軽度知的障害、特例子会社での障害者枠フルタイム就労で障害年金2級受給決定

令和41月に申請した20歳前の障害基礎年金の結果が無事発送され2級で決定を受けました。

審査も順調で特に問題もなくし結果がでてほっとしています。

 

以下ではこの事例の論点は正社員としてフルタイム就労している事実が、請求者の日常生活能力の向上に繋がっているかどうかで、もし、就労できるぐらいに労働能力、日常生活能力があると認定されると障害年金は不支給になります。この論点は非常に重要になります。

障害年金のポイントは日常生活能力の有無

障害年金がどの様な状況で受給できるかご存じですか?

障害者なら受給できると思われている人は多いですが、違います。障害年金は日常生活能力の有無で決まります。なので、障害があっても日常生活に制限が加わらないなら年金受給はできません。ここは大事な論点です。例としては人工関節が挙げられます。人工関節は障害年金の世界では3級相当ですが、身体障害者手帳では非該当になる可能性があります。

障害年金では日常生活能力が無いことを診断書を通じて行政に伝えていかないと年金が下りないことになります。

知的障害を含めた精神障害はこの日常生活能力と労働能力に親和性があるとみなされる傾向があります。私も障害年金のサポートをしていて給料が高い人が必ず日常生活能力が高いとはならないとは重々理解していますが、仕事をしている、それなりに給料が高いと日常生活能力があると誤解されるケースは多い様に思います。その様な誤解を受けないように以下の方法で仕事の状況を行政に説明していかなければなりません。

 

今回の申請に使用した診断書の基本情報

2 日常生活能力の判定

1) 適切な食事          3

2) 身辺の清潔保持        3

3) 金銭管理と買い物       3

4) 通院と服薬(要)       3

5) 他人との意思伝達及び対人関係 3

6) 身辺の安全保持及び危機対応  3

(7) 社会性            3点

判定平均    3.0

3 日常生活能力の程度

知的障害    3

エ 現症時の就労状況

一般企業 障害者雇用 勤続年数16か月  フルタイム 給料額は16万円程度

キ 福祉サービスの利用状況 なし

療育手帳 B2保有

 

障害等級「目安」への当てはめ

以下は、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(以下「ガイドライン」と略)から抜粋した障害等級の目安です。

判定平均は3.0で程度が3なので、その結果を障害等級の目安に当てはめると2級です。この障害等級目安は目安ですが、拘束力は非常に強いです。経験的に目安が1級で結果は2級になることは有っても、目安が2級で1級になったことはありません。

 

因みに目安が「2級又は3級」に該当する診断書で障害基礎年金の請求をすると認められない可能性が非常に高いです。理由は、障害基礎年金は2級までしかなく、3級と認定されると年金の対象外になるからです。

本事例で目安は2級ですが、あくまでも目安なので必ず2級とは認定されません。

以前目安は2級だが、障害者枠で就労しているので不支給と認定されたケースが有りました。なので、目安が2級だからと言って安心はできないのです。

  

就労と障害等級の関係

就労と障害等級の関係は「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の知的障害の認定要領に記載されています。

認定要領には

「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」と記載されています。

 認定要領には「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず」とあることから、就職=日常生活能力アップとはなりません。

そして、以下に「現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」となっています。

行政は優しいですね。これらのことを考慮して年金等級を決定すると記載されています。では、これらの事項を行政が積極的に確認してくれるのでしょうか?答えはそこまで優しく積極的には聞いてはくれないと思います。

認定要領の記載を逆に考えると、それら事項を考慮した結果、日常生活能力が向上したものとみなされる可能性があります。そうなると、日常生活能力があるので障害年金は受給できなくなる可能性が出てきます。それを回避するためには、仕事場での様子を詳細に診断書に落とし込んでいかなければなりません。

 

診断書の就労欄について

認定要領にある、「仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等」はどこに記載されているのでしょうか?

答えは、診断書の裏面 エ 現症時の就労状況にあります。ここに、①勤務先②雇用体系③勤務年数④仕事の頻度⑤ひと月の給与⑥仕事の内容⑦仕事場での援助の状況や意思疎通の状況に記載する欄があります。ただ、見ればわかりますが、記入欄が少ないです。なので、私は別紙にもう少し具体的な仕事の中身、職場での配慮事項を詳しく提出しています。

例えば障害者雇用の場合、障害者雇用においての会社のスタンス、障害者枠で就労している人数、障害者を支援している支援者の状況等もヒアリングしてまとめています。

そこまで必要かという考えもあるかもしれませんが、きちんと整理された情報はあるだけ有利だと思うので私はヒアリングしてまとめています。

 

診断書の就労欄以外の仕事でのポイント

 診断書の就労欄以外のポイントとしては「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に記載されています。

  • 仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する。

これは、業務の内容が単純作業であるかどうかです。逐一自分で判断して行動する仕事

をしている場合は労働能力が高いとみなす可能性があると言っています。例えば役職者や役職者でなくても部下がいるケースは障害年金的には厳しくなると思います。逆に1日の流れは全て上司の指示で動き自分で考え行動する余地がないケースでは労働能力は低いとみなされる可能性は高そうです。

  • 仕事場での意思疎通の状況を考慮する。

周囲と円滑にコミュニケーションができない場合に労働能力は低いと記載されていま

す。一言にコミュニケーションといっても幅が広いですが、仕事での報連相ができない、周囲の話を聞かない(聞く気はあるが、内容の理解ができない)等が該当するのかと思います。

まとめ

以上が知的障害者の就労する際のポイントになります。

私が知的障害者の障害年金の代行をする場合に就労している場合は必ず仕事の状況をヒアリングして、診断書にきちんと記載してもらうように医師に伝えています。また診断書とは別に配慮事項などをまとめた別紙を提出しています。そこまでいるかという意見もあるでしょうが、精神系の障害年金の場合就労=日常生活能力「ある」とみなされる可能性がある以上はきちんとそれに向かって対処しないといけません。もし、申請して不支給になればその後再申請して年金が受給できたとしても数か月、1年程度の時間のロスになります。そうならないためにも、仕事の状況の確認は必須です。