【記事80】高次脳機能障害の特殊性と診断書のリアル――歩行不可・右手全廃のADLデータで「障害基礎年金1級」を勝ち取った実例解説
脳の損傷によって引き起こされる「高次脳機能障害」。この障害には、他の身体障害や精神障害とは大きく異なる「ある特殊性」があります。それは、外見からは障害の本質が非常に分かりにくく、できる動作とできない動作の差が激しいという「モザイクのようなギャップ(斑模様の障害)」があるという点です。
「高次脳機能障害があるから、精神の診断書も出さなきゃダメ?」
「本当は1級のハズなのに、書類の書き方がわからない……」
「本当は1級のハズなのに、書類の書き方がわからない……」
もしあなたがそんな壁にぶつかっているなら、諦める必要はありません。実は、目に見える「肢体障害の診断書」1枚に絞ることで、最速かつ確実に最高等級である「障害基礎年金1級」を勝ち取るという非常に賢い戦略があります。
今回は、実際に「障害基礎年金1級」が認定された障害年金用診断書(肢体の障害用)のリアルなADL(日常生活における動作)判定データをすべて文字に起こし、高次脳機能障害の特殊性と絡めながら、その成功の鍵をプロの視点で徹底解説します。
1. 【実例データ】1級に認定されたリアルなADL(日常生活動作)
以下は、実際に障害基礎年金1級(2026年度基準:年額1,059,125円)が認められた診断書の左右それぞれの動作評価(〇:できる、△:やや不自由、✕:できない、エ:手すりがあってもできない)の全容です。
【上肢・手指・身の回りの動作】
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- a. つまむ(新聞紙が引き抜けない程度):右 ✕ / 左 〇
- b. 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度):右 ✕ / 左 〇
- c. タオルを絞る(水をきれる程度):両手 ✕
- d. ひもを結ぶ:両手 ✕
- e. さじで食事をする:右 ✕ / 左 〇△
- f. 顔を洗う(顔に手のひらをつける):右 △✕ / 左 △✕
- h. 用便の処置をする(尻のところに手をやる):右 ✕ / 左 〇△
- i. 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ):両手 △✕
- j. 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる):両手 ✕
- k. ズボンの着脱(どのような姿勢でもよい):両手 △✕
- l. 靴下を履く(どのような姿勢でもよい):両手 △✕
【下肢・体幹・移動の動作】
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- m. 片足で立つ:右 ✕ / 左 ✕
- n. 座る(正座・横すわり・あぐら・脚なげだし):持続可能(〇△)
- o. 深くおじぎをする(最敬礼):✕
- p. 歩く(屋内):✕
- q. 歩く(屋外):✕
- s. 階段を上る:エ(手すりがあってもできない)
- t. 階段を下る:エ(手すりがあってもできない)

2. 高次脳機能障害の特殊性:データに現れる「できる・できないのモザイク」
このデータを見ると、高次脳機能障害を伴う方に特有の「アンバランスさ」が明確に表れています。
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- 右手は✕(全廃)だが、左手は〇(できる)
- 座ることはなんとか維持できる(〇△)が、歩くことは屋内外ともに✕(できない)
- 左手でつまんだり(〇)、スプーンで食事(〇△)はできるが、両手で行う「ボタン留め」「ひも結び」「タオル絞り」は✕(全滅)
「左手が動く」という罠に負けない評価
高次脳機能障害の最も厄介な特殊性は、「左手でスプーンを持てる」「座っていられる」といった部分的な「できる」があるために、行政の審査官や周囲の人から「そこまで重症ではないのでは?」と過小評価されやすい点にあります。
しかし中身を客観的に見れば、歩行は一切不可能(下肢機能の全廃)であり、衣服の着脱やトイレの後の始末など、生活の根幹に関わる動作の多くに「✕」や「△✕」がついています。
今回の事例では、年金機構が「一部に〇があっても、実質的に四肢(両手両足)の機能に著しい障害があり、他人の全面的な介助なしには24時間生活が成り立たない」と、生活の実態を正しく判断したからこそ「1級」という結果に繋がりました。
3. 勘違いしやすい罠:高次脳機能障害だからといって「精神の診断書」は必ずしも必要ない
障害年金の申請において、多くの人が「高次脳機能障害という病名があるのだから、精神の障害用診断書も絶対に提出しなければいけない」と思い込みがちです。
しかし、結論から言うと、必ずしも精神の診断書は必要ありません。
今回の実例が証明しているように、肢体障害(身体)の診断書だけで最高等級である「1級」の基準を完全に満たしている場合、あえて精神の診断書を追加する必要はないのです。肢体だけで勝負することには、以下のような圧倒的なメリットがあります。
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- 審査のスピードが劇的に早くなる
複数の診療科(整形外科と精神科など)に診断書を依頼すると、書類がすべて揃うまでに数ヶ月のタイムラグが発生します。今ある「肢体の障害用」1枚に絞ることで、最速で申請へ進めます。 - 診断書費用の節約ができる
診断書は1枚あたり約5,000円〜10,000円かかります。1枚で1級が確実に通る状態であれば、もう1枚の診断書代を支払う必要はなく、経済的な負担を減らせます。 - 審査官に「言い訳」をさせない客観性
高次脳機能障害(精神)の審査は目に見えない脳の認知機能を評価するため、審査官の主観が入りやすく、実態より軽く判定されるリスクが常に付きまといます。
一方で、今回のデータのように「屋内外の歩行が✕」「右上肢全廃」「両手動作がすべて✕」という身体的データは、誰が見ても言い逃れのできない「客観的事実」です。年金機構側も、肢体だけで1級を出さざるを得ない強力な証拠になります。
- 審査のスピードが劇的に早くなる
4. この事例から学ぶ、1級を確実に勝ち取るためのポイント
目に見えない脳の障害(高次脳機能障害)の背景を持ちながら、身体の麻痺で1級を勝ち取るためには、申請者側が書く「病歴・就労状況等申立書」での補足が決定打となります。
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- 「左手〇」の裏にある限界と高次脳の影響を訴える
診断書に「左手でつまめる(〇)」とあっても、「高次脳機能(注意障害や半側空間無視など)の影響で、実際には落としたり忘れたりして危険なため、一人ではやらせていない」という『実質的にはできない』という生活実態を文章で補足することが不可欠です。 - 移動と着替えの「全介助」を具体的に数値化する
「歩く(✕)」「階段(エ)」「ボタン留め(✕)」の項目に合わせ、「車椅子の移動、衣服の着脱、トイレの始末は、家族が毎日つきっきりで全介助している」という他者への依存度(介護負担の重さ)を明確にアピールします。
- 「左手〇」の裏にある限界と高次脳の影響を訴える
まとめ:見えにくい障害だからこそ、確実なルートで正当な「1級」を
高次脳機能障害は、本人も家族もその「見えづらさ」「特殊さ」に日々翻弄される障害です。だからこそ、障害年金の申請においては、最も証明しやすく言い逃れのできない強力な書類から攻めるのが鉄則です。
今回の事例は、屋内外の歩行不可と右上肢全廃、そして両手動作の全滅という動かぬ客観的データが揃うことで、精神の診断書を挟むことなく、肢体だけで最高等級である1級の支給が認められた、非常にスマートで勇気づけられる成功実例です。
妥協せず、実態に合った適切な診断書と申立書を揃え、家族を支えるための正当な権利を必ず形にしていきましょう。

