知的障害で支給停止事由消滅届 20歳前障害基礎年金再開可能か?

  先日、知的障害を根拠に支給停止事由消滅届を提出して20歳前の障害基礎年金の再開を試みました。支給停止事由消滅届の審査期間は通常の裁定請求より長く、確実に3.5カ月はかかります。

  結果は年明けになりますが、無事2級の再開が可能か以下で検討していきます。

 

本事例の紹介

 本事例は中度知的・てんかんでの障害年金請求のケースでした。中度知的障害で障害年金が不支給?と疑問に思われるかもしれませんが、上手く申請しないと本来は受給できるケースでも不支給になるという典型的なケースでした。

 20歳時点の請求について

  請求人は先天的な脳疾患で「てんかん発作」などが頻発しており、幼少期から知的障害も判明していました。当然ながら特別児童扶養手当の受給もしており、20歳の時点で20歳前の障害基礎年金の請求を無事認定されました。しかし、当時の主たる請求障害は知的障害ではなく「てんかん」でした。知的障害に関しては療育手帳の提出と診断書の表面のア現在の病状又は状態像に知的障害の記述がありました。障害年金の審査でポイントになる日常生活能力の判定の平均値は1.28で日常生活の程度は⑵で、当時は「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が発表前でしたがこの程度で障害基礎年金2級が下りていた事実に驚きました。障害状態認定調書によると認定医も日常生活能力の制限度合いは軽いが診断書全体を見ると2級相当であると認定されていました。初回は2年の有期認定と確定しました。

 

 更新時点の状態について

 2年後は別の病院に転院していたので、20歳時点とは異なる医師により診断書作成がなされました。

更新時点の診断書も請求障害は「てんかん」のみで、診断書の表面のア現在の病状又は状態像に知的障害の記述がある状態での申請になりました。日常生活能力の判定の平均値は前回より軽くなり1.14で日常生活の程度は精神障害が⑴と、なぜか知的障害にもチェックが入り⑵と記載がありました。更新時点は「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が施行されていた関係から当然ながら支給停止と認定されました。障害状態認定調書によると障害の目安は3級非該当とされ、不支給理由にはてんかん発作も発生していないこと、目安も3級非該当であることが挙げられていました。

 この事例でなぜ不支給になってしまったのか?

この事例でなぜ、更新時点で不支給となってしまったのでしょうか?基準に達しなかったといえば身も蓋もないですが、それ以外の要素としては障害年金の仕組みが十分に理解できていなかったからです。この事例は社労士等のプロが介在していなかった事例で、そもそも初回の請求時点で厳しい結果が予想できていましたが、どうにか初回は認定がりました。更新の段階で障害年金制度の仕組みを十分理解し、「てんかん」という障害年金上での立場を理解して「てんかん」ではなく知的障害で請求していたら支給停止にならずに引き続き年金受給できていたかもしれない事例でした。

「てんかん」の認定基準によると服薬により「てんかん発作」が抑えられていると支給対象にはなりません。服薬してもなお発作が発生している場合にその発作の程度や回数などで年金受給の可否が決まる他の精神疾患よりかは具体的な基準で認定されるのが特徴です。なので、発作が無い以上年金請求はほぼ不可能な事例でした。

 

支給停止事由消滅届について

今回は発作が生じていない「てんかん」ではなく知的障害で支給停止事由消滅届を提出して支給再開を目指しました。支給停止事由消滅届は支給停止状態の年金を再開する際に提出する書類で障害年金の場合は診断書も同時に提出します。過去に障害年金の受給権が発生していることから病歴就労状況申立書の提出や銀行口座等の再提出は不要です。

知的障害での請求なので知的障害により日常生活への制限度合いを丁寧にヒアリングし医師に診断書の作成を依頼しました。医師には「てんかん」ではなく「知的障害」の側面から診断書を作成して欲しいとお願いしました。その結果、日常生活能力の判定の平均値は3.0で日常生活の程度⑷で、単独2級の障害等級目安でした。ただし、当時雇用保険程度加入の条件で就労していたので診断書の就労欄に就労の状態はきちんと記載して貰いました。

この申請の結果は年明け頃にはなりますが、就労しているとはいえ中度知的障害者で目安も単独2級であるので2級の再開の可能性は非常に高いのではと現時点では考えています。

終わりに

この事例は先程も少し述べましたが、障害年金のプロが介在していたら2級での継続受給ができていた事例でした。中度知的障害者で頑張っても月9万円程度しか稼ぐことができない現状で年金が無いというのはどの様に考えてもおかしいです。仮に年金が受給できても月換算で15.5万円程度、年収換算しても180万円前後しかありません。同世代の平均所得の半分程度しかない現状で障害者の自立を謳っても全く説得力がありません。

金銭は労働の対価と言われればそれまでですが、障害によりその労働能力が阻害されているなら、その阻害程度分は何かしらの公的保証で賄う事は当然と考えます。その公的保証が障害年金になるのでしょうが、他よりの障害年金自体が制度の不知で受給が左右される現状があります。本事例の障害者は他にも多数存在していると思います。適切に申請すれば年金再開できる場合もあるので、年金のプロへの相談をお勧めします。