障害福祉に従事する支援者向け知的障害の障害年金ガイダンス ⑤

前回は、診断書の表面についての解説を行いましたので、今回は後半部分の解説を行います。

 

診断書は医師が作成するので請求人は仕組みを理解する必要はないという意見もあるでしょうが、診断書が分からないと不備の修正ができません。また、前回診断書作成の為に事前の情報のヒアリングと言うお話をしましたが、診断書が分からないと何をヒアリングしてよいのか分かりません。そのため、最低限診断書の項目についての理解は必要になります。

診断書 裏面

裏面は請求人の日常生活の状況や日常生活能力を記載する場所が多いので非常に重要です。

ウ 日常生活の状況

ここは、地味ですが非常に重要で、この項目で請求者が単身生活かどうかの判断がなされます。

例えば、(ア)が「在宅」で「同居者の有無」が「無」になれば単身生活を意味します。障害年金は単身での日常生活能力の有無で判断されるので、単身で生活できている=日常生活能力有りと判断され、年金不支給という帰結になる可能性があります。しかし、仮に単身生活でも医師に嘘をついて「同居者有り」にチェックを入れさせるのはダメです。では、その場合どの様に対応すればよいのでしょうか?年金受給を諦めないといけないのでしょうか?

 

その場合のヒントは「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に記載があります。独居になったが、その独居に理由がある場合はその理由を考慮するとなっています。例えば、親に先立たれて泣く泣く一人暮らしをせざる負えなかったケースなどは考慮される可能性があります。しかし、その以外でも合理的な理由があれば考慮される場合はあると思います。

また、障害福祉サービスを利用している場合、例えば訪問介護サービスを利用しているケースなどは独居であっても考慮される可能性はあります。なので、一人暮らしをしているが、単独での生活は中々厳しいのでヘルパーを利用して障害福祉サービスの手を借りて日常生活を維持していると説明は可能です。そのため、ウ 日常生活の状況は重要なので請求人の生活環境を考えて、独居でないならその理由や障害福祉サービス有無を確認していく必要はあります。

日常生活能力の判定

日常生活能力の判定は、請求人の具体的な日常生活能力を7項目に分解して評価している部分です。この日常生活能力の判定と次に説明する日常生活能力の程度は障害年金の請求の上で一番の山になる部分なので重要です。

日常生活能力の判定の7項目は全てチェックを入れてもらいます。知的障害の場合、そもそも通院が不要との理由で「通院と服薬」のと事で通院は不要に〇をしてチェックをしない医師もいます。チェック無しでも審査は可能ですがチェック無しの状態で審査が行われるので請求人には不利になります。この日常生活能力の判定は請求人が単身生活する場合を想定しての、いわば仮定でのチェックになります。医師にそのことを十分に伝えた上でチェックしてもらう必要があります。

この日常生活能力の判定はよく誤解がありますが、単身生活を想定してのチェックになります。なので、家族と同居しているからすべて「できる」にはならない点に注意が必要です。家族と同居しているなら、独居生活を想定して日常生活能力の判定の7項目が「できる」のか「できない」のかで評価してもらう必要があります。医師に日常生活能力の判定はチェックしてもらう際に前回から口酸っぱくいっているヒアリングが重要になります。私が申請代行する際はこの日常生活のヒアリングを重点的に行います。その際の視点は当然ながら単身でどれだけ日常生活能力があるかどうかです。

 

日常生活能力の程度

これは、知的障害と精神障害に分かれます。知的障害は知的障害が該当して、軽度から最重度までが当たります。逆に精神障害は知的障害以外の精神障害がそれに当たります。知的障害と精神障害が重複する場合は原則知的障害にチェックすると「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」にありますが、絶対そうしないといけないとはなっていません。以前、知的障害とうつ病が併存するケースでチェックは精神障害に入っていましたが、無事年金は受給できました。

前に説明した日常生活能力の判定とここの日常生活の程度は整合性が求められます。これについては次回以降、障害等級の目安として二つの関係を説明します。簡単に説明すると、例えば日常生活能力の程度が「できない」にチェックが入っているのに、日常生活能力の程度が「知的障害は認めるが、日常生活は普通にできる」となっていると二つの関係の整合性は説明つきません。もし、この様な診断書が完成したならきちんと医師に説明して矛盾点の解消に努めないといけません。

 

エ 現症時の就労状況

ここは請求者の就労状況を記載する部分です。就労状況は任意なので記載不要という医師もしますが、もし請求者が社会保険に加入していると年金事務所は社会保険の加入履歴の確認が可能なので、逆にここに仕事の状況や配慮事項を記載して貰って就労しているが、周囲のサポートがあり就労継続ができているという方向で進める方が得策です。私自身はあまり経験ないですが、就労しているので年金不可というケースもあります。なので、そうならないために事前の準備は必要です。

 

オ 身体所見 カ 臨床検査

身体所見は事実に即して記載が必要です。

臨床検査は重要で、ここにIQ等が記載されます。私は経験ないですが記載忘れは返戻事由になるので記載されているかチェックします。よく、IQ等の情報をどこで取得するかと聞かれますが、療育手帳の発行機関に問い合わせする形になります。時たま療育手帳は保有していないが主治医の診断で知的障害と認定されているケースがあります。その場合はその診断した医師に知能指数などを聞いてそれを臨床検査の項目に記載して貰う形になります。

因みに、発達障害の場合はここに計算数値を記載して貰いますが、うつ病の精神疾患はそもそも検査結果などが存在しないのでその場合は空欄でも問題ありません。

 

キ 福祉サービスの利用状況

障害福祉サービスの利用状況はここに記載して貰います。ヘルパーを利用している、就労継続支援B型を利用している等は全てここに記載します。

 

⑪ 現症時の日常生活能力

ここも大事な点で日常生活能力及び労働能力の両方を記載します。よくあるのは、どちらかのみ記載されてるケースです。どちらかしか記載が無いと不備で返戻される可能性があるのでしっかりと両方記載があるか確認します。以前経験したのが、「周囲のサポートがありどうにか日常生活がおくれている」という表現で不支給の案件を見たことがあります。これは、肯定的な表現になっていますが、裏を返せばサポートが無ければ日常生活の維持ができないにも関わらず不支給という結果でした。年金審査では言葉尻を捉えられるというのもこの様な点からそう考えられるのかなとは思った事例です。

⑫ 予後

 

ここも重要でここが未記入なら返戻されます。なので、記載の有無を確認しますが、大体不詳などの表現になると思います。

 

最後に

 

以上が診断書の両面の解説になります。診断書は医師の専権事項なので診断書をこのように書いて欲しいというのはダメです。しかし、完成した診断書が間違えているのかどうかのチェックができないのも支援者としては問題です。ここでは、最低限度の精神疾患の診断書の説明をしています。これらを参考に請求者のサポートを実施して頂けたらと思います。