分かりづらくないですか?上肢の障害 ポイント徹底解説 その③

前回は1級の機能障害について説明しました。本日は2級の機能障害についてお話しします。

上肢の2級認定基準

機能障害に該当するのが下記になります。

「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」について

2級は基本的には一上肢が対象になりますが、指に関しては両上肢の指になります。

上肢に関しては両腕で1級、片腕だけなら2級とざっくりとイメージしておけば理解はスムーズです。

前回と同様に「機能に著しい障害を有するもの」すなわち「用を全く廃したもの」は「全廃」と略します。

「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「全廃」(一上肢の用を全く廃したもの)とは、一上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

() 不良肢位で強直しているもの

() 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

() 筋力が著減又は消失しているもの

つまり、一上肢の3大関節(肩・肘・手関節)の内2関節以上が上記(ア)~()の状態に該当すれば2級になります。1級は両上肢でしたが2級は一上肢だけで大丈夫です。

2級と1級の違いは細かい点ですが()に表れています。1級の認定要領では、「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているものとなり、「肢体の障害関係の測定方法」となっています。しかし、2級の認定要領では、関節の他動可動域が、健側の他動可動域」2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの」となっています。健側は端的に言うと健康な方という意味です。考えてみれば自然な話で両上肢が全廃なら比べる肢がないので「肢体の障害関係の測定方法」を参考にする。一上肢が全廃という事は健康側の肢があるのでそれと比較します。自然と言えば自然な考えです。

全廃かどうかのチェック方法

上肢が全廃かどうかは肢体の診断書の下記の部分で判断します。

これは1級の場合と同じ考えでチェックしていきます。

全廃かどうかは以下の手順でチェックしていきます。

① 筋力から見ていきます。筋力が著減か喪失にチェックが入っていればその関節は全廃となります。

② 筋力が半減に〇が入り、かつ、関節可動域が健側の1/2以下に減少していればその関節は全廃となります。

③ 上肢の3大関節(肩・肘・手)のうち、2関節が全廃であればその上肢は全廃になります。

④ 1上肢が全廃なら2級です。

 

「一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの 」について

今まで説明してきたのは腕の機能障害でした。ここからは指の機能障害についてお話しします。腕の機能障害なら筋力とか可動域とか測定できそうですが、指の場合に筋力とか言ってもよく分かりません。しいて言うなら動かない、曲がらないとかしか判断が付きません。認定要領もその点は理解しているので、「上肢の指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「上肢の指の用を全く廃したもの」(「全廃」)とは、指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、 関節の不良肢位強直、瘢痕による指の埋没又は不良肢位拘縮等により、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるものと説明がなされています。

診断書でも屈曲(折れ曲げる)と伸展(曲がった状態から伸ばす)の2点で審査がなされます。

「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの(「全廃」)」について

ここも欠損障害と同じで一上肢ではなく両上肢の指の一部が全廃なら2級になります。両上肢のすべての指が全廃なら1級なので、その対比と考えるとイメージ湧きやすいと思います。ここでは左右の親指と人差し指か中指が全廃である必要があります。親指が使えないと日常生活が非常に不便になります。何せ物をスムーズにつまめなくなります。一度親指無しで物を掴んでみてください。物をきちんとつかめないので。

認定要領には「両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害をいう。」と説明されています。読むと納得の内容ですで、簡単でも具体的には書かれています。例えば親指と中指が全く動かない状態は全廃に当たります。

 

「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」について

精神障害や内疾患ではお馴染みのフレーズですが肢体障害にも出現します。

一目見てもよく分からないこの表現、不親切です。認定要領には「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両上肢 の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が 半減しているもの)をいう。」と記載されています。

この表現がどこかで見た記憶は有りませんか?そう、「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」(「全廃」)の時にも出てきたフレーズです。では、全廃とどこが異なるのでしょうか?

下記が「全廃」と「機能に相当程度の障害を残すもの」との比較です。

違いは全廃が2関節ですが、機能に相当程度の障害を残すものは1関節でよい所です。

もう少し整理したのが下記の表です。

一上肢が全廃なら2級、全廃の条件は2関節以上で、両上肢が機能に相当程度の障害を残す場合は2級、その条件は両上肢の1関節以上と覚えておいてください。

 

終わりに

次回は3級の機能障害について説明します。