歯周病疾患健診で30万円 高年齢者評価制度等雇用改善コースを活用していますか?

 65歳越雇用推進助成金は65歳超継続雇用促進コース(定年延長等をした際の助成金)や高年齢者無期雇用転換コース(高齢者を無期雇用に転換する)、高年齢者評価制度等雇用改善コースの3つで構成されていますが、高年齢者評価制度等雇用改善コースの積極的な活用例は聞きません。行政の担当者からも「今年に入りまだ一件も申請が無い」との話を伺いました。以下では、① 高年齢者評価制度等雇用改善コースの制度概要を説明し、②人気が無い理由とこの助成金の利点について説明していきます。

 

① 高年齢者評価制度等雇用改善コースとは?

高年齢者の雇用の促進を図るための雇用管理制度の整備(賃金・人事処遇制度、労働時間、健康管理制度等)に係る措置を実施した事業主に対して助成金が支給される制度になります。雇用管理制度の範囲は広く以下の内容が対象の高年齢者雇用管理措置の例になります。

[高年齢者評価制度等雇用管理改善コース]パンフレットより抜粋

 

お勧めの高年齢者雇用管理措置

 

比較的手ごろで進める事ができるのが「健康管理制度の導入」です。

具体的に「生活習慣病予防検診」を導入して労働者に一つ以上の検診を実施します。対象の検診は下記にある検診になります。一度にすべての検診を導入して労働者に一つ選んでもよいですし、歯周疾患検診のみを導入してその一つを毎年実施するのでも大丈夫です。

比較的費用負担がかからないのは歯周疾患検診なので、もし対象労働者が全員受診しそうなら歯周疾患検診のみを導入して進めるのも一つの方法かと思います。

生活習慣病予防検診

(a)胃がん検診 胃がんの発見を目的に、問診、胃部エックス線検査及び胃カメラ検査等を行うもの

(b)子宮頸がん検診 子宮頸がんの発見を目的に、問診、視診、子宮頸部の細胞診及び内診等を行うもの

(c)肺がん検診 肺がんの発見を目的に、問診、胸部エックス線検査及び喀痰細胞診等を行うもの

(d)乳がん検診 乳がんの発見を目的に、問診、視診、触診及び乳房エックス線検査(マンモグラフィ)等を行うもの

(e)大腸がん検診 大腸がんの発見を目的に、問診及び便潜血検査等を行うもの

(f)歯周疾患検診 歯周疾患の発見を目的に、問診及び歯周組織検査等を行うもの

(g)骨粗鬆症検診 骨粗鬆症の発見を目的に、問診及び骨量測定等を行うもの

 

高年齢者雇用管理措置の範囲は広いですが、以下の点で注意が必要です。

 

内容の観点

・法令上で事業主に義務付けられた制度の導入

・労働協約又は就業規則に定めない制度の導入又は改善

・高年齢者の雇用の機会の増大を目的とすると認められない場合

・高年齢者(55歳以上)以外の従業員にも適用され、高年齢従業員に対する拡充が認められない制度の導入又は改善 ⇒これは注意が必要です。つまり、他の労働者にも適用される制度は対象外ということです、例えば③の在宅勤務制度を導入又は改善を取り組んでいるが、その在宅勤務が全労働者を対象とする場合は高年齢者雇用管理措置としては認められないことを意味します。もし、在宅勤務で進める場合は「55歳以上の高年齢者で労働者(正社員を範囲を定めるのはよいと思います)が希望する場合は在宅勤務を許可する」等の規定の仕方が必要になると思います。

 

 効果の観点

・導入又は改善した制度が高年齢者に適用される見込みがないと認められる場合

・雇用管理整備計画書及び提出された資料から、効果が明確でないと認められる場合 ⇒

これについては、作文力が求められると思います。今会社にこの様な課題があり、その課題を解決する為に高年齢者雇用管理措置を活用するという流れで文書作成していく必要があります。

  経費及び日程の妥当性の観点

 ・支給対象経費に該当する経費が見込まれない場合

 ・支給対象外経費との区分が明確でない経費が含まれる場合

 ・雇用管理整備計画の開始日より前に措置の実施に係る契約又は発注を行っていると認められる場合

経費関係は高年齢者雇用管理措置の導入費用であると明示した見積書と契約書を作成すれば、この部分で失敗することは無いと思います。あとは、助成金の計画届提出前に就業規則変更の契約(高年齢者雇用管理措置に関しての就業規則変更の契約)をしている場合等は対象外になるので注意が必要です。

 

② この助成金の人気がない理由

  この助成金が低調なのは以下の理由によると想像しています。

雇用管理制度(健康づくりコース)の存在

雇用管理制度(健康づくりコース)は労働局で扱っている助成金で、この助成金は正社員を対象に雇用管理制度(健康づくり・メンター制度・研修)等を導入して、その後失業率が一定程度に低下すると助成金が受給できる制度です。この雇用管理制度で導入する健康づくりが高年齢者評価制度等雇用改善コースの健康管理制度の内容とほぼ被っているため、雇用管理制度(健康づくり)で導入している状態で高年齢者評価制度等雇用改善コース(健康管理制度)の導入が認められないからと考えます。雇用管理制度も色々な制度導入ができますが、多くの会社は健康づくりコースを選択しています。そのため、高年齢者評価制度等雇用改善コースの方で健康管理制度を選べないので普及が今一進んでいない気はします。

  助成金額が他の助成金より少ないのと、支給申請までに1年かかる。

高年齢者評価制度等雇用改善コースは社労士に就業規則変更などを委託した際の経費助成の助成金です。経費助成の金額は65歳超継続雇用促進コースと同じように金額に制限がありませんが、高年齢者評価制度等雇用改善コースはかかった経費の60%が補助される仕組みになります。ただし、初回に限りはいくら経費が少なくても50万円と見積もり経費助成するので50万円×60%(生産性の要件を満たすなら75%)=30万円は補助されます。しかし、類似の雇用管理制度は57万円なのでその27万円の差があります。

あと、計画届提出から約1年で支給申請までこぎ着ける事が可能ですが、その期間が長いとの意見もありますが、雇用管理制度が1.5年程かかることを考えると期間は若干短いと思います。

 

 高年齢者評価制度等雇用改善コースの良い点

雇用管理制度は健康管理制度導入後、1年間の雇用保険被保険者の資格喪失者数で受給の可否が決まります。一方で高年齢者評価制度等雇用改善コースは離職者数がいくらいようが関係ありません。60歳以上の雇用保険被保険者が1名以上存在してその労働者に措置を実施すれば申請ができます。そのため、高年齢者評価制度等雇用改善コースの方が申請の確実性は高まります。

 

 最後に

この助成金は雇用管理制度に押されて人気は無いですが、活用の仕方では確実に30万円は助成されます。また、雇用管理制度で「健康づくり」を選択していなければ高年齢者評価制度等雇用改善コースの併用は可能な場合があります。例えば雇用管理制度で研修、高年齢者評価制度等雇用改善コースで健康管理制度の様な形です。高年齢者評価制度等雇用改善コースは60歳以上の労働者を対象にしているので、雇用管理制度とのすみ分けはできるので是非両方活用して従業員に対して手厚い福利厚生を提供するのも労務管理の手法であると考えます。