2021329日 「厚生労働省より障害年金の初診日証明書類のご案内」が公開されました。

これは、新たに通達が発表された訳ではなく平成27年に出された「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」を整理した資料になります。確かに平成27年に出された通達は文章のみで分かりづらさがあった分、今回公開された資料はチャート図などを利用し分かり易く説明されています。

「厚生労働省より障害年金の初診日証明書類のご案内」では主に3点の説明がなされています。以下ではその3点について説明します。

 

① 第三者証明

 

第三者証明は、「医療機関で診療を受けていたことについて第三者が申し立てることにより証明したもの」と定義されています。つまり、親族以外の第三者にこの時期に病院に通院していたことを証明してもらうということです。行政は平成27年の通達ではこの第三者証明の説明に半分以上ページを費やし説明していますが、実務的には厳しさを感じ得ません。そもそも、病院に通院していたことを態々第三者に話すことが有りうるのかという点と、仮に第三者に話していたとしてもそれを文章で証明してもらうハードルの高さにあります。まだ、親族なら証明可能でしょうが3親等以内の親族の効力は原則として認めないという点から第三者証明による初診日の特定は非常にハードルが高いと言わざる負えないと感じます。

 

1. 20歳前の第三者証明

第三者証明は20歳前と20歳以降で若干取り扱いが変わっています。20歳前に初診日がある障害基礎年金については、給付内容が単一であり、請求者が少なくとも20歳より前に、医療機関で請求傷病での診療を受けていたことが明らかであると確認できればよいことから、初診日を証明する書類が第三者証明のみの場合であっても、第三者証明の内容を総合的に勘案して、請求者申立ての初診日を認めるので20歳以降の第三者証明と比較して参考資料が不要となる取り扱いがなされています。

 

必要書類

Ⅰ 第三者証明 2名により第三者証明が必要

Ⅱ 受診状況等証明書を添付できない申立書

 

ただし、医療機関の医療従事者による第三者証明は1通でOK

 

2. 20歳以降の第三者証明

必要書類

Ⅰ 第三者証明 2名により第三者証明が必要

Ⅱ 受診状況等証明書を添付できない申立書

Ⅲ 請求者が申し立てた初診日に関する参考資料

例:診察券・入院記録・領収書・障害者手帳取得時の診断書

 

ただし、医療機関の医療従事者による第三者証明は1通でOK

 

② 初診日が存在する期間を証明する参考資料を用いて証明する方法

実務的にはこちらの方法で初診日を特定していく方が進めやすいと思います。一見すると難しそうですが、考え方はシンプルです。つまり、一定の期間に初診日があることを証明すればよいのです。例えば初診だと思っていた病院の前に通院していた病院が有った場合、少なくとも初診日は2番目に通院した病院より前にあります。これにより、終期が特定されたことになります。そして、2番目の病院より前に通院した病院よりまだ前に健康であったことが証明されれば、少なくとも初診は健康であったと証明された始期から2番目に通院した病院の終期の間にあることになります。これを通達では「初診日があると確認された一定の期間中」と称しています。

通達では、「初診日があると確認された一定の期間中、同一の公的年金制度に継続的に加入していた場合について初診日があると確認された一定の期間が全て国民年金の加入期間のみであるなど同一の公的年金制度の加入期間となっており、かつ、当該期間中のいずれの時点においても、障害年金を支給するための保険料納付要件を満たしている場合は、当該期間中で請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。」と記載されており、これにより初診日の特定が可能になります。

 

  1. 初診日があると確認された一定の期間中、同一の公的年金制度に継続的に加入していた場合

これは、「初診日があると確認された一定の期間中」が国民年金のみ、又は厚生年金のみである場合です

 

必要書類

Ⅰ 受診状況等証明書を添付できない申立書

Ⅱ 一定の期間の始期に関する資料資料

例:就職時に提出した診断書

人間ドックの結果→主に身体障害の場合

医学的知見に基づいて一定の時期以前には請求傷病が発病していないことを証明する資料

Ⅲ 一定の期間の終期に関する資料資料

例:2番目の病院の受診状況等証明書

障害者手帳の交付日

この考えの難点は始期の特定です。なかなか元気であったとの証明は難しいものです。特にメンタル面の証明は難しいと思います。精神疾患の場合は、診断書に記載されている初診時期の状況により始期を特定していかないと難しいように感じます。

  1. 初診日があると確認された一定の期間中、異なる公的年金制度に継続的に加入していた場合について

これは、「初診日があると確認された一定の期間中」に国民年金と厚生年金期間が混合する場合です。

必要書類

Ⅰ 受診状況等証明書を添付できない申立書

Ⅱ 一定の期間の始期に関する資料資料

Ⅲ 一定の期間の終期に関する資料資料

Ⅳ 請求者が申し立てた初診日に関する参考資料

例:診察券・入院記録・領収書・障害者手帳取得時の診断書

 

 

③ 初診日の記載された、請求の5年以上前に医療機関が作成したカルテ等を用意する方法

これも、よく分かりにくい表現で書かれていますが、つまり、「受診状況等証明書」の代わりに5年以上前に作成されたカルテに請求者申立ての初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができるという意味です。例えばカルテに傷病の発生時期は20歳の秋ごろと記載されていると初診日と認定されます。ただし、この考えは初診時にしっかりヒアリングがなされていないと採用できない方法になります。

 

最後に

平成27年の通達には最後に「初診日を確認する際の留意事項について ①から③の各項目に限らず、初診日の確認に当たっては、初診日の医証がない場合であっても、2番目以降の受診医療機関の医証などの提出された様々な資料や、傷病の性質に関する医学的判断等を総合的に勘案して、請 求者申立てによる初診日が正しいと合理的に推定できる場合は、請求者申立ての初診日を認めることができることとする。 また、初診日に関する複数の資料が提出された場合には、他の資料との整合性等や医学的判断に基づいて、請求者申立ての初診日を確認するものとする。」と記載されています。確かに今まで紹介してきたのは帯に短しタスキに流しでそれぞれ一長一短があります。例えば②より終期が特定され③で発病前後の状況が分かれば初診日が一定の期間内にあることの特定が可能になります。

この様に初診日特定は根気がいります。もし、初診日お悩みならぜひ社会保険労務士にご相談ください。