障害年金請求時の配偶者、子の確認のための戸籍の添付について

 

前回、外国人が障害年金を請求する際のポイントについて簡単に解説しました。外国人が障害年金を請求する際の手続きは基本日本人と同じですが、外国人特有の論点が有ることをお話ししました。

 

今回お話しするのも年金手続きにおいては避けては通れない論点で、「外国人に保険事故が生じた場合、外国人とその家族との親族関係をどの様に証明していくか?」、地味ですが重要な論点です。

これは障害年金に限る話ではなく老齢、遺族でも共通する項目になります。

 上記の様なケースで日本人の場合は被保険者とその家族(配偶者や子)の関係は戸籍謄本で親子関係を確認しますが、外国人同士の婚姻の場合は日本の戸籍が無いので、外国から戸籍に変わる資料を取り寄せる必要が出てきます。一方、日本人と外国人の結婚の場合は戸籍が作られるので、その戸籍をもって年金請求ができます。なので、戸籍に変わる資料提出の論点は外国人同士に結婚に関してのみの話になります。

  

障害年金において戸籍を提出するケース

年金手続き自体はマイナンバーを用いて申請が可能となっているので、マイナンバーのお陰で以前は提出していた所得証明や住民票の提出が不要になります。所得証明は20歳前の障害基礎年金請求の際の所得制限に抵触していないかの確認の為に、住民票は生計維持の確認の為に提出していましたが、年金請求書にマイナンバーを記載することで提出が省略されることになりました。

 

① 障害年金の加給年金について

加給年金は老齢年金や遺族年金にも共通しますが、障害年金の場合は障害基礎年金では子供の加算がつき、障害厚生年金の場合は配偶者の加算が付きます。

1. 配偶者の加給年金額 224,700円 65歳未満の配偶者

※老齢年金の場合につく振替加算等は障害の場合には付きません。

2. 子の加給年金額 子一人につき 224,700円(2人まで) 3人目以降は74,900

18歳になった後の最初の331日 までの子

20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態にある子

加給年金は障害等級2級以上の場合につきます。障害厚生年金3級の場合は配偶者の加入年金は付きません。障害厚生年金2級なら障害基礎年金もあるので、子の加算と配偶者の加算の両方が支給される仕組みです。

 

② 外国人同士の結婚の場合の戸籍に変わる資料について

日本の戸籍の代替書類として、戸籍の内容を網羅した外国の資料が必要になります。

私は社労士なので戸籍についてはあまり詳しくありませんが、記載されている内容は氏名・生年月日・出生地・婚姻の時期・本籍地等なので、少なくとも外国の資料もその様な内容が網羅されないと日本の戸籍としての代替資料としては機能しない可能性があります。

代替書類の名称は色々ありますが、分かり易い表現としては外国政府が発行した婚姻証明書がそれにあたると思います。しかし、この婚姻証明書を日本にある大使館が発行できるのか、それとも本国で取得しないと取れないケースなど様々あります。

幸いにも以前が申請したケースでは既に婚姻証明書を取得されていたのでそれで申請しましたが、日本にある大使館で取得できないケースでは本国から取り寄せる等しないと手続きが進まなくなるので注意が必要です。

③ 戸籍の有効期限

少しややこしいですが認定日請求の際に添付する戸籍は障害認定日以降かつ請求日以前6か月以内である必要があり、事後重症請求時の戸籍は請求日以前1か月以内の戸籍でないといけません。これは日本の戸籍の話でありますが、戸籍の代替書類に関しても期限は同じになります。これは地味にポイントで、私が以前申請したケースは事後重症請求だったので1か月前の戸籍が必要でした。しかし、請求人が保有していたのは6か月前に取得した婚姻証明書だったので期限が過ぎていました。通常なら貯金の婚姻証明書を取得してきてと伝えるのですが、コロナ過の現状で大使館の機能が縮小して発効までに大幅に時間がかかる状況でした。またこのコロナ下では本国に戻ることもできず本国から郵送で取得も時間がかかる状況で、請求前1か月以内の戸籍の取得が非常に厳しい状況でした。

そこで、年金事務所に事情を説明して任意様式としてコロナの影響で最新の婚姻証明が取得できないと理由付きで申立書を作成し提出しました。結果としては、その申立書で婚姻関係の証明ができました。

 

④ 提出した書類について

書類の表現が国により違うでしょうが、日本語としては①出生証明書と②婚姻証明書を提出しました。

役割としは出生証明書でその人物が本当に存在していることを確認して、婚姻証明書で夫婦間の婚姻関係を証明できます。請求人は配偶者と子供がいたので、出生証明書は請求者、配偶者、子の3名分提出し、請求者と配偶者の婚姻証明書を提出しました。出生証明書には両親の記載が乗ってきたので請求者の子である証明はそれらで可能になりました。ただし、年金事務所からは追加書類として子の健康保険証などの添付が求められたので、追加で提出は行いました。

 

⑤ その他の論点

時々あるのが、日本国内のみで外国人夫婦が婚姻届けを提出して、本国では何の手続きをしていないケースです。私もこのケースの年金請求の経験はありませんが、この場合は夫婦の婚姻関係を証明する公的書類が存在しないので配偶者加算は得る事ができないかもしれません。

 

最後に

 

外国人が障害年金を受給できるという論点から少し細かい外国人同士の夫婦間の証明に関するお話を行いました。日本人同士、または夫婦どちらかが日本人なら戸籍は有りますが、外国人同士なら戸籍が無いのでそれに代わる書類を提出する必要があります。通常なら時間をかければ取得できますが、このコロナ下で外国への往来などが制限される中で出現した論点でした。

私の経験的に年金機構も柔軟に対応してくれる可能性はあるので、もし、悩まれているなら年金事務所や障害年金に精通した社労士に相談してみる事をお勧めします。