キャリアアップ助成金(諸手当制度等共通化コース)法定外健康診断実施で38万円の助成金

  キャリアアップ助成金で正社員化すると57万円という正社員コースは有名ですが、キャリアアップ助成金は正社員コース以外にも使い勝手がよい助成金があります。その一つが諸手当制度等共通化コースの中の法定外健康診断実施コースです。

元々諸手当制度等共通化コースと法定外健康診断コースとは別扱いでしたが、数年前に諸手当制度等共通化コースに吸収されました。この助成金は端的に説明すると就業規則を変更して正社員と同じ手当を非正規労働者に支給すると助成される制度です。ここでは手当ではなく法定外健康診断実施について解説します。考え方は正社員に通常実施する健康診断を就業規則の変更をして法定義務が課されていない非正規労働者に実施するというものです。

 非正規労働者とは?

キャリアアップ助成金を考える際には正規労働者(正社員)と非正規労働者の区別が重要になります。

この定義をはき違えると失敗するので非常に重要です。

正社員の定義は会社により様々です。例えば有期契約労働を正社員として定義しても法的には何ら問題有りません。しかし、キャリアアップ助成金上の正社員は有期契約労働者ではダメで、① 期間の定めのない労働契約を締結し②会社の所定労働時間いっぱい働く労働者であり③待遇も正社員として待遇がある事等が定義づけられています。なので、非正規労働者は正社員以外の労働者と考えれば理解が進むかもしれません。

 

諸手当制度等共通化コース(法定外健康診断実施)について

ここでは法定外健康診断実施についてのみ解説します。

この助成金は事業所単位での申請になります。事業所単位は雇用保険の適用事業所番号ごとの申請になります。もし、雇用保険の適用事業所番号が2か所あり、2事業所で導入すると38万円×2=76万円になります。

無論、1事業所のみでもOKです。

法定外健康診断とは?

法定外健康診断は上記の診断を指します。メジャーなのは()か(イ)ですが、(ウ)は胃がん健診だけを導入すればよいなら楽ですがa 基本健康診断も導入しないといけないのが手間です。

なので、()か(イ)の選択になると思います。制度導入は()か(イ)両方導入してもOKですし、どちらかだけ導入でもOKです。基本的にはどちらか一つ導入すれば事足るのかと思います。

法定外健康診断の対象者について

対象外労働者の概念を理解しておかないとこの法定外健康診断制度の導入はできません。以下の労働者に対してはそもそも健康診断が義務なのでその労働者にいくら健康診断実施してもカウントになりません。

なので、法定健康診断実施対象者以外の労働者に法定外健康診断を実施する制度導入に対する助成が本助成金の意義になります。

 

法定健康診断の対象者は①正社員②正社員じゃない無期雇用労働者で週の所定労働時間が30時間以上の者③1年以上の雇用契約を締結している有期契約社員で週の所定労働時間が30時間以上の者④1年以上の雇用継続が予定されている有期契約社員で週の所定労働時間が30時間以上の者⑤1年以上雇用継続している有期契約労働者で週の所定労働時間が30時間以上の者が対象になります。なので、法定外健康診断の対象者は上記①~⑤以外の労働者になります。

 

ただし、それ以外で対象を絞れば適用範囲が拡大します。例えば週1日しか就労しない

短時間労働者に対しても健康診断を実施しないといけなくなるので週20時間以上という形で下限を設定するのはOKみたいです。ただし、女性とか年齢で区分するのは認められないのでご注意ください。週20時間以上で区切るのはこの助成金の対象が雇用保険の被保険者を対象にしているのも根拠の一つになります。

法定外健康診断の実施時期

法定外健康診断単体の際には健康診断を実施すれば申請ができましたが、諸手当手当等共通化コースに組み込まれてからは以下の様な期間の縛りが付きました。

ややこしいですが、定期健康診断は定期健康診断実施の前日から起算して3カ月以上前に雇用されており、かつ定期健康診断を実施してから6か月以上経過しないと1人とカウントできません。また雇入れ時健康診断は雇い入れ時から6か月以内に実施しないと1人とカウントできません。以前は、その様な縛りがありませんでしたが、今は期間の縛りがあるので手間です。

 

この助成金の難しい点

① この助成金は既に法定外健康診断が実施されていたなら対象外になります。よくあるのが、ネットから拾ってきた就業規則を会社に導入していたがそこに法定外健康診断が既に導入されていた様なケースです。その場合はすでに法定外健康診断が導入されているので対象外です。

② 対象となる労働者の規定の仕方

規定の仕方を間違えると対象労働者がずれるので注意が必要です。

120時間以上の労働者として規定するのか雇用保険被保険者と規定するのか記載方法は議論が別れ場所です。

 終わりに

結構簡単そうに見えて考えないことがいけないことが多いのがこの助成金です。もし、自社だけでの導入が難しい場合は是非社会保険労務士にご相談ください