一人暮らしの精神障害(双極性感情障害)で20歳前の障害基礎年金2級の受給事例
先日7月終わりに申請した20歳前の障害基礎年金の結果が10月半ばに分かり、無事2級の認定が下りました。認定まで3カ月かからないスピード裁定で感謝です。
この事例の一番の論点は一人暮らしが障害年金受給に影響を与えるかという点です。以下ではなぜ、一人暮らしが障害年金受給に与える影響とそれに対する対処法について説明していきます。
障害年金は日常生活能力の有無で決まる?
日常生活能力の根拠は?
国民年金法30条1項によると、「その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、障害基礎年金を支給する」と規定されています。2項に「障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから一級及び二級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。」とあり、どの程度の障害状態なら1級なのか2級なのかは政令に委任されています。
国民年金法施行令 第四条の六によると「法第三十条第二項に規定する障害等級の各級の障害の状態は、別表に定めるとおりとする。」と別表扱いになっています。
そして、下記がその別表になります。
これが障害認定基準と説明されても視覚障害、聴覚障害、肢体障害以外は抽象的に構成され何が何やら分かりません。そこで、この障害の状態を具体化したのが「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」になります。そして、障害認定基準には障害の程度の説明を「障害の程度を認定する場合の基準となるものは、国年令別表、厚年令別表第 1 及び厚年令別表第 2 に規定されているところであるが、その障害の状態の基本は、次のとおりである。」とし、
1級は「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。 例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむ ねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね 就床室内に限られるものである。」、
2 級 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを 必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。 例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。」と例示がなされています。
前の別表より具体化されましたが、それでもまだ抽象的な表現が多いです。しかしその中でも、1級は日常生活が不能な場合、2級が日常生活能力に制限が加わる場合と理解することができます。その様な抽象的な表現の中で「日常生活」という表現が多用されています。この「日常生活」が障害年金を考えるうえで非常に大きなポイントになります。
具体的な日常生活能力とは?
次なる問題は、日常生活能力が何で構成されているのか、どのように日常生活の有無を判断するのかです。先の例には若干具体的に記載があります。例えば2級が「家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。」とあります。ここでは、食事、洗濯が基準として挙げられていますが、この様な活動を日常生活能力として構成しています。しかし、具体的な日常生活能力の定義は障害毎に決まっています。例えば肢体障害は肢体の動作性がどの程度残存しているかで日常生活能力が決まり、内疾患は検査結果を根拠にどの程度日常生活能力が制限を受けているか判断します。精神疾患の場合は先程の食事、整容面、コミュニケーション能力がどの程度障害により制限を受けているかで日常生活能力の有無が決まる仕組みになります。
これらの項目は診断書にて認定がなされます。障害年金で診断書が重要であるというのはこの点から来ています。
一人暮らしができる=日常生活能力がある?
一人暮らしを経験したことは多いでしょうし、人によってはそのイメージは異なると思いますが、食事の準備をしてその料理を食べて片づけをして、また部屋の片づけ、服の洗濯、毎日の入浴、そして家賃・光熱費・生活費等のお金の管理等を思い浮かべる事が多いのではないでしょうか?
これら一人暮らしで必要なスキル(能力)と先で説明した障害年金が審査基準にしている日常生活能力は重複している場合があることはイメージつくかと思います。そして、診断書上では「日常生活能力がなし」となっているのに実際一人暮らしをしているとその点で矛盾になる可能性があります。実際にその点で返戻になったり、不支給になったりという話も聞いたことがあります。
そこで、一人暮らしで障害年金を請求する場合は、①なぜ、一人暮らしになったのか?(経緯)②一人暮らしをしているが、どのような状況で一人暮らしをしている。(中身)③第三者のサポートを受けているか?(支援者の存在)を説明し、診断書と矛盾が無いように進めていかないといけません。
もし、それら説明が十分ではないと診断書上は日常生活ができないとなっているが、事実として1人暮らしをしているので、その点で「日常生活能力がある」とみなされ年金不支給になる可能性は高いです。
本事例において
本事例では請求者は一人暮らしでした。しかし、その一人暮らしには家族が生活保護を受給のため世帯分離という側面からやむなく一人暮らしをしたという経緯がありました。また、実際一人暮らしはしているが、家族が住んでいるので、食事や入浴は同一マンションにいる家族の所で行っている事実もあったので診断書にはその旨を記入してもらいました。
結果として、客観的には一人暮らしだが、周囲のサポート受けてどうにか日常生活が維持できているという状況で認定を受け障害基礎年金2級の結果が下りました。
終わりに
この事例で一番の論点は一人暮らしでした。この論点は一般の方には気付きにくい点ですが、障害年金の目的が理解できていたら気付く論点でもあります。では、一人暮らしだから必ず年金が不支給になるかと言えばそうではありません。私が代行請求したケースでは本事例を除いて、知的障害の方での一人暮らしの状態でも無事年金受給できたケースはあります。要は、一人暮らしの状況を丁寧にヒアリングしそれを診断書に落とし込むことで不支給を回避できる場合があります。その際のポイントになるは、①なぜ、一人暮らしになったのか?(経緯)②一人暮らしをしているが、どのような状況で一人暮らしをしている。(中身)③第三者のサポートを受けているか?(支援者の存在)なので、ぜひ参考にしてみてください。