障害福祉に従事する支援者向け、知的障害の障害年金ガイダンス ④

前回は、申請までの流れについてお話ししました。今回は診断書についての解説を行います。

診断書は医師が作成するので請求人は仕組みを理解する必要はないという意見もあるでしょうが、診断書の中身への理解がないと不備の修正ができません。また、前回診断書作成の為に事前の情報のヒアリングしておくべきとお話ししましたが、診断書の中身が分からないと何をヒアリングしてよいのか分かりません。そのため、最低限診断書の項目についての理解は必要になります。

 

診断書 項目解説 前編

氏名・住所・生年月日 性別

これについては、事実に沿い記載します。住所は住民票がある住所を書く形になるので、注意が必要です。履歴書では性別の選択が任意になりましたが、年金の診断書はまだ対応していません。請求人の思想を反映させて選択せずに申請する方法もありますが、返戻されるリスクがあるのでその点は理解するうえで進める事を進めます。因みに、以前生年月日の年号を選び忘れた診断書で申請した経験がありましたが、そのケースは何の問題なく年金は下りました。性別も年金受給には影響を与えない項目なので未記入でも問題は無いかと思います。

① 障害の原因となった障害名

ここは、重要です。もし知的障害で申請するならここに知的障害(精神遅滞)と記載されないと知的障害としての申請になりません。時々、ここは広汎性発達障害のみで別の場所に知的障害と記載される場合がありますが、できれば①の所に知的障害と広汎性発達障害と併記して記載して貰う方向で進める事をお勧めします。またICDコードは記載が忘れがちになるので注意が必要です。知的障害はF7になるので、その記載があるか確認して下さい。軽度知的障害なら年金がおりない思っている人がいますが、それは間違いです。軽度知的障害でも障害基礎年金2級の受給は可能です。逆に重度知的障害だからと言って障害基礎年金1級になるとも限りません。1級か2級かは病名ではなく障害の程度で決まります。

 

② 傷病の発生年月日

知的障害の場合、ここは出生日の日付が記載されることが多いです。記載方法は日付が書かれたり、出生日と書かれたりするケースもありますが、生まれた日が出生日と分かれば問題はありません。

もし、知的障害の原因となる傷病や障害が明確になっているならその日付が傷病の発生年月日になる可能性があります。その場合はその日付を記載しても問題ないかと思います。ただ、知的障害の多くが原因不明なので出生日が発生年月日になるケースが多いかとは思います。

 

本人の発病時の職業

ここも事実を記載する形になりますが、傷病の発生年月日が出生日ならここは空欄が多いかと思います。新生児や無職と書てくれるケースはありますが、問題はありません。

 

③ ①のため初めて医師の診療を受けた日

知的障害の場合、初診日は出生日なのでここはあまり重要ではありません。

仮にここが20歳以降の年齢が記載されていても原則として初診日は出生日となります。

しかし、知的障害以外の障害の場合は③の日付は重要なのできちんとチェックする必要があります。

④既存障害 ⑤既往症

何か知的障害以外に障害がある時は記載して貰います。

一点注意ですが、知的障害の場合は特に影響はないですが、それ以外の障害の場合で④⑤に記載されている障害、疾病と①に記載されている障害(請求障害)との間に相当因果関係があれば初診日が変更になる場合もあるので注意が必要です。特に精神疾患以外の障害の場合は注意です。

⑥ 傷病が治癒したかどうか?

ここも知的障害を含めた精神疾患の場合、障害認定日は初診から16か月経過とか20歳と決まっているからです。なので、空欄のケース、16か月を経過した日、知的障害の場合は20歳の誕生日を記載してくれる時が多いです。

 

症状のよくなる見込

先の⑥よりこちらの方が重要です。ここは空欄が不可でどれかに記載して貰う形になります。経験的には不明か「無」が多いです。よくなる見込が「有」にチェックが入ると審査で症状が軽いとみなされる場合があるので注意が必要です。

 

⑦ 病歴から現在までの…参考となる事項

 

