障害年金の初診日とは?
障害年金においての初診日は、「障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」と定義づけされています。この初診日の定義についてポイントは「障害の原因となった傷病」の範囲がどの範囲の傷病まで含まれるのかという点です。ある程度障害の原因が特定できる傷病が一つだけなら特定は比較的容易でしょうが、例えば、該当する傷病が複数あるケース等ではどの傷病が初診日なのかという問題が生じます
「初診日なんていつでも良い」と考える人もいるかもしれませんが、障害年金の初診日が以下の役割を示すことから行政は厳密に特定してきます。初診日が特定されない場合は最悪の場合返戻や不支給となる可能性もあります。
障害年金において初診日は以下の3点の役割を示すことから厳密な特定がなされます。
初診日の役割
① 請求できる年金が決まる。
② 保険料の納付要件の確認
③ 障害認定日が決まる。
① 請求できる年金が決まる。
障害年金は初診日に加入している保険から年金が支給されます。
年金制度に一定の理解がある人なら上記の表を見るとピンと理解できますが、障害年金は0歳から65歳までの障害に対応できるように制度設計がなされています。
国民年金と厚生年金で保険給付に大きな違いがあるので、初診日がどこに属するかは請求者にとっては重要な問題になります。
② 保険料の納付要件の確認
20歳前の障害基礎年金以外、障害年金の請求において保険料の納付要件を満たさないと請求ができません。この保険料納付要件は非常に重要でこれをクリアしないと、いくら病状が重かろうが障害年金は絶対に受給できません。逆に保険料納付要件さえ満たしてさえいれば、将来的に病状が悪化すれば受給できる可能性はあります。保険料の納付要件で障害年金の請求ができない事例を私もよく見てきました。そのため、保険料は納付するか、納付が厳しい場合は免除手続きを行うなど対応は必ず求められます。
③ 障害認定日が決まる。
初診日から1年6か月経過した日を障害認定日です。障害認定日の時点の「障害の状態」で障害年金の受給が判断されます。障害認定日は障害の定義とも関係しますが、肢体切断や脳死状態に陥る人工透析を始める等いきなり障害の状態に陥るケースもありますが、多くの障害は、初めは病気やケガからスタートしそれが、長期に渡り継続することで固定化し障害化するという流れが一般的かと思います。そのため、いつどのタイミングで障害化するかは病気、ケガで様々です。もし、個別の判断で障害化している、していないと判断すると事務負担が膨大になり行政はパンクしてしまいます。そこで傷病やケガが障害化しようがしていまいが、とりあえず初診日から1年6か月経過した時点で判断する日を設けることで個別の障害化の判断を回避することを可能にしたのが障害認定日という制度です。しかし、先ほど少し説明した肢体切断や脳死状態などあからさまに障害状態化している場合は、その時点を障害認定日とする例外も設けています。
行政側は障害認定日を設けることで事務負担の軽減が図れる反面、請求人側からすると初診日が特定されると否応なしにも障害認定日が決まり、その時点で障害年金を受給できる「障害の状態」に該当していなければ障害年金は受給することはできません。
初診日の具体例
① 初めて診療を受けた日
② 同一傷病で転医が有った場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日
③ 過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日
※治癒したと認められない場合は継続しているとし同一傷病扱いになる。
④ 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
⑤ 障害の原因となった傷病の前に相当因果関係が認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
⑥ 先天性の知的障害(精神遅滞)は出生日
※知的障害を伴わない発達障害(ASD、ADHD等)は初めて診療を受けた日
⑦ 先天性心疾患、網膜色素変性症等は具体的な症状が出現し、初めて診療を受けた日
診療初期段階から明確な傷病名がおり、それが一貫して継続している場合は初診日で困るケースは少ないと思いますが、実際は傷病名がコロコロ変わることは多いです。
特に精神疾患はその傾向が強く、いきなり初期段階で「うつ病」と診断されるケースは少なく初めは自律神経失調症や原因不明の場合が多いです。
この場合、上記で活用できるのは④か⑤でこれを活用して初診日を特定していきます。
例えば初診の時点で診断された自律神経失調症とうつ病との間に相当因果関係があれば自律神経失調症で初めて診療を受けた日がうつ病の初診日になりますし、もし相当因果関係が認められない場合はうつ病に関して診療を受けた日が初診日となります。