社会保険入就労状態、独居で広汎性発達障害のみで障害基礎年金2

 20218月に申請した広汎性発達障害での障害基礎年金が無事2級として認定されました。

このケースは難しいと言われている広汎性発達障害のみで、かつ請求者は社会保険加入程度の就労と一人暮らしの状態で申請が通りました。

難しいと言われている広汎性発達障害でもポイントを押さえれば年金受給は可能です。ここでは、私が請求時に気にしたポイントについて解説していきます。

  事例解説

 この案件は相談を受けたのが202010月頃で約1年前です。初回相談から申請、受給までに約1年かかりました。なぜ、こんなに時間がかかったかと言うと万全を期する為に準備に時間をかけました。

初回相談の時点では生活保護受給中でしたが、障害者雇用にて就労していました。フルタイム就労で社会保険に加入して手取りで毎月約12万円の収入がありました。生活状況は家族が県外にいたので一人暮らしの状況で、話を聞く限り掃除や食事等はボロボロの状態でした。

診断名は広汎性発達障害のみでうつ病等は併存していませんでした。障害者手帳は精神保健福祉手帳3級を取得していたので、年金請求自体は可能性かと感じ受任しました。

私の経験的にはフルタイム就労は障害年金を受給する点ではマイナスでしたが、仕事を辞める訳にはいかないのでマイナスを少しでも減少させるために仕事の状況を詳しくヒアリング行いました。また障害年金は日常生活能力で判断するので、一人暮らしの事実はそれだけでマイナスです。しかし、実家に戻るわけにもいかず障害者のグループホームなどに入所するのも費用も掛かるので難しく、その中で活用したのがヘルパーです。私も必要もないのにヘルパー利用を勧めはしませんが、話を聞く限り日常生活面に課題が多いことからヘルパーを活用して少しでも生活面の引き上げを図ろうとしました。同時に、独居はしているが、ヘルパーを活用しているので最低限度の日常生活が維持できている状況を客観的に作ろうと試みました。時間がかかったのはヘルパー利用の調整です。障害福祉に理解がある方ならイメージ湧くと思いますが、①区役所への相談②利用申し込み③認定調査④区分認定⑤受給者証発行⑥ヘルパー会社との契約⑦実際の利用という流れを経て実際にヘルパーが利用できます。結果的にその手続きに約半年ほどかかりました。 

請求時に気にしていたポイント

就労状況は発達障害の年金では大きなポイントです。

障害年金において就労は以下の様に審査されます。

以下「障害認定基準より抜粋」

「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」

障害年金の受給は日常生活の有無で決まります。日常生活と労働との関係は「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、」という風に労働している⇒労働能力有り⇒日常生活能力有りとは審査しないと言っています。しかし、現実はこの様にはならないケースもあり、労働している⇒日常生活能力有り⇒年金不支給になるケースもあります。私も今まで2度就労していたので年金不支給を体験しました。両方ともうつ病等の精神疾患でした。1度目は遡及請求時で一般就労していたケースでした。障害厚生年金なので3級は引っ掛かる内容かと思っていましたが、ダメでした。2度目は事後重症請求で社会保険に加入している障害者雇用でした。就労で不支給になったのは今までこの2件で、発達障害、知的障害ではフルタイム就労していても障害年金は受給できています。この結果を受けて就労者の障害年金を行う場合は、認定基準にある「その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等」を十分にヒアリングし、診断書に落とし込んでもらったり、別紙提出したりします。

因みに診断書の就労欄には上記を記載できるようにはなっていますが、欄が少ないので別紙で対応しています。話はそれますが、認定基準の項目と診断書が連動している点は芸が細かいなとは感心します。

本事例においての就労状況

本事例では、仕事の種類、段取り、職場での支援体制、仕事をする上の配慮事項についてヒアリングしてまとめました。本人から聞くのは心もとないので会社の人事担当者からもヒアリングしました。第三者の意見を聴取することで書類の客観性が高まります。

認定基準では説明しきれていない就労上のポイントは「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」にあります。精神の障害年金をする場合はこのガイドラインは必須です。以下は発達障害者の年金請求の際のポイントですが、この3ポイントは絶対に外せません。私が特に気にしているのは①仕事の内容(単純反復作業)と②臨機応変な対応ができるか?です。これらを見る限り障害年金の対象は判断や指示を行う管理職という立場でなく、命令される側(平社員)を想定しているように感じます。なので、私がヒアリングする際は請求者の立場、作業内容は丁寧にヒアリングします。

 

 

一人暮らしについて

障害年金は日常生活能力の有無で判断されるので、一人暮らしをしている=日常生活能力有りとみなされる傾向があります。

私自身は一人暮らし状態で障害年金が不支給になったケースはありませんが、行政が不支給にしようとする理由は分からない訳ではありません。

行政は矛盾について注目しています。日常生活を単独でおくれない場合の所得補償制度が障害年金ですが、事実として日常生活を単独で送れているならそれは矛盾になります。行政は矛盾を嫌います。そのため、請求者としては矛盾点の解消に努めないといけません。一人暮らしはできているが、客観的に見れば一人暮らしはしているが内容が伴っていない、つまり生活としての体をなしていないことを訴えていかないといけません。

一人暮らしのポイント

 

「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、まさに私が言いたいことが集約されています。

 家族等の日常生活上の援助や福祉サービスの有無を考慮する。

「独居であっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえて、2級の可能性を検討する。」とありますが、一人暮らしでも支援状況を考慮して年金等級を決めると記載されています。もし、一人暮らしであったとしてもヘルパーなどを利用できない可能性もあることを考慮して、その必要性を考慮して年金等級を決めると宣言しています。この考えは非常に重要でここを見逃すと精神系の障害年金は受給できないと言っても過言有りません。一人暮らしの場合は、少なくともこの点を考慮して書類を作成していかないといけません。

本事例では一人暮らしだが、福祉サービスを受けていることからそこを重点的に説明していきました。

 最後に

以上が独居状態で社会保険加入状態の広汎性発達障害者でも年金受給ができたポイントになります。これら以外にもポイントはあるかもしれませんが、個人的には就労と一人暮らしが大きなポイントになります。本来なら生活に困っているなら受給できるべき制度なのかもしれませんが、現実はそう甘くありません。「できる」のに「できない」と偽るのは不正受給になりますが、経験的には「できない」のに「できる」と思われて障害年金受給ができない人が多々いるように感じます。

テクニックと言えば言いすぎですが、ポイントは抑えた上で申請するのをお勧めします。当事務所は障害年金でお困りの方のフォローが行えます。もし、お困りの方がいらっしゃいましたら是非ご相談ください。