「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善に関する法律」
第8条 均衡待遇に関して
同一労働同一賃金は同一労働同一賃金法があるわけではなく「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善に関する法律」(「パートタイム労働法」)が根拠法でその中の8条、9条が基になっています。
8条は均衡待遇規定、9条は均等待遇規定を定めた条文と言われ、これにより正規非正規の待遇格差のチェックが行われます。(厳密にいえば比較対象は正社員ではなく通常の労働者で非正規社員は短時間・有期契約労働者になります。正規非正規の関係は諸説ありますが、同一労働同一賃金の関係では通常の労働者は正社員、勤務地限定正社員、無期契約のフルタイム労働者がそれにあたります。非正規社員はフルタイム有期契約社員、短時間有期契約社員、短時間無期契約社員が該当します。ここでは、通常の労働者は正社員として表記し、非正規社員は短時間有期社員等と表現します。)
均衡待遇規定は正規・非正規の間で①業務の内容、業務に伴う責任の程度 ②職務の内容・配置の変更の範囲③その他(以下「職務の内容等」と略)の事情を考慮して不合理な待遇差の禁止する趣旨です。つまり、正社員と非正規社員の間で職務等の内容の違いに応じて待遇を決定しろという事です。因みに同一労働同一賃金の特徴は賃金・賞与に均衡・均等が求められるのではなくそれ以外の労働条件、例えば割増賃金率の違い、有給休暇日数の違い、退職金制度の有無、休暇日数等労働条件全般にわたり均衡・均等が求められる点に注意が必要です。
例えば①業務の内容が異なり、②職務の内容・配置の変更の範囲もなく、特筆すべき③その他の事情もない場合には正規非正規間の均衡待遇は求められないことになります。このケースの代表例が大阪医科薬科大学事件です。正社員には4.6か月分の賞与が支給されたが、アルバイトには賞与が支払われずそれが違法であるとアルバイトが訴えましたが、結果正社員とアルバイト社員の職務の内容等の違いからアルバイトに賞与を支払わなくても不合理ではないと判断され会社側が勝ちました。
では、職務の内容等が少しでも違えば正規非正規の待遇差が認められるのかといえばそうではありません。大阪医科薬科大学事件と同時期に出された日本郵便事件では職務の内容等が違っているのに扶養手当・病気休暇・夏季休暇・年末年始手当等の項目にて労働者側が勝ちました。(基本給等は不合理と認められませんでした。)
この違いは職務の内容等の違い、手当の目的、労使交渉の過程など様々な要因から導き出されます。大阪医科薬科大学事件は正社員とアルバイトの職務の内容等が全く異なると認定され、正社員には賞与があるが、アルバイトには賞与がないという極端な待遇差が不合理ではないと認めました。裏を返すと職務等の内容の違いがあまり見られない場合、アルバイトに賞与を支払わない場合は不合理と判断される可能性は十分にあります。ここは非常に重要なポイントで職務内容に応じた労務管理を行わないと会社は痛いところで足をすくわれる可能性もあります。