就労状況についてのヒアリング項目についての続きです。

 障害年金は就労している事実で不支給となる制度設計にはなっていません。しかし、就労ができている以上障害が日常生活に著しい影響を与えているとはいえないと結論付けられて年金不支給となるケースをよく目にします。

特に精神系の障害年金は身体障害の様な客観的な検査項目がなくあくまでも医師の主観で日常生活の程度が決まるので、診断書上の日常生活の程度と就労している事実との間で整合性がとれず不支給となるケースがあります。

 

そこで、私が就労している方の精神系の障害年金をサポートする際には診断書の中身と就労の事実が矛盾しない様に書類を整えます。その際に重要なのは就労状況についてどのような配慮を受けているかです。極論言ってしまえばいくら障害が有って日常生活に制限が加わっても配慮無しで健常者の様に就労しているならば障害年金は受給できません。理由は配慮無しで就労できるということは日常生活能力が一定程度あると判断されたからです。

その様に判断されないためには、仕事はしているが、会社から○○の配慮を受け周囲のサポートがあり就労継続ができていると客観的な証拠・証言を基に論じていくしかありません。その証拠が例えば労働契約書(以前はフルタイムだったが、現在は短時間就労である。労働時間が短い、労働の対価である賃金が低い(例えば最低賃金、最低賃金を割っている等)、勤怠状況(給与明細、出勤簿、賃金台帳等)であったり、証言が会社の人からの就労状況のヒアリングだったりします。

 

前置きが長くなりましたがここでは引き続き就労状況についてのヒアリングポイントについて説明していきます。

 

2. 作業時の様子(職場の人や支援者、本人からヒアリング)
① 職場であいさつ・お礼・返事がきちんとできるか?

② 職場での意思疎通の状況について

(言葉遣い、言葉のキャッチボール、非言語コミュニケーション(ジャスチャーや場の空気を読むことができる)、指示語への理解、協調性があるか等)

③ 同時並行で複数の作業をこなすことができるか?

優先順位を考えて作業ができるか?

④ 共同作業ができるか?

(共同作業では気が散り集中できない、同僚に話しかける、相手の動きにあわすことができない。特定の人、特定の作業しかできない、輪を乱してしまう)

⑤ 困ったら相談できるか?作業報告が可能かどうか?
(相談せずに勝手に進めないか?)

⑥ 職場でのルールの理解

⑦ 遅刻、早退時などの連絡ができるか(自力でできるか、家族がしているか等)

 

① 社会人としての基本ですが、障害の影響でできない相談者もいます。挨拶ができない=仕事できない訳はないですが、社会人としての基礎で診断書の社会性にも関連してくる所なので聞いていて損はありません。精神系の人は挨拶できない場合、返事、お礼が言えない、声掛けされても何を話してよいのか分からず固まる人も多いのでそこを確認することは重要です。

 

② これも重要で言葉のキャッチボールができない、一方通行になりがちな人は多く存在します。仕事をする上でコミュニケーションが取れないと仕事が円滑に進みません。

もし、相談者がコミュニケーションを苦手としているならば、実際の職場ではどのようにして意思疎通を図っているのか確認します。例えば口頭の指示では理解追い付かないので箇条書きで手順を書く、一日の予定をホワイトボードに時系列に書き込む等も考えられます。また、相談者はコミュニケーションが苦手なので返事の声が小さい等事前に全体周知しておくのも一つの考えです。この様に相談者は現実に就労しているのでコミュニケーションが苦手ならば苦手なりにどの様に職場で意思疎通を図っているのか確認するだけでも配慮事項等は見つかります。

 

③ 健常者でもマルチタスクを苦手とする人は多いですが、相談者も同様に苦手とする場合が多いです。そのため、二つ以上の仕事を頼まない、作業中は声をかけない等の会社も存在します。これも意識しないと気付きませんが立派な配慮になります。

 

④ 協調的に作業できない相談者は存在します。仕事中私語をして手が動かない、周囲が気になり作業ミスが多い等です。この様な事実は表面的には仕事にはついているが、十分なパフォーマンスを発揮できていないと考えることは可能です。

⑤ 困ったら相談する、当然のことのように思いますが相談者の中には相談ができない人も存在します。理由は様々で「次何をしたらよいか分からない」「自分が何をしているのかが分からない」「相談する相手が分からない」「相談する相手は分かるが相談のタイミング(声掛けのタイミングが分からない)が分からないので相談できない」が考えらます。

会社も相談者が相談できないことを想定して「定期的に声をかける」「相談相手を事前に決めておく」「相談、報告の時間を一日のスケジュールであらかじめ決めておく」等配慮しています。この点も何が配慮なのか事前に理解していないと見過ごすポイントなので注意が必要です。

 

⑥ 職場でのルールが守れない人も一定数います。例えば休憩場所、休憩時間を守れない。だれか見ていないとサボってしまうなどです。会社もその様な事実が有れば指導はしているのでそれでも守れない場合は仕事はしているが、十分なパフォーマンスを発揮していないと考えることは可能です。

 

⑦ 遅刻・早退しても謝れない人や遅刻の連絡が入れれない人もいます。

この様な場合もパフォーマンスが十分でないと考えることもできますし、大目に見てくれている(配慮?)という側面で捉える事も可能です。