2.不合理な待遇差の点検、検討方法の全体像
ここでは具体的な不合理な待遇差を検討する具体的な手順について説明します。
まず用語解説を行います。
フルタイム:会社の中で一番長い労働時間のこと。例えば正社員の1日の労働時間が8時間ならフルタイムは8時間を指します。
フルタイム以外:上記の例で考えると8時間以内の労働時間帯を指します。当然ながらフルタイムの定義は会社で変わるのでフルタイム以外の定義も変わります。
通常の労働者:法的には正社員および期間の定めのないフルタイム労働者(無期雇用フルタイム)⇒一般的には正社員の事です。
有期雇用労働者:期間の定めのある労働契約を締結している労働者
短時間労働者:労働契約期間の有期・無期に関わらず1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者
⑴ まず、雇用している全労働者を社員タイプごとに区別していきます。
大きな社員タイプは以下の表に即する形で4タイプに分かれます。
⑵ その4タイプの中で実際に雇用している労働者の労働時間、給与支払い形態(日給時給等)等の項目で分けていきます。
⑶ 通常の労働者と比較対象労働者との①職務の内容②職務の内容、配置の変更の範囲が同じか違うかを確認します。実務では通常の労働者の選定は原告(比較対象労働者)が選択します。この選定は原告が全く知らないような雲の上にある労働者を比較対象労働者にするのではなく、多くは原告が知っている身近な同じような仕事をしている正社員を選択します。ガイドラインではすべての正社員の職務の洗い出しと非正規労働者との待遇の確認を謳っていますが、実務的には非正規社員と類似の業務をしている正社員の職務の洗い出しと待遇差のチェックをしていれば事が足ります。
(4)職務の内容についてのチェック方法
(4)-1 職務の棚卸作業
下記は正社員とパート社員との比較です。正社員とパート社員の具体的な業務内容を書きだします。下記の例では正社員の職務とパートの職務は重複している部分もありますが、正社員には工程管理業務があるので完全には職務の内容は一致しないことが分かります。今後同一労働同一賃金を考えるにあたりこの職務の棚卸作業は必須です。そして、この棚卸作業ができると仕事の値付けができるようになり、それができるようになると人事評価制度との連動が可能になります。
(4)-1 「職務の内容」の確認方法
下記は上記で棚卸した職務の内容から「職務の内容」の同一性を判断します。
例えば正社員とパートのキッチンスタッフを例に考えます。パートは調理のみ正社員はは調理、メニュー作成、人材育成などの業務が任されている例を考えると職種はともにキッチンスタッフで同じ、中核的業務も調理なので同じになりますが、責任の程度は正社員にはメニュー作成や人材育成等の業務が課せられていることから「異なる」結果となり、「職務の内容」は違うという結論に達します。
(4)-2 「職務の内容・配置の変更の範囲」についての確認方法
転勤の有無と職種の変更の有無で「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じか異なるか判断します。転勤といえば大袈裟ですが、転居を伴わないような移動、例えば複数店舗経営している小売業なら店舗間の移動も転勤に当たります。職種の変更はキッチン業務で採用されたがホールへの配置転換の可能性があるケースが該当します。なので、1店舗しかない会社で職種も限定されがちな場合は「職務の内容・配置の変更の範囲」は正社員と同じになる可能性が高くなるので注意が必要です。
下記の表は「職務の内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」についてまとめた表です。