初診日を変更できる可能性
相当因果関係や治癒の概念を駆使すると初診日を変更できる可能性が有ります。それになんの意味があるの大部分の人は思いますが、この考えは障害年金を進めるにあたり非常に重要です。以下で少しづつ説明していきます。
障害年金において初診日は請求できる年金を確定する点で極めて重要になります。厚生年金加入中に初診日が有るなら障害厚生年金の請求になりますし、国民年金期間中に初診日が有るなら障害基礎年金の請求という具合に請求できる年金が決まります。
では、その初診日と認められる通院が過去に1度でもあればそれが初診日として認められるのでしょうか?
具体的な例で考えます。
20歳前に将来を悲観して精神科に通院したことがある。しかし、その通院は一度きりでヒアリングだけで終わった。その後大学を卒業し社会人になり10年程仕事をした後、仕事のストレスで通院を再開したケースを想定します。
このケースにおいて初診日はいつになるのでしょうか?
① 20歳前でしょうか? ② 社会人になってからでしょうか?
実際に障害年金の初診日として認定されるかどうかは①過去の通院歴、病状、本人の考えを総合的に②主治医が第一に判断を行い③最終的には行政側の認定医が決める形になります。なので、上記のケースでは20歳前に精神科に通院した経緯や診察でのやり取り等を総合的に加味して請求人自らがどのような方針で臨むのか検討します。そして、その旨を主治医に伝えて今回請求する障害年金の初診日を確定する流れになると思います。
初診日を法的に検討する
先程の例をもう少し法的な側面と医学的な側面に当てはめて検討していみます。
以下は初診日の具体的な例です。
① 同一傷病で転医が有った場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日
もし、20歳前の傷病と社会人になってからが同一傷病なら20歳前が初診日になります。しかし、20歳前の一度きりの通院で傷病名が確定されていない可能性が高いので同一傷病かといえば疑問が残ります。
② 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
上記事例はこの例が当てはまる可能性が有りますが、20歳前の傷病と社会人になった後の傷病が同一傷病かといえば疑問が残ります。もし、両者ともうつ病としても、20歳前のうつ病と社会人になってからのうつ病では原因が違うことから同一傷病ではないという結論になる可能性が有ります。
③ 過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日
過去の傷病(20歳前の通院)が治癒し再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療(社会人になってからの通院)が初診日になります。この例はこの事例に当てはまるかと思います。
治癒していたなら20歳前の傷病と現在の傷病と関係がなくなるので初診日が社会人になってからの通院になります。
因みにここでの治癒は医学的な意味での治癒を指します。もし、この医学的な意味の治癒を20歳前の傷病に当てはめる場合は現症の医師に治癒しているかどうかを判断してもらう必要が出てきます。
また、再発は前後の傷病が同じ傷病である場合に使う言葉なので、言い換えると前後の傷病が異なるならば再発ではなく全く別の傷病扱いになることも読み取れることも重要です。
医学的に同一傷病でない前後の傷病は全く別の傷病であるという事なので、そこをきっちり説明することで後発での通院日を初診日とすることが可能になります。
④ 障害の原因となった傷病の前に相当因果関係が認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
過去の傷病(20歳前の通院)と現在の傷病(社会人になってからの通院)に相当因果関係が有る場合、過去の傷病が現在の傷病の初診日になります。相当因果関係は前発の傷病から後発の傷病が発生することが医学的にも相当な確率で発生する場合に認められます。
相当因果関係は精神系の疾患同士なら相互に関係ありと認められるケースは多く、この考えは知っておいても損はありません。しかし、上記例では10年以上期間があいていることから相当因果関係は否定される可能性は高いのではないでしょうか?
治癒・相当因果関係の有無の活用方法
治癒・相当因果関係を活用することで初診日を変更できる可能性があることを先ほど説明しました。
一般の人からすると治癒とか相当因果関係とか何が違うの?という程度でしょうが障害年金ではそこの理解があることで請求の幅が拡大に広がります。
例えば治癒や相当因果関係の技法を駆使することで初診日の変更も可能になります。
上記の例で考えると、もし、特に治癒を主張することなく相当因果関係も「あり」手続きを進める場合初診日は20歳前になる可能性が有ります。20歳前の障害基礎年金の年金額は障害基礎年金と同じですが、支給停止事由などが定められており一般の基礎年金より不利になります。一方で社会人になってからの通院を初診日とすると障害厚生年金の請求が可能になり、基礎年金の請求より有利と考えられます。少しの障害年金の理解で結果が180度異なります。
また、後発の傷病では保険料の納付要件を満たさない等の理由で、20歳前の障害基礎年金が保険料納付要件を問われない点を利用して、あえてそちらで手続きを進めていく方法もあります。
どの技法を駆使すれば請求者が最大限有利になるか、その点が障害年金の面白い部分です。そのためには、色々な状況を想定できる経験を有していないと難しいかもしれません。