ここはヒアリングが活きてくる部分になります。知的障害の場合は年金診断書作成の為に初めて精神科を受診する時が多いので、受診前に病歴、成育歴、就労歴等をヒアリングしてまとめておきます。その情報がそのままここに記載される様なイメージになります。

知的障害以外の精神疾患でもこれら情報をヒアリングしてまとめておいても、最終的には病歴・就労状況等申立書を作成し提出しないといけないので損はありません。

⑧ 診断書作成医療機関における初診時初見

ここは医師に淡々と事実を記載して貰うところです。ここの初診年月日はその医療機関に通院した年月日です。③ ①のため初めて医師の診療を受けた日とは異なるので注意が必要です。

 

 

⑨ これまでの発育・療育歴等 ア 発育・養育歴

ここもヒアリングが活きてくる部分になります。

記載内容は医師により様々ですが、発達の遅れの様子、例えば発語が遅かった、歩くのが遅かったなどが記載されます。一方、知的障害や発達障害以外の精神疾患は発育等に問題ないケースも多いので空欄の場合も多いです。障害によりますが、空欄でも問題はない箇所にはなります。

 

⑨ これまでの発育・療育歴等 イ 教育歴

ここもヒアリングが活きてくる部分になります。ただ、着色なしに事実を記載して貰う部分です。知的障害者の中には普通校を卒業して短大などを卒業されている方も多いですが、学歴関係なく障害年金は受給できます。特別支援学校を卒業していないといけないことはありません。

 

⑨ これまでの発育・療育歴等 ウ 職歴

ここもヒアリングが活きてくる部分になります。記載欄が少ないので全ての職歴を記載するのは不可能です。経験的に今までの仕事の内容を要約して軽作業5年とか清掃1年等の記載が多いです。私が代行請求するときは社会保険加入の有無、仕事の内容、勤続年数等である程度まとめた情報を医師に提示して記載して貰っています。前回もお話ししましたが、社会保険に加入していればここを空欄しても年金機構側からすれば分かるので、記載しないという事はあまり意味がありません。

 

⑨ これまでの発育・療育歴等 エ 治療歴

ここもヒアリングが活きてくる部分になります。医師も理解していますが、請求障害と関連する通院歴を記載します。なので、請求障害に全く関係ない身体障害での通院は記載しません。因みにここの治療歴が病歴・就労状況等申立書の通院歴に合致するイメージになります。

 

⑩ 障害の状態 (平成・令和  年  月  日  現症)

ここは狭い欄ですが、重要です。ここが空欄なら絶対に受け取ってもらえません。この欄の日付は、診断書がいつの障害の状態を示しているかという意味です。つまり、障害認定日請求をする場合、20歳の誕生日の前後3カ月の日付が⑩に記載されないと認定日請求できませんし、また事後重症請求でも請求日から3カ月以内の日付が⑩に入らないと申請できません。なので、申請前にはこの日付はきちんと確認しましょう。

因みに、裏面の下にも日付を書く欄がありますが、ここは作成した日付が記載され、⑩の日付とは役割が違います。

 

 

⑩ 障害の状態 ア 現在の病状又は状態像

ここは、該当する症状を記載して貰います。知的障害の場合はⅦ 知的障害 軽度 中等度…の部分にきちんとチェックがあるか重要です。もし、無い場合は記入してもらうようにしないといけません。

⑩ 障害の状態 イ 左記の状態について、その程度、症状・処方などを具体的に記載してください。

 

ここも医師の主観による部分が多い箇所になります。完成したら中身を確認して実態にあった内容か確認します。

もし、向精神薬など処方されているなら記載してもらいます。特に知的障害、発達障害以外の精神疾患では服薬は必須なので記載漏れがあれば年金不支給になったり、返戻されたりします。

因みに、記述が多い方が良いですが、多くなければいけないことも有りません。記述がいくらしっかり記載されていても日常生活能力があるなら年金は不支給になります。求められるのは記述内容と日常生活能力とのバランスになります。

 

 

 

年金診断書の表面の説明が終わりました。次回は裏面の説明を行います。