治癒した神経症で初診日特定 うつ病、事後重症請求にて障害厚生年金2級の事例
先日、心疾患で障害厚生年金3級受給中の方のうつ病での障害厚生年金の請求が完了したご報告しましたが、無事障害厚生年金2級で受給決定しました。
既に心疾患で障害厚生年金を受給している状態で精神疾患の障害年金を受給できるの?と疑問に思うかもしれませんが、可能です。正確に言うと、心疾患の障害年金と精神疾患の障害年金との選択になりますが…。その選択は精神疾患の障害年金申請時に「年金受給選択申出書」を提出することで完了します。正直、この事例は精神系の障害年金でも3級の可能性もあり、もし3級なら心疾患と初診日の時期も変わらないので金額も同じなので、どちらを選択しても結論は同じでした。しかし、心疾患の障害年金は今年更新の時期で、仮に精神疾患の障害年金の決定がおりると最低でも1年は支給されることから今回請求した精神疾患の年金を選択するという「年金受給選択申出書」を作成しました。
本事例の経過説明
請求人は業務上のストレスから体調不良を訴えて内科受診(A病院)しました。そこでは精密検査等が行われたが異常なしとのことで神経症と診断されその場は終わりました。その後、業務が一層忙しくなり、精神的に不安定になりつつ、身体に違和感を覚え、ついには心疾患で意識喪失してしまいました。そこで、緊急搬送されたのがB病院です。B病院に通院しつつも心疾患の原因は不明で非常に不安な日々を送る中で仕事を辞める事を決意しました。仕事を辞めても体調に改善が見られず、心疾患の原因も精神的なものではないかと初めて精神科(C病院)を受診しました。精神科は1.2か月通院しましたが、改善が見られなかったので自然中断になります。その後心疾患の原因が判明し治療をするが、いつ心臓発作が起きるか分からない不安から精神的にダウンしてしまい1年ぶりに別の精神科(D病院)を受診し現在に至ります。そこではうつ病と診断されました。
初診日の特定
心疾患の初診日はB病院として、そこで受診状況等証明書を作成しています。
では、精神疾患の初診日はどの病院になるのでしょうか?
請求人的にはA病院が厚生年金加入中でもあり有利ですが、病名は神経症でかつ受診状況等証明書上は、神経症は治癒していると記載されていました。
C病院は精神科で病名は不安障害と診断されていましたが、国民年金加入です。もし、C病院が初診日となると障害基礎年金の請求になるので請求人にとっては不利になります。
D病院は確実に初診日になりますが、障害認定日が到来していないので論外になります。
障害年金の初診日は「その障害で初めて病院又は歯科医院に行った日」となっています。精神疾患は病名が変わる場合が多いので初診が神経症で請求障害がうつ病等でも神経症がうつ病の初診日と認められることは多々あります。
初診日の特定は第一には主治医の判断です。その主治医が判断した初診日を日本年金機構側の医師が審査して初診日を確定していきます。この事例では経過を説明すると初診日はA病院であると判断してくれたので、A病院を初診として請求しました。
病歴・就労状況等申立書を活用して初診日を補強する
医師がいくら初診日はA病院と書いてくれたとしても、病歴・就労状況等申立書で初診日はB病院であると記載したので内容が矛盾してしまい初診日の特定ができなくなります。
そこで、重要なのは病歴・就労状況等申立書です。A病院に行った経緯、その後の経過、BCD病院に至るまでの精神疾患の様子を整理して記載していく必要があります。当然ながら嘘を書いてはいけませんが、事実に即して整理しながら書いていく必要があります。医師が作成する診断書のスペースは有限なので、当然そこに記載できないこと、医師が知らず本人しか知らない事実もあります。その様な内容を病歴・就労状況等申立書に記載して初診日を補強していく必要があります。
心疾患と精神疾患の相当因果関係
今までの経過を見ると業務上のストレスから心疾患と精神疾患が生じています。もし、それらに因果関係が有れば初診日はB病院で進める事ができるかもしれませんが、そう甘くはありません。
相当因果関係が「これ」があるから「そうなる」という単純な因果関係の話ではなく、医学的に高確率で発生する場合に相当因果関係があると判断します。そのため、うつ病だから心疾患が発生するとは医学的には高確率では言えないので相当因果関係は無しとなります。また心疾患があっても必ずうつ病になるわけではないので、この場合も否定されます。
仮に相当因果関係が認められると心疾患の初診日がうつ病の初診になるので初診日はB病院という事になり、話はスムーズですが中々上手くはいきません。
終わりに
この事例は行けても3級かな、それかC病院が初診日に変更となり基礎年金の請求かと考えていましたが無事障害厚生年金がおりた事例でした。
障害年金において初診日は重要で初診日が特定できないとそもそも年金請求ができません。障害年金の一番の山は診断書作成ではなく初診日の特定であると言っても過言ではなく、まさしくこの事例がそれでした。初診日をこつこつと特定していく面倒な作業ですが、それができないと前に進みません。初診日の特定で困られている方がいらっしゃいましたら是非ご相談ください。