1.不合理な待遇差の点検、検討方法
ここでは正社員と短時間有期社員等との間の①業務の内容、業務に伴う責任の程度 ②職務の内容・配置の変更の範囲③その他の事情(以下「職務の内容等」と略)違いをどの様にチェックしていくか説明します。ここは厚生労働省から発刊されている『不合理な待遇格差解消のための点検・検討マニュアル』を参考に抜粋しています。このマニュアルは最近の裁判実務でも活用されているチェック方法なので、同一労働同一賃金を考える際にはぜひ参考にして頂きたい資料です。
① 業務の内容について
a,業務の内容
業務とは業務上継続して行う仕事を指します。
業務の種類と従事している業務のうち中核的業務(職種を構成する業務のうち、その職種を代表する中核的なもの)が実質的に同一かどうかで判断します。
例えば販売の仕事で販売業務以外の時間に清掃業務を行っていたとしても中核的な業務は販売員と考えます。例えばタクシー会社を想定して正社員は運転手のみで短時間・有期社員が事務員の場合、短時間・有期社員の事務員の比較対象はあくまでも正社員の事務員でもし正社員の事務員がいないなら比較対象にならないことを意味します。
b.業務に伴う責任の程度
業務に伴う責任の程度は業務遂行に伴い行使するものとして付与されている権限の範囲・程度を指します。具体的には管理する部下の範囲、決算権限の範囲、役割、トラブル対応が求められるか、単独で決算できる金額の範囲など権限・責任・役割に紐づく項目全般になります。
例えば同じ販売員でも一方は店長で部下もいるが、一方は一般の販売員で部下もいない場合は業務に伴う責任の程度は異なると判断されます。ただ、早合点してはいけないのは部下の有無だけで見たら正社員と違うので業務に伴う責任の程度は異なると判断するのではなく部下はいなくても短時間・有期契約社員もクレーム対応するならばその部分では業務に伴う責任の程度は同じなので、この点は均衡待遇を強める要因になる可能性がある点です。よく勘違いされるのは1点でも違えば「職務の内容等」が違うので同一労働同一賃金の対象外であると思われる方がいますがそうではありません。違いがあるということは正社員と短時間・有期契約社員との間の均等待遇が求められなくなっただけで違いに応じた範囲で賃金・福利厚生等の労働条件の差に合理性が求められます。そのため、短時間・有期契約社員がいる会社は正社員との待遇差の確認をしたうえで何らかの手を打っていく必要があります。