知的障害で給料19万円・一人暮らしでも障害基礎年金2級取得の事例

中度知的障害で給料19万円・一人暮らしでも障害基礎年金2級が下りた成功事例です。

基本情報

 

年齢:請求当時45

手帳:療育手帳B2

障害:中度知的障害

生活環境:一人暮らし

服薬状況:無し

 

成育歴

 

大阪府内で生まれ、両親共にも課題があり幼少期は児童養護施設で過ごす。中学校入学に際して療育手帳B2を取得して養護学校(現在の特別支援学校)に進学する。養護施設・支援校でもトラブルは絶えず、ケンカや窃盗行為などを行い職員に注意を受けていた。

その後、高校も支援学校を卒業し、その後は大阪市内の会社に就職する。障害福祉との繋がりは社会人になり一人暮らしを始める頃には完全に切れてしまう。そのため、本来なら障害基礎年金を受給できる年齢になっても請求できず(本人単独では制度も知らず)現在までる。

仕事は単純作業なので反復練習で一定のレベルまでには達したが、その反面私生活では悪徳業者にだまされ数十万の絵を買わされたり、ギャンブルにのめり込み一時期数百万円の借金を背負ったりするまで追い込まれる。ここまで問題が大きくなり、それが会社の耳に入る、そこで再度障害福祉との繋がりが復活することになる。その中で金銭管理だけでなく日常生活の大きな課題が判明することになり、現在でも支援を受けながら就労しています。

 

年金受給可否に関する論点

 

① 勤続20年以上就労し、19万円まで給料が上がっていた。

② 日常生活に非常に大きな課題があるに関わらず、ヘルパー支援を受ける事無く一人暮らしをしている。

 

①について

障害年金は障害により日常生活に制限が加わる場合の所得補償制度です。そのため、安定的に就労している場合は知的障害であっても「日常生活が向上している」と捉えられる可能が有ります。そのため、請求時にレターヘッドに会社名を記載し「本人の就労状況について」という題目で就労状況を要約した書類を作成し提出しました(無論会社の許可を得て、法人印を押してもらう会社が作成した形式で提出します)。請求者側からすれば勤続年数は長いが、決して安定的に就労できていた訳はなく先に説明した日常生活の課題が有り、また仕事も障がい者雇用として保護的環境下に置かれ支援を受けながら継続できていたという内容で構成しました。ポイントは障害年金の目的に沿う形で書類を作成する点です。虚偽の内容を記載するのはダメですが、事実として仕事でも課題が多い場合はその課題はしっかり行政に説明していかないと分かりません。また現時点で給料が19万円あるが、過去の社会保険の標準報酬月額の記録を見る限り高い時は25万円ほどあったが、だんだんと減ってきていたので、その理由を会社に尋ねました。すると、本人のできる仕事量も減ってきたけど、どちらか言うと昇給は本人の能力向上で挙げてきたのではなく会社の業績に応じて昇給してきたので、最近会社の業績が悪いので減給傾向にあると教えてくれたので、それも「本人の就労状況について」内容に記載しています。安直な発想ですが給料が高い=労働能力が高いと捉えられがちなので、昇給には会社の考えがあったことを説明しました。

 

②について(日常生活に非常に大きな課題があるに関わらず、ヘルパー支援を受ける事無く一人暮らしをしている。)

障害年金は「障害により日常生活に制限が加わる場合の所得補償制度」です。端的に説明すると障害が有っても日常生活に制限が無いならば年金は受給できません。その日常生活能力の有無は診断書の内容で判断されますが、事実で判断されるケースもあります。それが、同居者の有無、つまり一人暮らしかどうかになります。

年金受給できない典型例が以下です。

診断書の日常生活のチェックは全体的に「できない」になっており、2級の基準にはあるが、一人暮らしをしているし、ヘルパーも使っていない場合です。厚労省は「日常生活能力が無いのにどの様に生活しているのだろうか?」と単純な疑問が浮かびます。そこで、その疑問を解決できる解答が診断書や病歴就労状況申立書に記載が無いと「障害はあるが、それが日常生活に制限が加える程度までに至っていない」と判断され不支給になります。

以下は実際の診断書の一文です。

日常生活は送れる状態ではないが、本人がヘルパー利用を拒否しています。精神疾患の方はこの様なケースによく直面します。

私も単身生活でヘルパーが必要なのにヘルパー利用していない方は利用をお願いしてもらっていますが、拒否されればどうしようもありません。その場合は拒否の理由と日常生活の状況を診断書や病歴就労状況申立書に記載します。それしか方法が有りませんし、この事例ではこれで年金受給ができました。

 

成育歴の聞き取りについて

 

請求者の親族は既に他界しており、請求者から過去の情報のヒアリングが十分できない中で請求人が以前生活していた児童養護施設から過去の情報を得ることができました。情報量は多くはなかったですが、情報収取ができ診断書や病歴就労状況申立書の一部に活用できました。長期に渡る精神障害者の診断書作成を阻むのは記録・記憶の喪失です。知的障害や発達障害は出生から現在までの生活歴・学歴・就労歴を病歴就労状況申立書に記載しないといけませんが、その期間が長期になるほど情報取得が難しくなります。

そこで、あきらめてはいけません。少しの手がかりも活用していきます。幸いこの事例では児童養護施設利用者だったのでそこから情報が取れました。請求者を支援する支援者は是非諦めに小さな可能性にかけて行動してみてください。