取れず、周囲と協調できない、またこだわりが強く食事や清潔保持にも非常に時間がかかるような人もいます。その様な人も苦しみながらの結果、日常生活がおくれない為、その部分は障害として評価すべきだと思います。

『障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領』9ページの上段に、 「できる」とは、日常生活および社会生活を行う上で、他者による特別の援助(助言や指導)を要さない程度のものを言います。また、「行わない」とは、介護者に過度に依存して自分でできるのに行わない場合や、性格や好き嫌いなどで行わないことは含みません。」とあります。これも、私が述べたことと一緒で性格や好き好みで「できない」ことは障害として評価しないと書かれています。障害は性格や好き嫌いで発生しない、当然の話です。しかし、発達障害の特性上、本人の性格、好き嫌い、怠けと勘違いされやすいからこの様な注意書きが記載されていると思います。でも、発達障害は性格では片づけられないんです。本人もその特性と一生付き合って、社会に適合するように生活しようと努力しています。できないことを性格、好き嫌い、怠けで捉えられるのは悲しい世界です。

 

 

まとめ

本事例では初診日が20歳前にあったので20歳前の障害基礎年金で年金が下りました。障害名は自閉症スぺトラムで年金上は発達障害にカテゴライズされる障害です。認定されたのは、診断書裏面の日常生活能力の判定と日常生活の程度が障害等級目安の2級に当てはまり、現状は家族と同居して無職だからです。また、幼少期から発達障害の症状が見られ、それが日常生活を制限していたとみなされたのも要因だと思います。以上の理由できちんと要件に合えば発達障害でも年金は下ります。

もし、生きづらさを感じている人がいるなら一度病院を受診してみたら如何でしょうか?障害年金は初診から16カ月経過しすると請求ができます。生きづらさを理由に通院をして医師の治療の下、症状の改善が見られない場合は障害年金の対象になる可能性はあります。