うつ病での障害厚生年金 社会的治癒が認められ遡及請求で受給決定

 

2021430日に申請した障害厚生年金の結果が710日に出されました。結果は障害厚生年金2級が認められました。また社会的治癒も容認された結果、遡及請求(障害認定日まで遡り受給権が発生する)も認められました。

 

社会的治癒とは?

 社会的治癒は医学的には治癒していないが、社会的に見れば治癒したものと考え後発傷病を新たな初診日とする概念です。

この事例では2005年に約1年精神科に通院が確認され、年金事務所の相談記録にもその旨が記録されていました。その後精神科への再受診は2016年で以降は定期的に通院継続していました。因みに2005年と2016年の通院先は同一病院になります。

2005年の通院の事実を年金事務所も記録として持っている以上、その事実を振れずに請求するのもリスクがあります。しかし、単純に2005年の通院事実を記載すると初診日は2005年になります。この事例では初診日が2005年と2016年でも障害厚生年金の請求は可能で両時点でも保険料の納付要件は満たしますが、2016年が初診日になると遡及請求が可能になるのと、年金額が増える点で違いがあります。

 

初診日を変更する方法

初診日を断絶させる方法としては、①前発傷病と後発障害との間の相当因果関係を否定する方法②前発傷病と後発障害との間で前発障害は治癒したとして後発障害を初診日とする方法③社会的治癒を主張する方法があります。③は先程簡単に説明したので割愛します。

①は前発、後発の関係で相当因果関係がない、つまり両者は関係のない傷病であると主張する方法です。両者は関係ない傷病なので後発が初診日であると手続きを進めます。②は、両者は相当因果関係がある傷病であるが前発傷病は治癒(治っている)と主張して後発を初診日とする考えです。①と②の一番の違いは①は傷病の連続性があり、②は連続性がないと部分です。

精神系の疾患は相互の傷病に相当因果関係があると捉えられる場合が多いと思います。よくあるのが初診日は神経症、請求時点がうつ病という請求でも認められます。初診の病名と請求病名が異なっても請求できるというのは神経症とうつ病に相当因果関係が有ると考えられるからです。

精神系の疾患の特徴を考えると①相当因果関係を否定する方法より②治癒したと進めるか③の社会的治癒を主張して初診日を変更していく方がスムーズです。

治癒と社会的治癒との違い

治癒は医学的な治癒で傷病が治ったという意味です。一方、社会的治癒は医学的には治癒していないが、社会的に見れば治癒したものと考えるという意味です。精神系の疾患に限らず、治癒と明確にならない断言できないケースが多いので社会的治癒を活用するのだと思います。

本事例では医師は2005年の傷病は治癒したと請求する診断書に明記してくれたので、本来社会的治癒を主張する必要は無かったかもしれませんが予防的に2005年から2016年の請求人の状況を具体的に説明していきました。

社会的治癒の主張方法(要件)

社会的治癒は具体的な主張方法が決まっている訳ではありませんが、一般的に言われているのが① 3年~5年以上の不通院期間 ② その不通院期間に仕事(サラリーマンの場合)家事、育児(主婦の場合)勉強(学生の場合)をきちんとこなせていた ③ その不通院期間に服薬していない 等が要件として挙げられます。これに、自己判断で通院を中断したのではないこと等が加わる説もあります。これを病歴・就労状況等申立書に記載していきます。

本事例においては① 約11年間通院はしていない② その間、離婚は経験しているが社内の大きなプロジェクトを任され、クリアしている。 ③ 服薬も無論していないので、十分社会的治癒が主張できます。

 

終わりに

本事例は上記の主張を行い無事社会的治癒が認められ、初診日が変更になり遡及請求が認められました。この社会的治癒の考えを理解しているかどうかで年金請求の幅が広がります。ただ、それを上手に表現するのは大変なのでもし、社会的治癒でお困りなら是非ご相談ください。スピーディーに対応していきます。