事例紹介

Oさんのケース

障害名 知的障害

請求する年金:20歳前の障害基礎年金

年金請求方法:遡及請求

論点

 

障害認定日(20歳時点)の診断書がなく、現時点(22歳)の診断書しかない状態で遡及請求(障害認定日まで遡り)が認められるか?

 

相談概要

 

① 福祉施設からの相談

② 特別支援高校を卒業し障がい者福祉施設で就労訓練を継続していた。

③ 本人は障がい者施設と家族以外障害福祉サービスとの接点がなく、20歳に到達しても障害年金制度を知らずに22歳頃を迎える。

④ 就職を控え、最近知った障害年金の請求をしたいということで相談に来られる。

 

成育歴等特記事項

 

① 兄弟が多く出生と同時に障がい者施設へ預けられる。

② 幼少期はほぼ障がい者施設で生活する。

③ 小学校から特別支援学校に通学しており、高校進学を契機に母親や兄弟と同居することになる。

④ 学校は登校拒否気味で3年間を過ごす、その後、障がい者施設も通所拒否が多かった。

⑤ 母親も認知症のきらいがあるので、成育歴等のヒアリングが十分にできない。

 

 

具体的な手続きの方向性の検討

 

① 母親も認知症の傾向があるので成育歴等の詳細なヒアリングができないので、当時本人が入所していた施設に連絡をし、入所時の状況などについてヒアリングを行う。

② 認知症の母親からも丁寧にヒアリングし、情報を合わせて成育歴等を仕上げていきます。

③ 日常生活の状況は、本人や支援機関からもヒアリングし文章を作成します。

④ 知的障害は傷病の状態に変化がない特性を持つ障害なので、20歳時点の診断書が無くても障害認定日(20歳)での請求が可能な場合があります。本事例もこの考えを用いて事後重症請求分の診断書と療育手帳を用いて認定日請求という形で請求しました。

※東京地裁平成25.11.8は「28歳時に知的障害を障害名として20歳前の障害基礎年金の請求を行い、20歳の時点に遡り受給権が発生した(20歳の時点の診断書はないが、28歳の時点の診断書やその他の資料を基に認定された)」事例です。

 

結果

 

遡及請求(20歳まで遡り受給権が発生)が認められ、20歳前の障害基礎年金2級が支給されました。遡及分も合わせて200万円ほど入金がありました。

 

 

補足

① 老舗の入所施設は、当時は公の機関が管理し現在もその名残で管理していたりするので書類管理がしっかりしており、過去の情報が残っているケースがあります。その情報開示の手続きは施設のルールによりますが、きちんとした開示手続きを踏めば当時の記録を開示してくれたり、関係者から話を聞けたりすることがあるので、成育歴が分からないからと言って年金を諦めるのは早計です。ただ、その様な努力もせずに、周囲の人間がフィクションで文章を作成するのはダメなので、過去の情報を集める努力をしましょう。努力すれば必ず何か手掛かりは見つかります。

② 別件で20歳到達から30年ほど経過した診断書を用いて遡及請求を行いましたが、ダメでした。理由は「診断書がないため」と当然ながらの理由でした。一応療育手帳は20歳前から保有していた記録は取り寄せ、病歴就労状況申立書も20歳前後はしっかり書き込みましたがダメでした。

 

参考資料

 

二〇歳前に初診日のある精神遅滞により二〇歳に達した日において法定の障害等級に該当する程度の障害の状態にあることを理由とする障害基礎年金(国民年金法三〇条の四第一項)の裁定請求を黙示に却下した裁定処分が取り消された事例

(東京地判平2511・8)