2022.4.1より中小企業でもパワハラ防止措置が義務化

  以前スポーツ界でも体罰が問題視されましたが、労働分野でもパワハラに対しては非常に厳しい目が向けらえる時代になりました。一昔前の指導方法が悉く否定される時代の到来です。

指導の行き過ぎだからパワハラではない、知らなかった、お前の為を思ってというような言い訳は通用しません。

① 部下を1時間以上連続で指導したことがある

② 部下を指導する際に机を叩いたことがある

③ 部下を「お前」と呼んだことがある

④ 部下の指導の際は個室ではなく一般オフィスで行うことがある。

⑤ 指導で部下がないたことがある。

これらの中で1つでも該当すればあなたはパワハラ予備軍かもしれません。

以下ではパワハラに関しての施策の変化を説明してパワハラの定義を説明します。

パワハラは意識することで回避できます。パワハラに関しての意識を深め自分が当事者にならないようにしないといけません。多くの経営者がその事実をしらず部下を指導しているのが日本の現状であります。

 

法改正の経緯

 

近年職場における「パワーハラスメント」(以下「パワハラ」)が顕在化し、いじめや嫌がらせ等の労働問題として顕在化しています。

平成24年以降に都道府県労働局に寄せられる相談としては、「いじめ・嫌がらせ」が相談件数の中でトップを占めており、近年も増加傾向にあります。

この様な状況を踏まえて、厚労省は平成24年1月30日に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」を取りまとめ、ここで職場のパワハラを「同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しました。

また同報告書ではパワハラ行為類型として、①暴行・障害②脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言③隔離・仲間外し④業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)⑤業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、仕事を与えない(過小な要求)⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)の6つを示しました。

こうした中、、労働政策審議会で、職場におけるパワハラ予防、解決のための立法化が検討され、令和元年5月の労働施策総合推進法改正(パワハラ防止法)により、パワハラ防止の措置義務等に関する規定が盛り込まれて現在にいたりした。

 

 

パワハラ防止法について

 

令和2年6月1日に施行されたパワハラ防止法30条の2第1項により、企業には職場でのパワハラ防止措置などの義務づけられ、また道場2項により不利益取り扱いの禁止が定められました。

中小企業は令和4年3月31日までは努力義務でしたが、令和4年4月1日から義務化されます。

 

2022年4月1日の改正点

今回新たに内容が追加されたわけではなく、大企業で施行されている内容が中小企業まで拡大された点が改正になります。

なので、既存の大企業に課せられているルールが中小企業にも拡大されるイメージですが、会社に課せられる義務としては①事業主の方針などの明確化及びその周知、啓発②相談に応じて、適切に対応するために必要な体制の整備③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応の3つです。

 

  • 事業主の方針などの明確化及びその周知、啓発

これは、端的に言うとパワハラはダメと全従業員に周知するという事です。そして、そのことを就業規則に規定したり、内部文章などで全体告知したりします。また従業員向けに研修なども実施します。結局パワハラがダメと訴えても、何がパワハラなのか分からなければ絵に描いた餅です。なので、パワハラへの理解を深める研修などは必須になります。

  •  相談に応じて、適切に対応するために必要な体制の整備

これも端的に説明すると、パワハラに対しての相談窓口を設置することを指します。

ただ、設置するだけならどこでもできますが、設置した以上はきちんと機能するように会社がマネージメントしていかなければなりません。相談だけ受けて、放置はダメで被害者加害者に事の顛末を説明し、今後の対応、厳正した処分が下せるまでは処理していかなければなりません。

  • 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切

これは、先に説明した設置した相談窓口で受けた相談に対してきちんと事実関係の整理をして、会社内での結論を出して厳正に処分をしていくことを指します。

ここでスピード感がなかったり、不公平な処分が下される場合は当事者の不満につながります。注意すべきは当事者(加害者と被害者)の双方が不公平と感じるような結果になった場合は当事者のどちらかからも行政などに訴えられる可能性がある点です。特に被害者が大事なので加害者に対して厳しい態度で臨みすぎると後々加害者側から不公平な処分が下されたと訴えられる可能性は十分あります。

これが、会社と労働者という労使紛争とは若干異なる点です。

パワハラの場合は会社・被害者・加害者の3者が存在することになるのです。

 

パワハラの定義

令和2年6月1日に施行されたパワハラ防止法ではパワハラが以下のように定義されました。

パワハラは3つの要素から構成されると整理され、全てを満たすとパワハラと認定されます。

1 優越的な関係を背景とした言動

2 業務上必要かつ相当な範囲をこえたもの

3 労働者の就業環境が害されるもの(身体もしくは精神的な苦痛を与えること)

1は上司と部下の関係が代表的ですが、平社員同士でも勤続年数が長い社員と新入社員やITに詳しくない上司とITに詳しい部下の関係などでも成立します。

2に関しては仕事でのミスを叱責するのは職場秩序維持のためにも必須です。これをもってパワハラにはならないでしょうが、その内容、頻度等によってはパワハラに該当する可能性もあります。例えば、過剰な表現での叱責、長時間の叱責、過去のことを無視化しての叱責等は「業務上必要かつ相当な範囲をこえたもの」と認定される可能性はあります。

3 労働者の就業環境が害されるもの(身体もしくは精神的な苦痛を与えること)は主観による部分が多いです。行政的には平均的な労働者が感じる程度で職場環境が害されたことによると定義されていますが、被害者がどのように感じるかで強く左右される部分です。なので、ストレス耐性が低い人などは職場環境が害されたと主張させる可能性があるので注意が必要です。

 

なので、パワハラの3要素ですが、実際は2の「業務上必要かつ相当な範囲をこえたもの」に該当するかどうかで決まるといっても過言ではありません。

 

 

次回以降で、パワハラの定義について解説していきます。