非正規から正社員で57万円、キャリアアップ助成金を知っていますか?

助成金ができてから時間もたっているので知っている人は多くなってきています。

端的に表現すると非正規社員を正社員に転換して賃金を総額で5%上げたら57万円受給できる助成金です。この様に考えると簡単そうに思いますが、意外と奥が深くキャリアアップ助成金の支給要領の内容を踏まえて準備しないと不支給になってしまう場合があります。

助成金の金額

キャリアアップ助成金は有期契約労働者を正社員にするだけではなく有期→正規や無期→正規にする場合にも活用できます。また、その労働者が母子家庭の労働者であったり、派遣社員であったりすると一定の上乗せが行われます。

 圧倒的に多いのは有期→正規ですが、その労働者が特定求職者雇用開発助成金の適用者の場合は無期→正規での申請が可能になります。有期→無期は有能なパートさんで昇給ついでに無期にする場合などが考えられます。因みに転換する労働者は6か月以上3年未満の制限があるので5年目が近く無期契約対策でこの助成金を活用はできないので注意が必要です。

キャリアアップ助成金(正社員コース)の流れ

流れはシンプルです。

 ① キャリアアップ計画書を作成し労働局に提出します。

この計画書を提出せずに正社員転換しても助成金は受けることができません。

② 正社員に転換する前に就業規則に正社員転換規定を整備します。

正社員転換規定がない状態で正社員にしても助成金は受給できません。

正社員転換規定も任意ではなくある程度の様式は決まっています。それから外れる規定では助成金は受給できません。例えば、転換時期が抜けている場合は認められません。

③ 正社員転換規定を基に6か月以上勤務している非正規社員を正社員に転換する。

非正規社員は1.契約期間に定めがある労働者(パート、アルバイト、契約社員)2. 契約期間に定めがない無期契約労働者が対象になります。

④ 正社員転換後の賃金は前賃金と比較して賃金総額で5%アップ

 

⑤ 正社員に転換してから6か月経過後にキャリアアップ助成金の支給申請を行います。

 

ポイント:支給申請の時期は正社員にしてから6か月後です。正社員転換前は6か月以上勤務した非正規社員を対象にしていましたが、正社員転換後は6か月経過の時点で支給申請を行います。6か月という単語が重複するのでこんがらがらない様に注意が必要です。

キャリアアップ助成金の注意点

① 基本給の5%アップではなく賃金総額の5%アップです。

例えば基本給20万円、資格手当1万円の労働者を正社員にする場合、基本給20万円の5%アップではなく基本給20万円、資格手当1万円をあわした21万円の5%アップで考えます。

② 手当のすべてが賃金総額に入るかといえばそうではありません。手当の趣旨に応じて賃金総額に入れる手当と入れない手当に分かれます。以下では賃金総額に含まない手当を紹介します。

通勤手当・住宅手当・食事手当・燃料手当:経費等の補填の役割を示します。

皆勤手当・歩合給:本人の能力等に応じて変動可能性がある手当

時間外労働、休日労働、深夜労働手当

しかし、固定残業代に関しては令和24月からそれを含んだ形で5%アップしないと要件を満たさなくなりました。固定残業代とはあらかじめ一定数の時間外労働を見越して定額で支払う手当です。以前なら固定残業の分を除いて賃金総額を計算できていたのが令和24月からは固定残業代を含んで5%アップしないと認められなくなりますので注意が必要です。

③ 正社員転換規定が必要なので当然ながらその規定が入る就業規則が必要になります。

就業規則は10人未満の事業所では必須になる反面、10人未満の事業所は任意です。しかし、厚生労働省関係の助成金を受給する際には就業規則が必要な場合が多いです。

最後に

助成金は毎年変わります。特に令和2年4月のキャリアアップ助成金の変更点はインパクトが強かったと思います。これで不支給になるケースもあったのではないでしょうか?

社労士は厚労省関係の助成金の代行申請が可能な士業です。代行手数料がかかりますが、確実に助成金を受給したいならぜひご相談ください。