障害福祉に従事する支援者向け、知的障害の障害年金ガイダンス②

前回知的障害の障害年金の基本的な部分(初診日についてと障害認定日)についてお話ししました。前回から少し間が空きましたが、今回は障害年金の制度と障害年金の請求に必要な書類についてお話します。

20歳前の障害基礎年金とは?

障害年金は大きな括りで障害基礎年金と障害厚生年金に分かれます。

障害厚生年金は請求する障害の初診日が厚生年金期間中にある場合に請求する年金です。

一方で障害基礎年金は初診日が国民年金期間中にある場合に請求する年金です。しかし、障害基礎年金だけは特殊で初診日に年金に加入していなくても請求できる場合があります。① 60歳から65歳の年金未加入期間の障害基礎年金と② 20歳前の障害基礎年金です。

知的障害者が請求する年金は20歳前の障害基礎年金になるので、ここではこれを中心にお話しします。

20歳前の障害基礎年金は初診日が20歳未満にある、つまり国民年金未加入期間に初診日がある場合に請求する年金です。年金額や加給年金額については通常の障害基礎年金と特に変わりはありませんが、所得が一定程度になる場合や外国にいる場合等は支給停止状態になるのが通常の年金との違いです。

通常の年金と違いこのように支給停止条件が定められているのは20歳前の障害基礎年金が保険原理(保険料を納めた対価として年金を受給する)を採用せずに保険料の拠出なしに年金が受給できるようにしているからです。

 

20歳前の障害基礎年金の請求時に必要な資料(知的障害で請求する場合)

 

① 診断書 (様式120号の4

知的障害は精神障害の分類になるので、診断書は様式120号の4を使用します。

因みにこの様式でないとダメという訳ではなく、少なくともこの様式に記載されている内容が全て含まれていれば別の様式でもよいようです。診断書自体は手書きでないとダメという訳ではなく、医師によってはPCで作成している場合もあります。両面印刷でなくても片面印刷の書類でも相互に割り印していれば問題ありません。PCで作成した診断書も多いですが、手書きの診断書も結構な割合で頂きます。

120号の4 様式ダウンロード

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/20140421-23.html

 

② 病歴・就労状況申立書

これは、診断書と違い様式はこれしかありません。身体障害であっても精神障害であっても同じ様式を活用します。市役所からは手書き用の用紙を貰えますが、わざわざ手書きで作成しなくてもPCで作成した書類を活用しても大丈夫です。PCで作成する場合、手書きで作成する場合でも記述欄は狭いので書ききれない場合は別紙という形で提出しても問題ありません。この書類は地味ですが重要です。しっかり作成する必要があります。

病歴・就労状況申立書のPDFダウンロード

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/20140516.files/0000019142mEPPOLXV2r.pdf

病歴・就労状況申立書のエクセルダウンロード

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/shindansho/20140516.html

 

③ 年金請求書 様式107

障害年金で重要なのは診断書と病歴・就労状況申立書と受診状況等証明書でこれらさえきちんと作成できれば峠を越えたイメージですが、年金請求書が無ければ請求できないので、この書類は違う意味で重要です。内容は氏名、住所、銀行口座情報などを機械的に事実に沿い埋めていくだけで特に難しくもないですが、認定日請求ではなく事後重症請求を選択する際に、なぜ事後重症請求を選んだのか?という理由に注意が必要です。

ケースとしては少ないですが、当初カルテが無いと思っていたので事後重症請求で請求し受給権が発生したが、よく調べると障害認定日のカルテがあり診断書作成が可能だった場合があります。この場合、認定日の診断書で遡及請求が可能です。しかし、申請には認定日ではなく事後重症請求を選んだ理由を取り消した上で遡及請求をする形になるので、事後重症請求を選んだ理由が必要になります。もし年金請求書のコピーを取っていないと、個人情報開示請求を行って年金請求書の取り寄せをしないといけなくなるので注意が必要です。

裁定請求書ダウンロード

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/shougai/20180305.files/107.pdf

④ 療育手帳を含めた取得している障害者手帳

障害年金は手帳の有無は問われません。手帳が無くても申請は可能です。しかし、手帳があるなら手帳を添付するのは自然なので是非添付して請求してください。手帳と年金の等級は連動しません。精神障害者福祉手帳3級でも障害年金2級の場合は私が申請代行する場合もよくあります。

 

⑤ 通帳のコピー

これは通帳のコピーを提出します、最近多いのがインターネットバンキングですが通帳の画面をスクリーンショットしたものを提出してもOKな場合があります。インターネットバンキングの場合は事前に確認することをお勧めします。

任意提出書類

① 就労状況についてまとめた資料

私が申請代行する場合で就労者の場合は就労状況をヒアリングして別紙にまとめて提出しています。私の場合は障害福祉サービス(就労継続支援B型、A型)の場合でも提出しています。理由は就労活動=労働能力有り⇒日常生活能力有りと認められる場合があるからです。それを少しでも回避する為に妥協はしません。

② 障害福祉サービスの利用状況が分かる資料

障害福祉サービスを利用していると請求上の弱点を補強できる場合があります。その最たる例が一人暮らしの状態でのヘルパー利用です。障害年金は日常生活の能力の有無で判断されるので、一人暮らしができる=日常生活能力ありとみなされ、不支給になる場合があります。もし、そこでヘルパー利用しているなら、ヘルパーによる日常生活の支援を受けて生活できていると弱点を補強することが可能になります。

 

終わりに

任意提出書類は何を提出するのか自由ですが、基本は審査にプラスになる可能性がある書類を提出します。そして、あまり関係ないものは提出しないことは言うまではありません。

 

次回は、請求までの流れについて説明します。