障害福祉に従事する支援者向け、知的障害の障害年金ガイダンス ③
前回知的障害の障害年金で必要な資料についてお話ししました。今回は障害年金の請求までの流れについてお話しします。
特別支援学校などで保護者様から何の手続きから進めていけばよいのかとよく聞かれます。確かに、市役所などに相談に行き、一連の手続きの話を聞き、診断書や病歴・就労状況等申立書を渡されても家に帰ると何から始めたらよいの?と疑問符が浮かぶことは想像できます。実際は、診断書を先に作成してもらっても、病歴・就労状況等申立書を先に作成しても最終的に書類がきちんと矛盾なく完成すれば問題はありませんが、効率的に書類を作成していく方が時間短縮もできますし、書類間の矛盾もなくなる可能性があります。
初回相談から年金申請までの流れ
私が障害年金の申請代行を行う場合、この図に沿って手続きを行っていきます。
① 本人(及び保護者)との面談、ヒアリング
第一に初回のヒアリングです。一応一度はお会いしてお互いを知った上で手続きを進めていきます。障害年金は他の年金と違いプライべーどな内容まで踏み込んでいくので信頼関係の構築が必要になります。
私はこの初回のヒアリングでは詳しい話はしないようにしています。手続きの流れ、必要な資料を説明して終わりますが、ここで重要になるのがIQ証明書を取得する段取りを取ります。IQ証明書という言い方は都道府県ごとで異なるようですが、要するに知能指数を証明する書類です。知的障害の障害年金の場合は診断書に知能指数を記入しないといけません。そのため、初回の相談時にIQ証明書を取得する段取りを取るようにします。取得まで数週間かかる場合もあります。
どこに請求するの?と疑問に思う人がいると思いますが、療育手帳を取得しているならその取得時に検査をした機関に請求します。もし、分からない場合は最寄りの区役所や市役所に相談します。
② 成育歴・通院歴・就労歴・現在の日常生活の状況をヒアリングする。
ここでは、診断書を作成してもらう準備として請求人からの情報のヒアリングの流れについてお話しします。ここからが障害年金の本題に入りますが、少し前提のお話をします。
障害年金の認定は診断書により行われます。医師による問診等は無く書面審査のみで行われます。つまり、診断書の内容が審査に直結することを意味します。そのため、診断書に請求人のすべての情報を記載して貰うぐらいの勢いで準備を行う必要があります。
精神系の診断書は現在の病状はもとより、現在の日常生活の状況、就労しているなら就労状況、今までの病歴の経過、生活環境、福祉施設の利用状況等を記載する項目があります。少なくとも、診断書に記載がある項目のヒアリングはする必要があります。
一方、障害年金の申請に必要な書類は診断書だけではなく、病歴・就労状況等申立書もあります。病歴・就労状況等申立書は請求人の成育歴、病歴、就労歴等を請求人が作成する書類になります。どこかで聞いたフレーズでないでしょうか?先ほど診断書作成の為に現在の日常生活の状況、就労しているなら就労状況、今までの病歴の経過、生活環境、福祉施設の利用状況等をヒアリングしないといけないと説明しましたが、診断書の内容と病歴・就労状況等申立書の内容は密接に関連しています。
そのため、私が支援をする場合は医師に診断書を作成してもらう前段階として病歴・就労状況申立書(案)の作成を行います。作成した病歴・就労状況申立書(案)を医師に見てもらうことで診断書の中身と病歴・就労状況申立書(案)の中身の矛盾が減少することになります。
一番問題なのは診断書の中身と病歴・就労状況申立書を別々に作成して相互に矛盾がある場合です。その矛盾は不支給理由の一つにもなります。私が審査請求で担当したケースですが、不支給理由として「診断書は日常生活が大変な様子で記載されているが、病歴・就労状況申立書は活動的に記載がある」との理由がありました。また、診断書の日常生活の程度のチェックと病歴・就労状況申立書の日常生活のチェックが一致しないとの不支給理由も聞いたことがあります。
そのため、その様にならない様に病歴・就労状況申立書(案)を作成し、それを診断書の作成資料として活用する流れを徹底するのが良いかと思います。
一方で診断書を作成してもらい病歴・就労状況申立書を作成するという人もいるかもしれませんが、あまりお勧めしません。医師が全てを請求者の事全て知っていれば問題ないですが、知的障害の場合は年金受診の為に病院に係るケースが多いので医師も請求人の事を十分知りません。知らない状況でいきなり診断書を作成してもらうのは情報不足ですし、問診の際の口頭でのやり取りになってしまいます。口頭でのやり取りは言い間違い、聞き間違いのリスクもあるので、必ず書面で正確に伝える事をお勧めします。
③ 診断書作成
先程説明した通り病歴・就労状況申立書(案)を作成し、それを医師に参考資料として見てもらい診断書作成を依頼します。
一方で何の下準備も無に医師に診断書を作成してもらってから病歴・就労状況申立書の作成に取り掛かるという人もいるかもしれませんが、あまりお勧めしません。医師が全てを請求者の事全て知っていれば問題ないですが、知的障害の場合は年金受診の為に病院に係るケースが多いので医師も請求人の事を十分知りません。知らない状況でいきなり診断書を作成してもらうのは情報不足ですし、情報収集の問診などは行われます。口頭でのやり取りは言い間違い、聞き間違いのリスクもあるので、必ず書面で正確に伝える事をお勧めします。病歴・就労状況申立書(案)を事前に作成するというのは口頭でのリスクを回避する役割もあります。事前準備は重要です。
④ 病歴・就労状況申立書の作成
病歴・就労状況申立書(案)を字前に作成しているので、後は完成した診断書を読み込み相互の書類に矛盾が無いか確認していきます。矛盾があったり、補足があったりすれ病歴・就労状況申立書(案)を修正します。
病歴・就労状況申立書の記入欄は有限なので、私はそこには記載せずに記述だけまとめた資料を別紙として添付して申請しています。別紙とする方が、読み手もストレスなく読むことができると思います。
⑤ 添付書類を集める。
最近は基礎年金番号とマイナンバーが紐づいているので、住民票や所得証明を取る必要が無くなりました。しかし、1.療育手帳(障害者手帳)のコピー2.通帳のコピー(年金振込予定通帳)3.加給年金対象がいる場合の確認のための戸籍謄本は必須なのでそれら資料を集めます。
また、病歴・就労状況申立書や診断書の補足資料として別紙資料(就労状況や日常生活状況を説明する資料)があるなら添付して請求します。
⑥ 窓口に請求する。
請求は年金事務所や最寄りの区役所、市役所で申請できます。年金事務所は現状予約制なので、事前に電話して確認する必要があります。市役所、区役所も同様で一度電話で確認してから相談に行くことをお勧めします。
これが、障害年金の手続きの流れです。これが正しい流れかどうかは個人の感がですが、私は矛盾なく手続きができるかと考えています。ぜひ参考にしてみてください。